民主党 参議院議員 金子 洋一 氏

民主党 参議院議員 金子 洋一 氏

デフレ脱却議員連盟で日銀に厳しい目



聞き手 編集局長 島田一

――この度「デフレ脱却議員連盟」を結成された…。

金子 目的は、デフレを脱却して景気を回復させるための議員の集まりだ。現在、財政政策は限界に近いところまで来ているのに、金融政策はまだ余り出ていない。世界的にも景気対策の主流は金融政策になっているのに、日本でも、もう少しやれることがあるのではないか。そういう問題意識のもとに「デフレから脱却し景気回復をめざす議員連盟」を結成した。今のような需要の少ない局面から抜け出した後に、中長期的にデフレから脱却して成長軌道に戻ってから、財政再建を行うという考えだ。

――メンバーは何人いるのか…。

金子 民主党の衆議院・参議院議員合計で130名以上だ。民主党議員は現在430名弱だが、こういった議連の団体に入れるのは政務三役についている78名を除く人達だ。そうすると、残り約360名の3分の1強がこの議連に入っていることになる。これは、デフレ脱却に向けての一大勢力だ。現在の企業も家計も雇用もひどい状況だ。ここをなんとかしなくてはならないという意識で頑張っている。

――金融政策について、具体的に日本銀行に求めることは…。

金子 日銀の独立性があるため、我々が日銀に対して細かいことを求めるつもりは全くない。ただ、例えば、米国FRBが目標としているような「雇用を重視する」というようなことを、日銀にもやってもらいたいと考えている。今の日銀法を見ても、「物価の安定」という文言は出ているが、「雇用の安定」ということは全く書かれていない。その結果、日銀では金融セクターの安定には非常に関心を持つが、国の景気に関してはあまり関心を持っていないように思われる。民主党政権に変わり、我々は今、様々な役所の既得権益や税金の無駄遣いをなくすことに一生懸命取り組んでいる。それは、それぞれの役所が各々持っている組織的な利益を求めることだけに走ってしまうと、それこそ地方に八ツ場ダムのようなものが出来たり、誰も走らないような道路が出来たりするからだ。そういった、脱官僚、脱霞ヶ関の取り組みと同じ視点から、日銀に対しても厳しい目を向けていこうと考えている。

――金融機関ばかりを大事にするなということか…。

金子 そういうことだ。もちろん、金融業界というのは非常に大切な業界であるため、これを伸ばしてもらうことに対して全く異存はないが、そこだけを見るのではなく、きちんと日本の景気全体を見てもらって、色々な取り組みをして頂きたいと思っている。

――マーケットでも、金融機関だけにお金が流れて、その先が流れていかず、いつまでたってもデフレから脱却できないという意見が目立つ…。

金子 全く同感だ。例えば、金融機関の方と話をしても「借りてくれる先がない」と言う。確かに、今後益々物価が下がってしまうような状況で設備投資をしようという会社はないだろう。デフレの時は、お金は使わないほうが得だからだ。そういったデフレの状態から脱出をするために、日銀にもっと頑張ってもらいたいということだ。

――日銀法にある「物価の安定」さえ守られていない…。

金子 食料及びエネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)を見ると、ここ10年は継続的に0〜−1%の間で推移している。こういう状況が続くと、お金は外に出さずに貯めておく方が良いと考えるようになる。その結果、経済そのものが立ち行かなくなる。実際にその行動が、今、起きている訳だ。そこで、お金をどうやって使ってもらえるようにするのか、使えるだけの環境をどのように整えるのか。それは政府の責任であり、また、独立性を獲得した日銀の責任でもあると考えている。

――米国に比べて日本の実質金利はきわめて高い。そうすると、確かにお金は使うよりも持っていた方が得だ…。

金子 昨年末の日本のコアコアCPIは前年同月比でマイナス1%以下だった。長期金利が仮に1.5%だとしても、その差は約2.5%だ。一方、米国の場合だとインフレ率はプラスになっているため、もっと低い。また、08年9月のリーマンショックがあって、一時は米国の鉱工業生産は15%減少したが、今は随分回復している。一方、日本では生産が3分の1減少し、未だ本調子になっていない。米国が金融危機の震源地なのにも関わらず、何故こういうことになってしまったのか。それはやはり、日本の内需に回復が見られないからだ。輸出で経済を伸ばしていくことも必要なことだと思うが、今の状況においては、国内の中小企業、地方経済にもっと配慮すべきだろう。

――今後の具体的な活動は…。

金子 参議院選挙向けの民主党マニフェストに、「デフレ脱却議員連盟」の有志が連名で、いくつかの項目を載せて欲しいとお願いしている。それは、景気対策に金融政策を使っていくということだ。具体的には、政府が物価水準を決め、その物価水準に対して日銀がきちんと合わせていくようなことだ。そこでインフレターゲットを使うかどうかは日銀の自由だ。また、これは私個人の意見だが、ゼロ金利に近いところでの短期国債のオペレーションには限界があるため、長期国債をオペの対象にしていくべきだと考えている。今は期近物を売買しているだけで、実質的に長期国債を買っているような形にはなっていない。それでは駄目だ。例えば、長期国債をオペの対象にすれば、出口戦略も容易だ。世界各国で行われているこの手法を日本にも取り入れるべきではないか。その他、メンバー中には「もっと中小企業の手形などを買ってもいいのではないか」とか、「日銀の国債の直接引き受けも考えていいのではないか」、さらには「日銀法を直ちに改正すべきだ」というような考えを持った人間もいる。

――日銀は、政府の経済政策を何とかすべきと言っているが…。

金子 先日、白川日銀総裁は「GDPギャップを埋めるには、生産性を上げるしかない」と発言されていたが、一国の経済の生産性はどう考えても一年に2%程度しか上がらない。それをどんなに加速して2.5%にしたところで、その状態を3年間続けてフルベースで上げていかないことには7%までたどり着かない。これは実体の経済を無視した発言だと思う。

――日銀券の価値についてのお考えは…。

金子 我々は日銀券の価値を落とすことを目的に活動をしている訳ではない。例えば、今は輸出を促進する円安が望ましいが、だからといって永久に円安が良い訳ではない。景気が回復軌道にのれば自ずと円高方向に振れるだろう。そういったことも当然許容していかなくてはならないと思っている。つまり、今はあくまでも緊急時なので色々な政策を採るべきだと提言しているだけで、景気が回復していけば、特に日銀に対してそういったことを申し上げるつもりもないということだ。(了)