みんなの党 代表 渡辺 喜美 氏

みんなの党 代表 渡辺 喜美 氏

改革マインドある下級武士を結集



聞き手 編集局長 島田一

――民主党政権への不信が高まっている…。

渡辺 民主党の言行不一致に国民全体が呆れ果て、政治不信は一気に強まった。マニフェストの目玉の一つであった予算の組み換えもまるで出来ておらず、民主党には国家経営のノウハウも覚悟もないことを露呈している。素人集団とも言える民主党政権は、面従腹背の官僚にとっては非常に扱い易い。民主党は官僚を使いこなす以前に官僚を選ぶことをしなかったため、スタートダッシュに失敗した。これに対し、与党議員達は「みんなの党」は「公務員バッシングの政党」と言うが、それは全く違う。官僚の中にも改革派はいる。こういう改革マインドあふれた下級武士を結集するのが「みんなの党」だ。

――現在、「みんなの党」の議員は6人…。

渡辺 たった6人しかいないが、それでもきちんとしたアジェンダを作れるのは、まさに江戸末期の討幕運動の時のように下級武士が集まっているからだ。例えば、私が大臣を務めていた頃は若手官僚の補佐官チームを置いていたが、その一人は「官僚のレトリック」という本を書いた人物で、公務員制度改革の論文を書いたために通産省で左遷されてしまったという経歴を持っていた。彼は、私のミッションを良く心得、その上で企画立案をしてくれる非常に優秀な人物だった。事務方から出される資料の抜け穴もたちどころに発見してくれるため、私は安心して、彼が作ったペーパーを見ながら指示を出すことが出来た。それが政治主導というものだ。民主党3役のように、徹夜で計算機を叩くような裏方の仕事を政治家がやるのは政治主導ではない。重役には重役の仕事がある。

――問題意識の高い官僚を周りに揃えておくことが重要だと…。

渡辺 現役官僚である必要は全く無い。脱藩官僚でも民間人でもいい、霞ヶ関の「戦略は細部に宿る」という官僚のレトリックが分かる人間が裏方舞台にいないことには、政治主導はありえない。それが今の民主党では出来ていない。普天間の問題では、政府は外務省も防衛省も間に入れずに大暴走し、結局、自民党案に戻ってしまった。政治が悪い方向に暴走した結果だと言える。沖縄県民は「最低でも県外に移す」と言う鳩山総理の言葉を信じて投票したのに、その怒りは推して知るべし。鳩山総理が責任をとって辞めるのは当然であり、むしろ遅いくらいだ。

――「みんなの党」は着実に支持率を伸ばしている…。

渡辺 地域によっては、第一党になっているのではないかとさえ思われるところもある。公認内定候補者はすでに30人を超え、現在、全国47都道府県を網羅するための「四十七士大作戦」を展開中だ。すでに決定された地方区公認候補者の中には、例えば、全盲の中学教師 河合純一氏というパラリンピックでメダル20個以上を獲得した人物がいる。議員になったら、現場の経験を生かしたいと意気込んでいる。その他、経済界からはタリーズコーヒージャパンの創設者・松田公太氏、元JPモルガン証券副社長の中西健治氏、楽天の執行役員小林司氏など、各界で最前線にいる人物がぞくぞくと「みんなの党」に集まってきている。選挙区では立候補すればするほど議席が取れるような状況にあるため、何人立候補出来るのかが鍵になるだろう。

――「みんなの党」の成長戦略の肝となるものは…。

渡辺 成長は補助金のバラ撒きでもたらされるものではない。企業人や地域の現場の人たちのチャレンジ精神、活力、改革などによってもたらされるものだ。IT革命では世界が一体化し、インドや中国、ブラジルなど新興国が勃興してきたが、一方で、日本は旧態依然たる官僚統制・中央集権によるバラ撒きを続けた結果、もはや衰退国家となってしまった。イノベーション溢れる、民間が主役となる体制を作り直すことが出来なければ、日本は現在の衰退から復活することはないだろう。我々が考える成長戦略における国家の役割は、外交防衛、安全保障、競争戦略、規制緩和、知的所有権の法制度の整備、教育の強化等だ。具体例の一つとして、「30億人のアジア市場」を国内市場・内需として取り込むことを掲げているが、そのためには国境の壁を出来るだけ低くしていくことが求められる。そこで、外交・通商交渉を通じてアジアワイドの規制改革を行うことが国の役割だ。個別の産業をどう育成するかは地域主権に任せれば良い。それが、我々の成長戦略の基本になる考え方だ。

――民主党のばら撒き政策で、財政の帳尻も合わなくなってきている…。

渡辺 民主党のばら撒き政策は日本のギリシャ化を早めることになるだろう。ギリシャでは社会主義政権の下、働き手の4分の1が公務員になってしまったが、現在の民主党政権でも同じように公務員天国を志向している。このままでは財政の歪みが益々拡大してしまう。日本はデフレにはまり込み、現在のグロスの借金は約1千兆円だ。また、日本の資産700兆円の内、金融資産となる520兆円は全て特別会計や独立行政法人、特殊法人などといった天下り団体に流れている。民間は、デフレ下で売り上げが伸びなくなると給料もボーナスもカットされるが、官僚の世界はデフレ下でも給料は下がらず、クビにもならず、デフレにした責任も問われることは無い。それどころか、景気対策、雇用対策、格差是正対策などで出番が増え、不況になればプレゼンスが上がってくる。そんな官僚達に政治を任せ続けた結果、日本はデフレから脱却できない国になってしまったという訳だ。「みんなの党」では、資産と債務は両建で減らしていかなければならないという考えの下、小さな政府を目指し、政治主導で財政・金融一体政策を行うことを提言している。まずはデフレギャップ30兆円を解消するために、日本銀行と政府が一体となり資金供給を行うことが必要だ。このように、マクロ・ミクロの総合的・一体的な戦略が「みんなの党」の成長戦略であり、その根幹は「脱・官僚、地域主権」にある。

――最近では、民主党も政府と日銀とのアコードをマニフェストに入れるような考えを示しているが…。

渡辺 民主党は財務省官僚が日銀へ天下りすることを禁止し、財金分離で日本銀行を国債引受銀行にさせないようにしたが、その結果、日銀はインフレファイター原理主義の巣窟になってしまった。一方で、日銀のバランスシートの倍以上の規模を持つ日本郵政に関しては財務省傘下の植民地にするなど、財金分離の原則に整合性が感じられない。日銀はインフレファイター原理主義、そして、日本郵政は8割の国債運用を抱え、金利上昇局面では破たんが心配されるとなれば、デフレからの脱却は永久に望めない。つまり、民主党にはデフレ脱却のための戦略と覚悟とノウハウが無いということだ。

――最後に一言…。

渡辺 我々は、ブレない「アジェンダ」の下、簡単に連立の組み替えに応じるようなことはしない。それによって、自民党の崩壊はさらに促進するだろう。また、仮に民主党が次の選挙で過半数割れした場合、我々が連立の組み替えに応じなければ、民主党でも崩壊が始まるだろう。「みんなの党」では、詐欺のにおいがする「マニフェスト」という言葉ではなく、あくまで「アジェンダ」という言葉を使い、今後も大義を掲げて、政策と政治行動の実現に向けて取り組んでいく。(了)