構想日本 代表 加藤 秀樹 氏

構想日本 代表 加藤 秀樹 氏

政党ガバナンスの欠落が問題


――「構想日本」の取り組みは、現在どのような方面に及んでいるのか…。

加藤 行政改革から年金、医療など、色々な問題に取り組んでいる。日本という国の仕組みをより良くしたいという思いを持っている様々な人の意見を「構想日本」が器となって政策に仕立てて世の中に出すのだが、これまで提言した中で具体的な形として20近くの政策が法律や閣議決定の形で実現できた。その第1号が、1年目に行った省庁の再編への提言だ。橋本行革における「各省設置法の改正」では、各省の権限を法律から削除する提言をし、99年1月に法律として成立した。また、昨年12月からスタートした新公益法人制度においては、この原案や付随的な税制案は構想日本が一貫して提案してたものだ。我々が提言しなかったらあのタイミングで制度変革は起きなかっただろうと自負している。日本のシンクタンクといえば、総合研究所のようなレポートや報告書をビジネスとして作るようなイメージが定着しているが、本来のシンクタンクというのは自分でパブリックな政策を作り、それを政治家に提言し、実現させていくという仕事だ。そこに対価は発生しない

――具体的に、現在行っている活動は…。

加藤 政党の自己統治能力、つまりガバナンス問題だ。日本の政治家は恐らく世界一、しかも圧倒的にお金を使っている。給料も世界一だし、一人一人に配られる政策調査費や交通費、それに政党助成金などをトータルすると、一人当たり年間で一億円ほどの税金が使われている。さらに、政治家が集める寄付金は非課税になっている。それだけの公的なお金が使われているのに、何をやっているのか、お金がどう使われたのかという詳細は分からない。会社であれば商法や会社法があり、財務諸表に関する色々な規則がある。そういったものに基づいて、例えば上場企業であれば、取締役はどんな責任を持ち、株主総会においては株主が納得するように何を公表、説明しなくてはならないと決められている。1部上場、2部上場、非上場と、パブリックな度合いが高くなるほどガバナンスは厳しくなる。それにもかかわらず、あらゆる団体の中で最もパブリック度合いが高い政党についての規定がないというのは一体どういうことか。コーポレートガバナンスという言葉はあっても、政党のガバナンスという言葉がないのはおかしなことだ。政党にあるものは、公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法などだけで、政党のマネジメントに関して党首がどういう権限や責任をもっているのか、党の役員の権限や責任は何なのか、本部と支部の関係はどうなのか、といったことは全く明らかにされていない。世襲問題や政治資金問題など、それぞれ個々に起こっている現象の元を辿れば、結局ガバナンスが無いことに突き当たる。

――世襲や政治資金などの問題も、ガバナンスの欠落が原因だと…。

加藤 外国でいわゆる世襲を禁止している国はないが、世襲はそれほど多くない。日本に「世襲議員」が多い原因は、候補者の選び方がきちんとしていないからだ。候補者をきちんと選ぶようにすれば、世襲議員であっても駄目な人物は落ちる。「世襲議員」がこれほど多いのは、金や知名度の高さが能力以上に優先される候補者選定が行われているからだ。ここを是正しなければならない。政治資金についても、なぜ個人献金は良くて企業献金は駄目なのか。企業献金だけを完全に禁止している国はそんなにはない。いくら企業献金だけを禁止したところで抜け道はたくさんある。大事なのはお金の流れ、収支をきちんと世の中に明らかにするということだ。このように、本質をつかむことで政党の色々な問題も解決されていくと考えている。

――「政党のガバナンス」についての具体策は…。

加藤 まず、政党が掲げる政策を公約としてきちんと作らせることが大切だ。フォーマットを定め、各党が比較できるようにする。さらに、重点項目をいくつかに絞って挙げてもらう。あとは、良い政策を作る能力やそれを実行する能力を身につけさせるために、また、そういった優秀な議員が当選するように、候補者選びの段階でルールを作ることも必要だ。例えば、独立した検討委員会などを作り、まず、そこで人材のスクリーニングをする。それから党の本部に集めて、そこで最終的に判断するなど、とにかく選定のプロセスを明らかにすることが大事だ。その検討委員会がきちんと機能しているかどうかも、外からきちんと見えるようにしなければ意味がない。また、これは日本では非常に難しいことだと思うが、優秀な人が早くプロモートされる仕組みを作ることも必要だ。優秀な政治家は次回立候補する時には当選し易い選挙区から出し、駄目な政治家は競争の厳しい選挙区に回すくらいの厳しいマネジメントを本当はすべきだ。会社ならどこでもやっているし、イギリスなどはそれを実行している。サッチャーやチャーチルも選挙区を何回も変わっている。国会議員も、たまには試験などを行えばいいのではないか。こういったことは法律では決められなくても、党則に盛り込ませるような枠組みを作ることは可能だろう。


――政党資金の透明性について…。

加藤 政党を会社になぞらえて言えば、連結と監査がポイントだ。国会議員に関連する全ての政治団体のお金の流れを連結化し、外部監査を受けるように義務付ける。会社であれば当たり前のことだ。今のままの仕組みだと、よくわからない子会社を作り放題に作って、その子会社との間のお金の流れもやりたい放題にしているような状態で、外からは全く内部が分からない。政治団体を一本化し、連結収支報告書を外部監査し、さらに、それら全ての報告書を常に複写できるような形で保存、公開するということも必要だ。現在は資金管理団体は総務省に、地元の後援会や政治団体は地元の選挙区内の選挙管理委員会に届けることになっているが、各団体の報告書は保管された先でコピーが出来なかったりと、何かを調べたい時には非常に不便だった。これでは、わざと分からないようにしているのではないかと思われても仕方がない。

――政党と内閣の在り方については…。

加藤 与党が持っている政策を実現する実行部隊が内閣だ。内閣と与党が食い違うということは本来有り得ない。また、国会の与党質問など議院内閣制の国ではあるのが不思議だ。内閣がやることを与党が否定するということはおかしいはずなのに、党の「実力者」と言われる人達が内閣の外にいるために内閣が弱くなっている。いわゆる党三役などを入閣させ、今のような二重権力の構造をなくさなければ内閣の力は強くならないし、本当の議院内閣制の姿にはならない。また、党の族議員の部会長が副大臣を兼ねるようにすると、政府が言っていることに部会が反対するようなことは起きない。そういった工夫が政策を実行する上で非常に大切なことだと考えている。それらの枠組みを作るために「政党法」を制定することを近々提言する予定だ(了)