みんなの党 代表 渡辺 喜美 氏

みんなの党 代表 渡辺 喜美 氏

政府と日銀が協約し、マネー増大を


聞き手 編集局長 島田一

――「日本銀行法改正案」を唱えていらっしゃる…。

渡辺 日本銀行法の一部を改正する法律案はすでに出来上がっているのだが、法律案の発議には、衆議院議員20人以上、参議院議員10人以上の贅成が必要だ。さらに、その法律案が予算を伴うものであれば、贅成に必要な議員数はそれぞれ50人以上、20人以上となる。みんなの党は党員5人なので、まだ発議できない状況だ。これもおかしな話だ。議員1人の意見でも法案として出せるようにすべきだと思う。

――改正案の具体的な内容は…。

渡辺 この改正案は、政府と日銀が政策目標を共有する協約(アコード)を結んだ上で、約40兆円といわれるデフレギャップの解消に向けて、政府が金融機関の持っている中小企業向け債権を日銀に買い取るよう要請出来るようにするものだ。例えば20兆円でも日銀に買い取ってもらえば、その分の銀行のリスクウエイトはゼロになる。そうすると新たな貸出余力も生まれてくるだろう。当然、リスクは日銀に移転し、日銀のバランスシートが毀損する可能性もあるが、その毀損分については政府が手当てを行う。日銀は政府に対し、日銀納付金という形で毎期剰余金を納めるように法律で定められており、これは税外収入となる。このような政府と日銀とのやりとりの中で、毀損分はきちんと手当てされることになる。また、日銀の独立性を確保するために、日銀が政府の要請を断ることも出来る。ただ、その場合にはもちろん、説明責任を求めることにした。

――日銀の独立性とは…。

渡辺 我々の認識では、日銀の独立性とは「手段・方法の独立性」であり、「目標の独立性」ではない。どういう金融政策を行うか、その手段・方法は日銀にお任せするということが、日銀の独立性を確保するという重大な意味なのであり、政策目標を共有することは「独立性」に全く反しない。むしろこのような非常事態の時には、政策目標を政府と日銀で共有することが極めて大事だと考えている。量的緩和の効き目はないというのが白川日銀総裁の言い分だが、我々は、やり方を工夫しさえすれば量的緩和も効き目があると考えている。また、この法案は、マクロとミクロの両方に効果のある法案になっている。とにかく、デフレギャップをすべて財政出動で賄うのは無理だろう。

――日銀が行っている金融緩和と、現在FRBが行っている金融緩和は、同じ金融緩和でも全く質が違う。日銀は大企業・大銀行中心の金融緩和だが、FRBはマーケットに直接介入している…。

渡辺 FRBはとにかく非伝統的手法で危機対応を行った。クレジット、資産価格に直接働きかけた訳だが、結局それは、日本の失敗の教訓から学んだものだ。日銀はあの当時、資産価格は中央銀行の政策の対象ではないといい続け、デフレに陥り12年が経った。そして、デフレ脱却宣言もないまま、再びデフレの泥沼に突っ込んでしまったというのが現在の状況だ。その過程で非伝統的手法を解除してしまったため、もう一度仕切り直しをしなくてはならない。そこで、今度は失敗しないように政策目標を共有しようというのが「みんなの党」が掲げる改正案だ。

――日銀は「デフレスパイラルには陥っていないから、まだ大丈夫だ」と言っていたが…。

渡辺 デフレスパイラルになってからでは遅い。日銀は既に、3年間物価が継続的に下落していくということを認めている。そうであれば、当然、デフレスパイラルに陥らないようにする対応が必要だ。物価の安定は日銀の最大の使命であり、それが継続的に下落していくというのは、物価の安定とはおよそ違った方向だ。すでにコアCPIは大きく下落している。これをどう解決するかは日銀にお任せするが、我々はそれとともに、非常事態への対応として日銀法改革案を作成した訳だ。

――円高については…。

渡辺 量的緩和には、金融機関や中小企業に直接影響を及ぼすようなものから、長期国債の買い取り額を増やすやり方など色々ある。それが、債券市場や為替市場、株式市場といったマーケットを通じて効果が表れてくることもある。そんな中で、今一番警戒しなくてはならないのは円高だ。今、円の独歩高の兆候が出てきているが、これは日米の実質金利差を考えれば一目瞭然だ。短期金利の水準はあまり変わらないが、CPIは米国でプラス、日本はマイナスだ。そうすると、実質金利は日本がプラスで、米国がマイナスになる。水は高いほうから低いところへ流れるが、お金は低いところから高いところに流れるもので、実質金利がマイナスの国のお金がプラスの国に流れてくるのは当然のことだ。だから円ドルの為替関係では円が強くなっている。そして、これにはやはり、金融政策に相当の責任があると言える。小泉内閣の時代、景気回復に一番効果のあったものは、郵政民営化や道路公団民営化ではなく、30兆円の大量市場介入を行ったことだ。そして、それを非不胎化した。無駄に積み上がっている当座預金量を増やして、介入した資金を回収しなかったことが、円安をもたらし、景気回復に非常に大きな効果を発揮した。しかし、それに対して日銀では「効果が無かった」と言っている。

――日銀が頑なな姿勢を崩さないのは何故か…。

渡辺 自分の庭先を綺麗にしたいという気持ちは何処も同じだろう。しかし、非常事態の時には役所の垣根だって取り払わなくてはならない。日銀は、独立性を守りながら、政府とより緊密な連携をしていくべきだ。「みんなの党」ではこのように考えている。12月1日の政策決定会合で決めた「金融緩和の強化」策はあまり効き目がないと思う。3カ月という期間は、日銀にとっては長いのかもしれないが、世間から見れば短い。長期国債の買い切り10兆円を増やすなら話はわかる。要は、流動性の問題でなく、マネーを増やさなければいけないということだ。(了)