片山さつき政治経済研究所 代表 片山 さつき 氏

片山さつき政治経済研究所 代表 片山 さつき 氏

日本は法律に頼りすぎ官僚化


聞き手 編集局長 島田一

――この度、「真実の議論」(かんき出版)という本を執筆された…。

片山 今、日本が陥っている問題は、1984年と2009年の東証の株価が同じ値段だということに象徴される。GDPが好転したと発表されても株式市場の取引はなかなか活力を取り戻せないでいる。リーマン・ショック後、一番傷んでいなかったはずの日本の立ち上がりはどこよりも遅く、財政危機の議論は堂々巡りで本格的な財政構造改革は先送りされている。2万6千円の子ども手当てのばら撒きも4割が貯蓄に回すというアンケート結果が出ており、これでは乗数効果が0.6となり、未だかつて無い最も効率性の悪い経済対策だと言える。非ケインズ効果が日本において実験的に実現する初めての例とも言えるだろう。また、日本の個人金融資産は1400兆円だと言われているが、実際には住宅ローンなどの借金が400兆円近くあるため1100兆円に達しない。さらに、国の借金900兆円がいつかクロスオーバーするという中で、200兆円は普通預金になっており、この部分がいつ海外に逃げていってもおかしくない。なぜこうなっているのか、今こそ本当に真剣に議論すべきであり、その避けて通れない問題の本質を問うているのが「真実の議論」だ。

――現在の日本を立ち直らせる具体的な方法は…。

片山 自立しかないと思う。まず、納税者として個人個人が自立することだ。日本人の約3割は所得税を払っていないといわれているが、このようなフリーライダー症候群から自立しなくてはならない。若者が自立するためには教育も変えていかなくては無理だ。また、本当の意味で地方が自立するには、税金の使い道も地方が決めるようにする必要がある。そのためには、霞ヶ関の規制もなくしていかなければならない。意味のある規制は必要だが、国民から見て意味の無い規制はなくすべきだ。また、現在、日本では国内の空洞化が進んできていることでグローバル化が悪いという風潮になっているように見えるが、そうした鎖国妄想は捨てるべきだ。人口が減っていく日本で再び鎖国してしまったら、日本の産業の殆どは生き残れない。

――日本人の3割がフリーライダー症候群だと…。

片山 年収700万円の夫婦子ども2人のサラリーマンが、住宅ローン2000万円の残高があれば、今は住宅ローン減税により所得税はゼロで、住民税も殆ど払わなくて良い。年収200万円以下の人が増えているということを問題にするのも良いが、年収700万円の人が所得税を全く払っていないという現在の日本のあり方をどう考えるべきか。こういった真実を大方の国民は知らないまま、口ざわりの良い嘘だけから得た知識を元にまやかしの議論が繰り返されている。日本人は、本当にこれでは焼け野原だと思ったら絶対に頑張る根性は持っているはずだ。それなのにそこで頑張らないから、ベトナムの原子力発電所第一期工事をロシアに取られてしまったように、他の国に仕事を取られていくことになる。

――政治手法に対する意見は…。

片山 小手先の対応から王道の原則論へ、そして、事後処理から先見の明へということを唱えたい。また、目先の利益より将来への投資を考えるべきだ。例えば、目先に2万6千円の教育費をもらっても、それを本当に教育投資に回す人がどれだけいるのか。給食代を払わない親は、きっとパチンコ代にそのお金を回すだろう。それよりも保育設備をきちんと整えたり、学校に行くためにかかる費用を無料にするなどを考えた方が良い。真実の議論をして、将来不安から自立すること、そして、既得権に甘く新規参入を阻む旧来の日本のシステムを壊していくことが今の日本には必要だ。

――旧来の日本の政治システムを壊していくには…。

片山 政府が官から自立するために、現在、公務員制度改革を進めているが、これは本質的な問題ではないと思う。事務次官がなくなれば、今度は筆頭局長が同じことをやるだけだ。公務員の雁字搦めから脱却したいのであれば、法制局が決める法律事項を緩和すればよい。内閣提出法案を全て法律にしなくても良いことにすれば、政権が変わった時に国を変え易くなる。シビルロー(大陸法)を採用する国の中でも日本は一番緻密に法律が出来ている国であり、それゆえ、時代の変化に対応できず、高度成長が終わった後に伸びなかったと言われている。現在のインターネット社会にも全く向いていない。例えば、法律によらず予算と税だけで国を変えていく方法もあるのではないか。ハーバード大学教授のアンドレ・シュライファーの研究によると、コモンロー(英米法)の国の方が、シビルローの国よりも格段に成長率が高いそうだ。シビルローは、高度成長の時には集中投資をするのに適しているが、変化に対応するにはコモンローの国の方が良いという結果も出ている。さりとて、シビルローからコモンローに変わった国はない。一度制度を緻密に作った国は、それを変えることが出来ないからだ。しかし、そこを何とか柔軟にしないことには、これからはとても対応できないだろう。

――法律が分かる人にしか国が支配出来ないとなると、本当のコモンセンスが通用しなくなってしまう…。

片山 法律化することによって民主化しているというのは全くの建前であり、現実には法律に頼り過ぎることによって官僚化している。また、日本では「自由」という言葉が、右派からも左派からも強烈に攻撃されてしまっていて、自由主義になり難い。国家主義・全体主義の右派は統制経済に動き、社会主義、計画経済の左派も統制主義になる。つまり、日本は右に行っても左に行っても自由より統制に陥り易いということだ。その中で自由主義を保つには個人の「個」が確立していなくてはならないのに、そのような教育もされていない。そこで、私はツイッターに注目し、本書「真実の議論」をテーマにツイッターライブ討論を行うことにした。そこで出た意見はそのまま出版化し、本にするつもりだ。また、そのビジネスモデルは商標登録する。現在、ツイッターの国内ユーザー数は450万人ともいわれており、インタラクティブに意見を言いたいという気持ちの強い人がたくさんいる。こういったツールを利用して、経済政策の議論も一方的ではなく双方向で進めていくべきだ。そして、官僚の世界と政治の世界をインターバルなく駆け抜けた私だからこそ出来る真実の議論を、これから、もっともっと繰り広げていきたいと思っている。(了)