参議院議員 蓮舫 氏

参議院議員 蓮舫 氏

『中抜き』が象徴的な無駄の構造


聞き手 編集局長 島田一

――概算要求は結局95兆円。事業仕分けでも期待していた程の成果は無かったという声がある…。

蓮舫 前政権の麻生内閣が組んだ今年度予算は、第一次補正予算を加えると100兆円を超えていた。その予算を減額し、さらにマニフェストで約束していた6.9兆円の初年度分を入れての95兆円だ。これは、各省庁が大臣の指導力の下で相当削って出てきた評価すべき額だと言える。また、鳩山内閣では数字が一人歩きすることがあり、事業仕分けでも3兆円を目標に減額するという話が一人歩きをしていたようだが、事業仕分けというのは額を削る作業ではなく、税金の適正化を目指すものだ。目標額を決めて削るという考えで取り組むのは目的としてそぐわない。今後、党からの要望を踏まえた年末にかけての予算編成で最終的に95兆円を削ったが、事業仕分けによって最初の一歩を踏み出したとは思っている。

――踏み出した一歩とは、具体的に…。

蓮舫 これまでの政権では、人々が納めた税金が何に使われているか一円たりとも説明されていなかった。それが政権交代したことで、予算を決める途中経過が情報公開されたことは、納税者にとって最大のメリットだと思う。今までの政権では受益者のメリットは守ってきた。しかし、これは票につながる支援団体や組織という政・官・民の癒着であり、我々が野党時代から批判してきたものだ。一方で、納税者のメリットは随分長い間ないがしろにされてきた。今、受益者の立場から納税者の立場に立ち変わり、税金という一円の重みを持ってその情報を公開することに、私たちは踏み出したわけだ。

――国民の反響は非常に大きかった…。

蓮舫 良い意味でも悪い意味でも反響は大きく、様々な声を頂いた。関心を持って頂いたことが最大の成果だったと思っている。例えば、今まで科学予算が職場や居酒屋、家庭、友達間で議論されることはなかっただろう。それが事業仕分けを行い、受益者の方々の声が報道されたことによって、それが今の時代に本当に必要なのかどうかを納税者が考えるようになった。その納税者が考えた声は政治家を通じて政界に反映される。こういったことで、本当の意味での国民的議論による税金の再分配が行われることになればいいと考えている。

――仕分けを通じて色々な無駄の構造が見えてきた…。

蓮舫 象徴的な無駄の構造は、いわゆる中抜きだ。直接、事業主体者に対して交付すればいいものを、敢えて独立行政法人(以下、独法)や公益法人を迂回することによって、人件費や天下り、あるいは運営費交付金が水膨れしている。例えば、今回事業仕分けの対象となった「子どもゆめ基金」では、本離れが進んでいる子供たちにもっと本を好きになってもらおうと、地域のNPO団体の人たちが子どもたちに読み聞かせをしてあげたり、本を伝えたりする有意義な活動をおこなっている。そして、補助金は本を読み聞かせてあげる人達のトレーニング等のために交付されるのだが、問題はその手段が独法を通しているところにある。「子どもゆめ基金」の100億円の基金から生み出される利子等による利益は年1億5千万円。これに対し、運営費には毎年20億円が必要で、足りない部分は一般会計から補填されている。つまり、独法をわざわざ設立して100億円の原資をためておく必然性などどこにもない。はじめから直接一般会計から支出すれば良いわけだ。このため、100億円を返納していただき、独法を解散させれば中抜きがなくなる。私たちが言っている無駄の構造とはこのようなことであり、事業の必然性を否定している訳では全く無い。質疑応答の時間が限られていたため極力無駄を省いた言葉を使わざるを得なかったため、周囲には冷たい印象も与え、色々な批判は出たが、それは、時間内に相手にどれだけ事業の途中経過における手段の効率性や適性についての説明をしてもらえるかの勝負だった。

――一番の問題点は中抜きだと…。

蓮舫 特に中抜き、天下りの問題に関しては行政改革が必要だ。単純に天下り先をなくしたとても、今のままではその後の彼らの再就職先をどうするのかが当然問題になってくる。同期入省の中から事務次官が生まれても、他の人間が勧奨退職されることのないように、その後の居場所を役所内に作るような仕組みに変えていかなくてはならないと考えている。今回の事業仕分けで、行政改革、国家公務員のあり方、そして、公益法人の是と非がとてもよく見えてきた。意義のある公益法人もあるが、全く存在意義を理解できない公益法人もある。そんな中で、一律に公益法人を廃止するということが非常に乱暴なやり方だということもよく分かった。

――民主党がマニフェストに掲げた10兆円規模の歳出削減にたどり着く可能性は…。

蓮舫 4年間で財源を生み出そうと計画している。特に今は経済の落ち込みが激しいため、デフレスパイラルにならないようにカンフル剤を入れていかなければならず、緊急の出費も予想される。そうなった時に、来年度で我々がマニフェストで公約した2年目の行程表通りに財源を出すのは厳しいかもしれないが、4年間のうちに結果を出さなければならないと考えている。今回の仕分けで、法改正が必要なものと必要ないものも分かってきた。法改正を必要とするものは財源がなかなか出てこないが、基金として塩漬けにされている貯蓄分はその場で返納させることが出来る。実際に農水省では事業仕分けの対象となった基金で2,831億円が返納された。これは事業仕分けしなければ一円も返ってこなかったものだ。

――役人には組織を温存させるための色々な知恵がある。法改正するにも、それはかなり大変な作業になるだろう…。

蓮舫 丁寧にやらないと、官僚とぶつかるという最悪のシナリオになってしまう。私は、官僚と良い形で協力するのが政府と行政の関係だと思っている。国をより良くしようという思いで国家公務員試験を受けてきた優秀な人々にとって、行政改革をすることが職環境の改善につながるということを早く理解していただきたい。これがないことには前に進まない。半世紀かけてつぎはぎが多くなってきた国家だ。法改正も同じ時間をかけて紐解いていかなくてはいけない作業だとは思うが、そんな悠長なことは言っていられない。それをどうするか、一緒に考えて行動していくのがベストな道だと思う。

――経済対策について、米国ではあれこれ政策を打ち出すよりも減税が一番だという考えだが、民主党では色々な政策を打ち出している。新たな事業を打ち出すと、結局また天下りなど中抜きの問題が出てくるのではないか…。

蓮舫 減税すると当然、国の税収が減ってしまう。それにより無駄な事業が自然に淘汰されるというプラスの面はあるのかもしれないが、それは短期的な効果しか生み出さない。大きな経済効果で言えば、市場そのものを広げないことにはお金が消費に回らず、お金が流れないことには景気は良くならない。減税した部分が家計において何に回されるかが大事だ。たんす預金になってしまっては元も子もない。

――経済対策においてはこの3ヶ月間で民主党に対する企画立案能力を疑う声もある。例えば池田内閣の所得倍増計画のような、具体的な「プラン」が欲しいところだ…。

蓮舫 特に市場関係者にとって、今の政府が政権交代をしてどのような国の成長の形を描くのかが大きな意味を持つことは承知している。そのメッセージの発信が遅いのではないかという意見もあるが、ここは、より慎重になるべきだろう。民主党がどんな経済戦略を打ち出すのかは、民主党が予算案を出し、税の使い方を明らかにしたところで一緒に発表するのがより良いのではないか。私の個人的な意見としては、この国はもう成長する必然性はないと思っている。「成長」という言葉よりも「サイズ」という言葉で今後の日本を考えたい。この国のサイズにはどれくらいの経済規模が適正なのかということだ。少子高齢化がトレンドとして変わらない中で、今まで社会保障だけに頼っていた高齢者の生き方に労働政策を取り入れたり、新たな産業を生み出したり、或いは少子化に特化した産業に対して政府がいかに支援していくかなどの議論はあって良いと思うが、国としてどこまで成長していくのかという背比べのようなものを、今の日本が本当に目指すべきなのか、個人的には疑問に思っている。

――成長性よりも質を重視するという考えは、民主党の「大企業から個人へ」「コンクリートから人へ」というスローガンにつながる…。

蓮舫 「コンクリートから人へ」というスローガンは、コンクリート業界や金物屋関係の人々に不愉快な思いをさせていると思うが、我々は公共事業を全否定しているわけではない。それは例えば、今まで耐震補強といえば高速道路など道路を最優先させていたものを、今後は、子どもたちが大半の時間を過ごす学校や、体の弱い方々がいる病院、そして、ご高齢者の施設といった、人がいるところを優先させるように、内容がスライドするだけだ。公共事業がゼロになるということではない。来年は全ての小学校において耐震化が始まることになっている。成長戦略と予算が一体化して、最終的な国家戦略プランが出てくる時期を私の立場から明言出来るものではないが、年度内には出さないと株価も企業の決算も大変なことになるだろう。

――成長戦略に加えて財政改革戦略のプランも出ないことには国債も暴落してしまう…。

蓮舫 行財政改革のプランを出さないことには国債まで辿りつかない。辿りつかなければ、長期金利が上昇してしまう。この点、行政刷新に限って言えば、仙谷大臣は明確なビジョンをお持ちだ。公益法人改革、行政刷新を遂行していくための手段として、自分たちだけの意見で考えるのではなく国民の声を聞くために「ハトミミ・ドットコム」を設置した。そして、1月から3月までに行政刷新会議のホームページなど様々なツールを利用して、国民の皆様からの意見と内部告発などを合わせて、もう一度調査を行う予定だ。来年度予算編成に向けて、今度はシーリングの前に見える形になると思うが、その頃、また仕分けも動き出すことになるだろう。ここは期待してもらいたい。(了)