民主党 参議院議員ネクスト金融担当副大臣(経済財政担当)大久保勉 氏

民主党 参議院議員ネクスト金融担当副大臣(経済財政担当)大久保勉 氏

金融行政の継続性を重視



――民主党が政権を取った場合、何が変わるのか…。

大久保 民主党が政権をとった時に、変わる分野と変わらない分野がある。特に大きく変わる分野は年金・医療・社会福祉や国土交通の分野であり、また、その財源的な裏づけとなる財務省の予算編成が変わってくる。しかし、金融行政はあまり変わらない。というのは金融に関しては日本国内だけで決まっている約束事はそれ程多くなく、国境を越えて、バーゼルや金融安定化会議、G8などで交わされたそれぞれの約束事を着実に実行しているのが金融行政だからだ。その意味で政権が変わったとしても、変えるべきところではない。私の専門分野である財政金融分野で最も重要なものの一つは財政のファイナンスだが、そのためには日本政府の信用がこれまで以上に重要になってくる。というのも、色々な公約を実現するためには歳出額が増大し、その歳出に見合った歳入の増加が必要になる。消費税等の増税は当面行わないという前提の下では無駄の削減や予算の組み替えを行うにしても、それだけでは不十分かもしれない。その場合は国債や政府保証債の発行でファイナンスしなければならない。そして、それを安定的に消化するためには、投資家が日本政府と政権与党に対する信任を持たなければならないからだ。将来、景気が二番底をつける場合もあるかもしれないが、その場合緊急経済対策等により歳出が更に膨らみ、国債を増発しなければならないこともあるだろう。その時も安定的な国債発行が可能であるためには、常日頃から国債の投資家との関係を重視し、また金融政策に関しても透明性を高めていく必要がある。更には「将来の一定の時期までにプライマリーバランスを達成する」と言ったような強い市場との約束が必要かもしれない。

――日銀の独立性について、民主党の考えは…。

大久保 政治家が金利の上げ下げに関与すべきではないということは歴史が証明していることであり、その歴史的な教訓から中央銀行の独立性は厳に尊重されるべきだと思う。しかし、独立性を拡大解釈し、日銀の予算やガバナンスについてまで政府・国会から独立した姿勢をとる動きを放置すべきではない。例えば地銀、信金等日銀考査対象金融機関や随意契約による事業委託先や備品調達先への日銀職員の天下り問題や戸田分館の過大投資に象徴される無駄遣い問題は、日銀といえど他の中央官庁と同様厳しく追求されるべき問題だ。また、日銀は国債を大量に購入・保有しているが、そういう関係の中で、国債の発行機関である財務省の幹部職員であった人が、日銀の総裁・副総裁等首脳に入ることには疑問が残る。それは国債の発行体と大口投資家ということで利益相反問題を引き起こしかねず、実態的に日銀が国債を購入するのであれば、財務省と日銀の関係は、人事の面でも強い独立性を維持しなければならない。これは今後、国債の投資家が国際化していくために益々重要になってくる課題だろう。

――インフレターゲットを導入すべきだという意見については…。

大久保 インフレターゲットはあってもいいとは思うが、デフレの今やることにどれだけの実効性があるか疑問だ。技術的な話として必要であれば導入してもいいと思うが、少なくともインフレターゲットを導入しようという人たちの考えは、日銀の量的緩和を導入し、かつ継続させるための戦術のように見える。そのような環境で永田町や霞ヶ関でインフレターゲット待望論を打ち出すことは、日銀の金融政策に対する介入になる恐れがある。その意味で少し問題だと思う。

――政権が変わることで、為替への影響は…。

大久保 基本的に為替の動きを決めるのは国内外の金融市場だ。それを政治がコントロールすることは極めて難しい。急激な円高や円安に関しては、一時的にスムージングオペレーションが必要かもしれないが、長期的に為替をコントロールすることは無理だと思う。しかも、日本国政府は長い間円売りドル買いの為替介入を行ってきた結果、そのポジションは1兆ドルとなり、その資金で米国債の購入やドル預金をしているという現状がある。外為特会をこれ以上肥大化させないためには、これ以上の円売りドル買いの介入は、あまり望ましいことではない。また、サブプライム問題が発生するまでは円とドルの金利差が3〜4%ほどあったが、今はそれもなくなっているため、運用のあり方も考えなくてはならない。例えば、外銀に対してオーバーナイトで7〜8兆円を供給するよりも、3カ月や6カ月のタームローンにしたほうが運用金利は上がるだろう。また、もし海外に進出している日系企業でドル資金が不足しているのであれば国際協力銀行(JBIC)経由でそれらの企業に貸し出せば、外為特会の運用利回りを上げ、かつ日系企業支援になるという意味で一石二鳥だ。この政策は、我々民主党の提案として既に一部実現された。このように1兆ドルという巨額の外為特会の資金を金融市場の安定化に貢献しつつ、いかに運用利回りを上げていくか、これが次の課題になってくる。

――基軸通貨としての米ドルの信用も揺らいでいるため、現在の1兆ドルの外貨準備高を切り崩して半分くらいにすべきという意見もある…。

大久保 私はその意見には反対だ。10年後や20年後といった将来において半減することは望ましいかもしれないが、その絶対条件は為替に影響しないことだ。1兆ドルを5000億ドルにするという事は、ドル売り円買いの為替介入オペレーションであり、為替に対して円高に傾くため、現在の環境で出来るようなものではない。むしろ1兆ドルをもっと有効活用すべきであり、米国債だけではなく、場合によっては米国債以外の米政府関係機関債を増やす、もしくは最上格の民間企業のクレジットスプレッドを取りに行くようなオペレーションも必要だと思う。外為特会でそれが出来るとは思っていないが、外為特会の円売り・ドル買いのポジションを通貨スワップを使ってJBICやDBJ、さらには郵貯に渡すことを検討すべきだ。そうすると外為特会の資金残高を縮小でき、一方でJBIC、DBJや郵貯にとっては、手持ちの円資金をドル資金にスワップして、外為特会が現在所有している米国債や米政府関係機関債を肩代わりして保有したり、あるいはもっとリスクの高い商品を購入して高リターンを期待することも出来る。この方法に関しては、よく外為特会の資産が縮小するので、米国債が多量に市場に売却され、米国債の下落につながるのではないかという質問があるが、それは必ずしもそうではなく、また米国債の暴落につながるという誤解を正すべきだ。具体的なオペレーションとして、外為特会が所有している米国債等をJBIC、DBJ、郵貯に売ると同時に、通貨スワップの元本交換を行えば、市場に与える影響は全くない。その後、郵貯等のポートフォリオマネージメントの一環として、必要があれば米国債を売却し、クレジットスプレッドを稼げる米国民間債や優良証券化商品等に入れ替えすれば、国際金融市場、特にクレジット市場の流動性を一層高めるという国際貢献も期待できる。

――「公開会社法の制定」という案について、法務省などでは民法そのものを改正すべきと言う意見もあるが、どちらを優先すべきなのか?

大久保 もちろん、国会で決まる政治を優先させるべきだろう。我々民主党が政権をとった場合は公開会社法を制定し、会社法や金融商品取引法の枠組みの中で、特別法として上場企業にのみ適用される法律をつくるということを考えている。現行の会社法と金商法に重複があるのであれば、その辺りの調整も必要だろう。

――金融商品取引監視委員会(日本版FSA)を新たに創設する案もあるようだが、その点、金融行政の継続性については…。

大久保 日本版FSAを作るということは、財務省や金融庁の改革にもつながるため、大きな枠組みの改革となる。しかし、それには極めて時間がかかるため、組織先にありきというものではなく、基本的には行政の継続性を重視し、まずはどういう機能を持たせるのかを熟慮しながら、必要とあらば組織再編も有り得るというスタンスで考えている。もともと民主党は米国に倣った日本版SECを創設することを考えていたのだが、4年ほど前「日本の資本市場は米国型の銀行、証券、保険等の商品毎に分かれた伝統な米国型金融行政より、金融商品を包括的に扱い、また投資家保護と一体になった英国型金融行政がいいのではないか」という発想の転換から日本版FSAの創設に向けて舵を切った。そして、その延長戦上に金融商品取引法などがある。日本版FSAとは、証券取引等監視委員会と検査局、地方の財務局を全て統合し、そこで銀行、証券、保険業務全てを検査、監督していくものだが、金融行政の企画・立案等などに関しては、日本版FSAに任せるのか、それとも現在の金融庁の同様の部門を財務省に移すのか、現在検討中だ。民主党は予算編成を内閣に移したり、国税庁と社会保険庁を統合して歳入庁を作るなど、この問題以外にも財務省の組織再編を考えているため、それらと足並みをそろえて進めたほうが良いだろう。(了)