南都銀行 頭取 植野 康夫 氏

南都銀行 頭取 植野 康夫 氏

遷都1300年祭で県経済を活性化



聞き手 編集局長 島田一

――今年は平城遷都1300年。その歴史は…。

植野 持統天皇は、それまで都のあった飛鳥(明日香村)の北に藤原京(橿原市)を造営し、694年、ここに遷都した。藤原京は新しい国家の都として、宮城を中心に広大な京域をもち、整然と区画された中国的な都城だった。しかし、次の文武天皇の時代、遣唐使によって唐の都・長安の様子が伝えられると、それを模した新都造営の計画が起こり、奈良盆地の北方に平城京(奈良市)の建設が開始された。こうして元明天皇の710年、平城遷都が行われ、奈良の歴史に新しい時代が開かれることになった。「咲く花の匂うがごとく」と『万葉集』に歌われた時代の始まりである。この遷都の年から数えて、今年は1300年目の節目の年にあたり、「平城遷都1300年祭」という一大イベントが行われている。これを機に、たくさんの人に奈良へ来ていただき、奈良の奥深さを再発見していただきたいと思っている。地域経済が長期低迷から抜け出せない状況の中、このようなイベントを通じて奈良県経済を活性化させることには、大きな意義がある。

――注目のイベントは…。

植野 メインイベントは4月23日に行われる「大極殿完成記念式典」(招待者限定)と、それに続く各種イベントだ(4月24日から11月7日まで)。イベントは奈良県内全域を会場として展開され、例えば飛鳥・藤原京周辺ではパレードや食の市、キトラ古墳壁画の特別公開などが行われる。10月には「平城遷都1300年記念祝典」が予定されている。また、1300年祭の目玉事業に「祈りの回廊〜奈良大和路 秘宝・秘仏特別開帳」がある。50カ所以上の寺社で、国宝や重要文化財などの「お宝」が特別開帳されるという事業で、当行のOB27人がボランティアとして拝観支援を行っている。幸いご好評いただき、お手伝いした中宮寺からは、感謝状まで頂戴した。

――全国的なアナウンスメントの効果は…。

植野 各種調査を見ても、今年は全国的にも「平城遷都1300年祭」が最もアナウンスされているようだ。ニューヨークタイムズやジャパンタイムズといった英語メディアもこのイベントを大きく報じており、奈良県が取り組んでいる「外国人観光客の誘致」にもつながっている。昨年12月31日夜から1月1日未明にかけては、県内4つの会場に多くの方が来場された。その効果で初詣(主要5社寺)には、昨年より約27万人も多い約262万人が訪れた。1300年祭は、広く県下各地で展開される。奈良県は南北の道路整備が不十分で、人的・物的交流も少なかったが、この機会に県の東西南北に様々なつながりが出てくることを期待している。

――南都銀行としても様々な協力をされている…。

植野 昨年5月から「平城遷都1300年祭記念定期預金」の取り扱いを始めた。これは通常の店頭表示金利に0.13%を上乗せするもので、今年秋まで実施する予定だ。おかげさまで、3月15日現在で残高は860億円を超えた。平城宮跡会場内の展示場(出展参加ホール)では、当行が支援している「Yoshino Heart(吉野ハート)プロジェクト」に関連する展示をする予定だ。このプロジェクトは、マーケティングの専門家を核に、奈良県吉野郡周辺の事業者を組織化し、林業家・製材業者と販売業者が連携して木材・木製品の新たな需要を作り出すことを狙いとしている。広告入り割り箸(アド箸)や吉野3.9(サンキュー)ペーパー(吉野産の間伐材チップを活用した紙)など、身近な製品を足掛かりとして、家具や住宅用の建材・内装材、観光など吉野地域のさまざまな産業の振興を視野に入れている。また、当行は全国の金融機関で初めて「観光企画室」を設置した。観光に特化したホームページも運営しており、これを活用した1300年祭のPRにも積極的に取り組んでいる。当行は中期経営計画の重点戦略にCSR(企業の社会的責任)の推進をうたっている。地域に根ざす当行の人と情報のネットワークを活かし、地域の活性化に取り組んでいきたい。

――南都銀行がこれから取り組むべきことは…。

植野 地域経済の繁栄なくして地方銀行の発展はありえない。当行はお取引先企業への資金提供にとどまらず、さまざまな施策により、地域密着型金融を推進している。その一方で、地理的・人的つながりの深い大阪への展開も欠かせない。この点、奈良県を中心とした既存営業エリアにおいては、約50%という高いシェアと充実した店舗インフラなどの磐石な営業基盤を活かして、地域密着型の営業活動を展開する。お客さまのニーズを的確にとらえ、調達・運用の両マーケットにおいてバランスのとれた効率的な営業体制の構築を目指していく。また、大阪府をはじめとする重点戦略地域においては、主に事業性融資と個人ローンの増強を図っている。

――奈良県でのシェアが50%とはかなりの割合だ…。

植野 奈良県は昭和40年代から50年代初めにベッドタウンとして人口が増えた。それに伴い都市銀行が続々と進出し、当行は県内でのシェアを守ることを優先課題としたため、県外への進出が遅れたという事情がある。引き続き、地域・部門別の営業戦略を積極的に推進し、リテール部門中心の残高増強に取り組んでいきたい。

――今後の地域金融機関のあり方について…。

植野 中小企業等への金融の円滑化については、これまでも当行は地域金融機関の重要な社会的使命と位置づけ、地域密着型金融の推進に取り組み、円滑な資金供給に努めてきた。昨年12月の「中小企業金融円滑化法」の施行を受けて、中小企業や住宅ローンご利用者の条件変更や経営改善の申し出に対してはさらに真摯な対応が求められているが、当行としても、取引先の状況を十分に把握するとともに、コンサルティング機能を発揮することで、より一層金融仲介機能の役割を果たしていきたいと考えている。(了)