TOKYO AIM 代表取締役社長 村木 徹太郎 氏

TOKYO AIM 代表取締役社長 村木 徹太郎 氏

日本の国際化のインフラに


――プロ向け新市場「TOKYO AIM」をどのようなマーケットにしたいとお考えなのか…。

村木 今、我々が目指しているのは、日本の国際化だ。金融センターとしての国際化機能が必要とされている。更なる国際化の中で、優秀な人材が集まり、いい情報が集まってくると、そこにはおのずといい会社や投資家が集まってきて、好循環に入っていく。20数年前の日本のGDPは世界の約2割を占めていたが、今年の日本のGDPは世界の1割を切るような状態だ。エコノミストの間では、来年には中国に追い抜かれ日本が初めて世界2位という地位から落ちるとも言われている。日本がこの15〜20年間、世界の改革のスピードについていけなかったことが理由であろう。その流れの中に入っていくには、やはり東京の更なる国際化が必要であり、情報、人材、資金や会社が東京市場を一つのオプションとして選択できるようにしなければならない。その仕組みの一つとして「TOKYO AIM」は非常に有効だと思う。

――「TOKYO AIM」は具体的にどのような市場になっていくのか…。

村木 これまで企業が日本に上場する際には、日本での成長ストーリーや、日本の投資家をターゲットにしたものが多かった。財務諸表や目論見書にしても日本語が前提で、会計基準も未だ日本独自のものだ。しかし「TOKYO AIM」では、例えば日本の企業が世界に出て行きたいのであれば、英語のみの開示でも構わないし、海外の企業が日本に来る時には、英語でそのまま開示することが可能であり、翻訳の必要もない。これは非常に画期的なことだ。なぜ今まで日本への上場がこれだけ海外企業から敬遠されたかというと、やはり言語と会計基準の問題が大きいのでないか。国際会計基準か米国基準のどちらかを採用していれば、ほぼ世界中どこでも上場できるのだが、日本ではそれが出来なかった。これだけ多くの金融資産と広く深みのあるマーケットを持ち、ビジネスの知名度を上げたいと考えている企業が多いにもかかわらずだ。そういった、今まで日本が誘致できなかった企業を取り込めるようにし、日本での上場を前向きに検討できるようになったことは進化だと言えるだろう。また、上場するためには、本則市場(1・2部及びマザーズ)であれば株主数や利益の額など、数値が上場基準を満たす必要があるが、「TOKYO AIM」には数値基準はなく、今すぐにでも資金を集めて成長したいと思っている企業にとっては、非常に利便性の高い市場だと思う。「TOKYO AIM」は、日本の国際化というテーマと、日本の産業の強くするというテーマを繋ぐ、一つのインフラになるだろう。市場で早く資金を集めて、それを具体的な投資、戦略、商品や人材などに活用し企業が伸びていけば、産業は活性化する。早く活性化すれば、それだけ早く国内外の競争相手と競合できる。そういった場として、新興企業だけでなく、海外の企業なども幅広く「TOKYO AIM」を活用して欲しいと思っている。

――アジアの企業の利用を当初の眼目としていたと聞いていたが…。

村木 確かにアジアの地域において、日本は重要性が高い。アジアの国々を見渡すと、国内の市場がまだ成熟していなかったり、自国で知名度を上げても海外戦略に役に立たないなど、制約がたくさんある。そういった時に、1億2千万人の人口を抱え、世界のGDPの1割程度を占める日本に上場して、いい商品を販売したり、日本から資材を買ったりすることは、その国のプラスになると考えられる。例えば、中国では日本で教育を受けた人が多く、日本に対する愛着を持っている人も多い。そういった、日本で仕事をしたい、日本と関わりたいと思っている会社経営者を上手に引っ張ってくることが出来ればいいと思っている。

――指定アドバイザー「J-NOMAD」制度については、責任の重さなどから引き受けが難しいという声も聞かれる…。

村木 本則市場への上場の場合、証券会社は引き受け審査をして、東証に上場審査を持ち込み、東証での上場審査を通れば上場時に企業からの手数料を得ている。上場後の企業に対する適時開示等のフォローは東証が行っており、証券会社は行っていない。しかし、「TOKYO AIM」においては、上場審査はもちろんのこと、上場後のフォローも「J-NOMAD」が見ていくことになる。そういうことを考えると、「TOKYO AIM」を活用するのは、上場した後もコーポレートアクションがありそうな会社なのではないかと考えている。上場を果たし、1〜2年後に上場して得た株式を使ってM&Aを行う、もしくは海外に出て資金調達をするためにPOを行うといったことが考えられる。実際、ロンドンのAIM市場に上場している会社ではそのようなパターンが数多くある。そういった会社に「TOKYO AIM」を利用してもらえば、「J-NOMAD」となった証券会社としても全体的な収益チャンスは継続的にあると考えている。

――確かに、上場時にだけ儲かればいいというモデルよりも、長期間契約でフィーをとり、その企業が大きくなっていくのを見守るビジネスモデルの方が良い…。

村木 最低のメンテナンスフィーは、毎年その上場企業が「J-NOMAD」に支払うビジネスモデルになっている。英国では平均7万ポンドと言われているが、日本の証券会社では組織が大きければ大きいほど色々な部署が関与し、その分コストもかかるため、英国と同じような金額でトータルメンテナンスを行うのは割が合わないという意見もある。このため、例えば「J‐NOMAD部」のような部署を新たに作ることで、証券会社として新たなビジネスモデルの構築に展開するのが望ましい。そもそも、我々がこの構想を初めて議論したのは2年前だが、その頃はサブプライム・ローン問題の影響は未だそこまで市場に影響は現れていなかった。それがリーマンの破綻以降、急速な落ち込みが広がり、今は外資系も日系も収益環境が厳しい中、なかなか新しいことを積極的に行うのが大変かもしれない。だから、ここは我々もぐっとこらえて、逆にこのタイミングを生かすようなマーケティング戦略をしていきたいと考えている。今は、幅広い関係者やステークホルダーに「TOKYO AIM」のビジネスモデルを説明させて頂いている。

――構想を始めた時点ではアジアのマーケットも小さかったと思うが、段々とこの辺りも成長してきており、自国で上場してもいいのではないかという動きになってきている…。

村木 繰り返しになるが、まず会社のビジネスとしてどこに上場するのが良いのかという観点がある。中国は上場候補会社が1000社を超えていると言われており、その中でも、地域に非常に密着した会社や、世界に出たい会社、例えば日本の技術を取り込みたい会社、日本に上場して日本の会社を買いたいという会社など様々ある。そういった会社が年に数社、日本に来るだけでも、今までなかった画期的なことだ。これがまさに国際化であり、色々な情報交換や会社の動き、人の動きをつくるきっかけとなればいいと思っている。日本の市場を使うことによって日本独自の技術や情報を提供したり、日本企業と提携したりというような動きを期待しているのが「TOKYO AIM」だ。新しい取引所を設立することにより、日本市場の更なる国際化、そして、日本やアジア経済の発展に少しでも貢献できれば大変嬉しいと思う。(了)