DIAMアセットマネジメント 代表取締役社長 中島 敬雄 氏

DIAMアセットマネジメント 代表取締役社長 中島 敬雄 氏

世界に通用するブランドに



――マーケットのプロから資産運用会社の社長へ…。

中島 私は39年間の銀行生活の中で32年をマーケットの中で過ごした。しかし、資産運用の仕事は全くの一年生だ。マーケットを相手にしているという意味では、似たようなものかもしれないが、実際は全く違う。銀行は、とにかく大きく収益を出す為に大きなキャピタルを投入するので、その結果はプラスであろうがマイナスであろうが、自分にハネ返ってくる。しかし、アセットマネジメントは、お客様からお預かりしたお金を、お客様のリスクで運用して、それをお返しする。これまでのようにキャピタルをふんだんに使って自分の収益を上げるのではなく、お客様の収益を上げる為に頑張らなくてはならない。銀行の立場で見れば、バランスシートは全く使わず、フィーだけ頂戴するこの仕組みは、リスクアセットも使用するキャピタルもなく、ある意味、非常に効率の良い仕事だと言えるだろう。

――マーケットでは再び投信に人気が集まっている…。

中島 投信は1,500兆円の個人金融資産にダイレクトにアクセスするわけだが、いわば個人の声を生で聴くことになるので、世の中のダイナミックな息吹がビビッドに伝わってくる。特に毎月分配型の投信は、年配の方々を中心に今一番人気がある商品だ。これは、ブラジルや南アフリカ等の債券に投資して、クレジットリスクと為替リスクの双方をとることで毎月高い分配額を可能にするものだ。もちろん、こうした流れも非常に大事なことではあるが、我々としては、家計セクターに金融資産を長期的かつ健全に、形成していただくことにお役に立つような会社を目指したい。

――まさに、日本の「間接金融」から「直接金融へ」の流れだ…。

中島 投信は株とも債券とも違う。長期保有で資産形成をどうするか、グローバル化の進んだ社会の中で投信のあるべき姿を模索したいと思う。このグローバル経済において、トレンドとしての日本の相対的なプレゼンスは、残念ながらゆっくり徐々に落ちていくので、広がりと安定性を持たせる為に、海外資産を取り入れていくことは必要不可欠だ。成熟先進国になればなるほど、お金にお金を稼がせて、その果実で実体経済、とりわけ個人消費をサステインするという流れが出来上がってくるが、日本もそのステージに入ってきたと言えるのだろう。そして、そういう中で資産運用を考えることは非常に重要なファンクションであり、そこには日本vs世界という対立構図ではなく、日本も世界の中の一部でしかないという感覚をもっていなくてはならない。

――銀行と生保が半分ずつ出資した独立性の高い資産運用会社というDIAMブランドが出来つつある…。

中島 ご指摘の通り、時代は益々ユニークな独自性を持つ資産運用会社を求めている。先達が築いてきた地道な努力をベースに、この会社のブランド力を高めて世界に通用するものにしていきたい。ブランドの源泉は、もちろん信用力だが、希少性を高めるには、社員一人一人の「想像力」と「創造力」が肝要だ。又、一つ一つの仕事のディテールを大事にする一方で、世の中の流れを適確に読み、大局的な見地からものごとを捉えるバランスの良さが何よりも重要だ。

――こうした力を社員に身につけさせる為には…。

中島 個人個人それぞれのやり方やペースがある為、一概には言えないが、やはり日々の努力だろう。日本の合気道の創始者である植芝盛平は、修練に修練を重ねて最後はピストルの弾道まで見えたというエピソードがある。極めるということはそういうことだ。又、将棋の羽生名人は、盤面を見て全体を俯瞰して読むという。一つ一つロジカルに読み進めていくのでは間に合わないという点において、マーケットと非常によく似ていると思う。

――この組織のユニーク性は何か…。

中島 独自性という点においては、特に年金の世界で、当社はお客様の“ストラテジック・パートナー”を目指し、ポートフォリオ全体の最適なアロケーションやリスクヘッジを提案してきた。具体的には、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー社の力を駆使したリスクマネジメント営業、つまり株式や為替のダイナミックヘッジを提供し着実な成果を挙げている。他方、FRR(フランスの国民年金基金)等海外の有力な年金からの受託も増えており、DIAMブランドが海外にも浸透しつつある。

――ところで、景気の今後の見通しは…。

中島 現在、持ち直しの動きが見られるのは、今回の危機による落ち込みが余りにも底深かった為だ。ボールを高い所から落とせばファーストリバウンドは高く、今の戻しはまさにその状態と言える。中期的には、やはり慎重に見ていかなくてはならないだろう。とは言え、資本主義は叩かれ、叩かれ強くなる。だから、私は長期的には楽観論を唱えたいと思う。とにかく、欠陥を一つ一つ叩いて強くしていくことが大切だ。反省があるからこそ、いろいろな能力が開発され、世の中がより良くなっていく。日本でも今や「失われた20年」と言われるが、この20年間で、バブル華やかなりし頃にはなかったいろいろなもの、特にアメニティが着々と改善され、今はこんなに住み良い国になっているではないか。その着実な変化を認めず、駄目だ駄目だと言っている人が多すぎる。(了)