財務副大臣 野田 佳彦 氏

財務副大臣 野田 佳彦 氏

厳しく査定し市場から信任


聞き手 編集局長 島田一

――日本の国家財政はインフレ時代の積み上げ式予算を継続し、この20年のデフレに全く対応していない。そう考えると予算も3割くらいはカット出来るのではないか。その点では民主党の無駄削減のメッセージは国民から評価されているが、一方で、成長戦略が見えにくいという声もある…。

野田 当面は「コンクリートから人への投資」という考え方の中で予算を作り、可処分所得を増やすことが内需拡大の第一歩だと考えている。これまで、いざなぎ景気を超えた戦後最長の景気の中で輸出型大企業の収益は上がっていたが、それが家計には還元されないままだった。そのようなお金の使い方を変え、まずは個人消費を喚起していく。これは大きな改革だ。加えて、環境や医療、介護、観光、スポーツ、文化などを大事に育てていくことで、成長力のある産業を作り出していきたいと考えている。

――民主党政権では、最低賃金の引き上げや日雇い派遣の禁止も検討されているが、それでは企業が海外へ逃げていき、日本の空洞化という懸念もある…。

野田 最低賃金は一気に引き上げるのではなく、段階を踏み、徐々に上げていくという考えだ。一方で、中小企業の法人税を現在の18%から11%に引き下げる。この2つを組み合わせて様子を見ながら実施していく方針だ。最低賃金のハードルが高すぎて中小企業が潰れるようなことになってはならない。そこには細心の注意を払う必要がある。

――新旧の政策の仕分け作業にある程度の時間はどうしても必要だろうから、その間、どうしてもつなぎで国債増発が必要になってくる…。

野田 今年の税収は当初の46兆円見込みよりも減少し、40兆円を下回る可能性も出てきた。8月の課税実績を見てみると、法人税は入ってくる金額よりも還付金のほうが多いという事態になっている。また、所得税や消費税の状況も前年と比べて厳しい。既に麻生政権のもとでは44兆円の国債を発行してきたが、今回は世界同時不況の影響として、この税収不足分を新規国債で賄うということはやむを得ない状況だろう。

――税収減にともなう5兆円程度の国債増発は、麻生政権の時に市場は既に織り込んでいる。しかし、2次補正予算や来年度の一般会計総額を3兆円削減して92兆円にするという数字をマーケットが織り込み始めると、長期金利に影響が出てくる…。

野田 92兆円と言わず、さらにまだ削減すべく努力する。来年の税収や今後の経済見通しがどうなるのかは、もう少し指標をみながら判断すべきことだと思う。今回の予算編成の方針にもある「財政規律」と「国債マーケットの信任」という言葉を常に念頭において厳しく査定をしているところだ。また、マーケットの動向に細心の注意を払うと同時に、市場との対話を通じて円滑に国債発行が出来るような環境整備に取り組む努力も忘れてはならないと思っている。とにかく、財政規律をしっかり考えているというメッセージを出し続けていくことが大事だ。

――来年度の予算編成に関して、新しいイメージなどは…。

野田 9月29日に閣議決定された方針を貫いていく。第一の目標は年内編成だ。これは通常から見て既に一カ月半遅れているが、まずやり遂げなければいけないことだ。二つ目に、前政権の概算要求基準(シーリング)を廃止する。一方でマニフェストの中の初年度分となる7.1兆円はしっかり予算に反映させていく。ただ、この額も制度設計によってはもう少し減らすかもしれない。今回の要求では、当初予算より減額を基本に出してほしいと伝えた。大体は納まったのだが、まだまだ切り込む余地はある。新規のマニフェストを掲げているところや社会保険庁など、伸びざるを得ないところもあるが、この辺りは行政刷新会議で行う事業仕分けを通じてナタを振ってもらう。同時に、我々も財務省の立場でしっかり査定をしていきたいと思っている。

――複数年度予算についてのお考えは…。

野田 国家戦略局の中には「予算編成の在り方検討会」というものが作られていて、既に4回の話し合いが行われている。私もそのメンバーとして、これまでに色々な有識者の方々からご意見を聞きながら意見交換をしている。基本的に、憲法では単年度予算が原則となっているため、いままでは、予算を次年度に持ち越す「繰越明許費」や、原則5年間の支出を定めた「継続費」や「国庫債務負担行為」など色々な工夫することで柔軟性を持たせてきたが、それをもっと柔軟にどうすべきかが問われている。基本的には「複数年度予算」ではなく「複数年を睨んだ見通しを立てていく」という観点は非常に大事だと考えていて、それをどうするかについて、今、議論している最中だ。そうすることでマニフェストの取り組みもやり易くなる。

――特別会計は伏魔殿とも言われているが…。

野田 特別会計の改革自体は民主党のマニフェストの中に入れており、この4年間にしっかりやり遂げていきたいと思っている。確かに小泉政権の時に31あった特別会計を21まで減らした。しかし、勘定としては社会資本整備のように色々な形で残っている。そういったところを改めて総ざらいしていくつもりだ。しかし、今回の予算編成に反映させるには少し時間が足りず、特別会計を横でみながらどうやって一般会計に活かせるかという観点で改革していきたいと思っている。もちろん埋蔵金の問題もどこまで膿を出せるかわからないが、精査していく。

――補助金については…。

野田 大方針として、国から地方への補助金は、ひも付き交付金ではなく、一括交付金にしていく。これは、地方の自主財源をつくるという民主党マニフェストの柱の中に具体的に書かれている。一方で、国と地方の関係の中で、もっと行政コストを抑えるような効率化はまだまだ必要だと思っている。そういう観点で、予算編成の中でもきちんと精査をしていきたい。分権に絡んで言えば、どういう分権のロードマップをつくるかは基本的に総務省がまとめるものだ。それを基にやり取りをしながら進めていくことになる。

――財政再建の目標を掲げていくことは大切だ…。

野田 先日イスタンブールで開かれたIMF世銀総会には峰崎直樹財務副大臣が出席したが、中長期の財政的な戦略や計画を持たなくてはならないということは皆が認識している。そして、その具体的な戦略や計画をどうしていくかは国家戦略局とよく話し合って進めていくことになる。まずは、今、開いている「予算編成の在り方検討会」での話を踏まえたうえで、どのような計画をつくっていくのかという流れになっていくのだが、喫緊の課題は、債務残高とプライマリーバランスだ。現在の債務残高はGDP比で169%と、世界でも最悪の水準となっている。プライマリーバランスも同様だ。まずはこの2つを中心に改善していかなくてはならないと考えている。

――国債管理政策については…。

野田 これまでは債務残高が膨らんでも、国債管理政策が上手く機能していたこともあって金利水準が安定的に推移していた。これからも暫くはますます国債管理政策が大事な場面になってくるだろう。具体的な国債管理政策について言えば、まずは市場との対話に細心の注意を払い、皆さんの意見をしっかり受け止めながら機動的に対応していくことが一点目だ。特別参加者の会合や投資家の会合を通じてと緊密に連携を取りながら対応していきたいと考えている。そして二点目は、国債保有者の多様性を増していくことだ。平成15年から始めた個人向け国債の販売は、最近少し低迷している。そのため、現在ある「変動10年」と「固定5年」の2つの商品に加えて、もう一つくらい新しい商品が必要なのではないかと「固定3年」の導入を予定しているところだ。また、海外にも、もっと日本の国債管理政策や経済・財政をご理解いただくべく、平成17年から北米、欧州、北欧・ロシア、中東、アジア・大洋州の各都市において説明会や個人投資家面談を実施している。海外の人に国債を持っていただくことは円の国際化にも繋がるため、今後も海外IRには力を入れていきたいと考えている。(了)