衆議院議員 民主党財務金融委員長 海江田 万里 氏

衆議院議員 民主党財務金融委員長 海江田 万里 氏

消費税増税、地方には刺激



聞き手 編集局長 島田一

――先日の参議院選挙をどう総括するか…。

海江田 色々あったが、今回の選挙のひとつの争点は消費税だったと思う。比例代表では民主党が自民党を400万票上回ったが、一人区で大きく負けてしまい、それが全体の議席の減少につながった。一人区というのは小泉改革で疲弊している地方だ。そういったところに消費税の議論というのは、刺激が強すぎたということだろう。東京などでは5議席中2人が当選したが、私が全国を回った感想からしても、やはり地方には消費税増税ということが大きく影響したようだ。

――菅総理が突然、消費税増税を口に出した背景は…。

海江田 これは、菅総理が選挙後に記者会見で話していたことだが、自分が財務大臣を務めていた時にギリシャの問題があり、これは相当大変だと思ったということだった。選挙を前に、ついそこに気がついて、性急にやりすぎてしまったのが今回の失敗につながったのだと思う。しかし、私はギリシャと日本を同列に考えるのは如何なものかと思う。ギリシャの問題は20年遅れのソ連の崩壊だ。ただ、それがEUに加盟していたということで、EU自体の金融システムの問題が起こった。確かにそこからの波及はあるが、日本における問題は、これまでも、そしてこれからも、日本固有の問題として考えていかなくてはならない。

――対外債権保有額世界一、GDP世界2位の日本をギリシャと一緒にするなと…。

海江田 日本の国債発行余力は残り300〜450兆円などの説もあり、ギリシャとは一緒に出来ない。そんな中で、私も、いずれは必ず消費税を上げなくてはならないと思っているが、ただ、その時期が来年という訳にはいかないだろう。昨年の選挙で掲げたように、3年間でとにかく税金の無駄遣いの構造を徹底的になくすための努力をして、法律を作り、廃止していくことが先ずひとつ。そして、年金と医療保険といった社会保障の将来像をきちんと示し、それに必要な財源を計算した上で、税制改革全体の中で消費税をどのようにしていくのかを考えなければならない。

――デフレの問題もある…。

海江田 経済的な面からは、デフレ克服宣言が出来ていない限り増税議論など無理だ。この3年の間で、出来るだけデフレ克服に努めなければならない。G20で日本が財政赤字半減目標の例外とされたことも、なぜなのかをもっときちんと考えるべきだ。日本が抱える44兆円の財政赤字は確かに非常に大きい。しかし、日本の潜在成長率は低く見積もっても2%で、まだまだ競争力もある。対外収支の黒字もあり、貿易黒字と併せて毎月1兆円以上稼ぐ国など日本以外には無い。消費税増税を検討することに関して、私はもちろん賛成だが、今回の選挙では、性急過ぎたことと、自民党に同調して10%という数字を挙げたことで、国民が嫌悪感を抱いてしまった。

――消費税を含め、マニフェストが実行されていないという批判もある…。

海江田 今回の選挙では「マニフェストに書かれていたことが実現されていない」ということと、マニフェスト自体に対して「やる必要は無い」という、マニフェストにおける二つの側面からの批判があった。昨年の夏に公約を掲げた政策は全部で179項目。これらの項目が今年6月の締め切り時点で実行されたのは、一部実施を含めて94項目だ。9カ月間で53%の実施は、冷静に考えていただければ、まあまあ実現しているということなのだが、やはり、目玉となるところで、しっかりと約束を果たせていなかった。「税金の無駄遣いをしっかり無くして、それを子育て支援に向けるということが出来ていない」という評価と、「マニフェスト自体が大変なばら撒きで、そんなことをやろうとすること自体がおかしい」というそれぞれの意見が批判につながり、選挙結果となって現れた。

――みんなの党が躍進し、蓮舫参議院議員は大量票を得て当選した…。

海江田 みんなの党は公務員批判をすることで大躍進を遂げた。また、仕分けでコスト削減に励んだ蓮舫参議院議員は国民から大きな支持を得て当選した。そう考えると、消費税はともかく、まずは無駄をカットすることこそ、国民が望んでいることなのだと思う。もっとつきつめれば、無駄を生み出さない構造を作らなければいけない。蓮舫議員を中心にこれまでの事業仕分けでは、まず、どこに無駄があるのかをあぶりだした。次の課題は、その無駄が再び生まれないようにするにはどうすればよいかということだ。例えば、ある機構は廃止しようと思っても、役人が2重3重のセーフティーネットをつけているため、法律を改正しなければ廃止出来ないような仕組みを整えている。しかし、現在、我々は法律を改正するための数を割ってしまい、非常に厳しい立場にある。このため、今後、無駄を生み出す構造にどう切り込んでいくのかが非常に大きな課題となっている。

――パブリックセクターが民間企業同様にコスト削減をすれば、10兆円単位のコスト削減はすぐにでも出来そうだ…。

海江田 民間企業がバブル崩壊後の20年間で仕入れの3〜4割を削減している一方で、パブリックセクターのコスト削減が大幅に遅れていることを考えると、大いにコストが削減できる。また、ミクロ的に言えば、公共事業などにおける競争入札では、談合などで普通より高い入札価格が決められているというようなこともある。この新しい議員会館にしても総工費1100億円が掛かっており、業者もありえないと思う程高い値段だった。私は建て替えには大賛成だし、国会議員として職を全うするには広さもあの程度は必要だと思っているが、今回の費用は掛かり過ぎだ。入札の談合罪はもっと厳しくしても良いのではないかと言う声も多く寄せられている。

――無駄を生み出す根本的な構造とは…。

海江田 今の公務員のあり方、そして官僚主導だ。菅総理は「官僚の能力を借りる」といった発言をされ、それも当たり前の話だとは思うが、私の個人的な意見を言えば、やはり官僚主導を排除していくということを続けていかなければならないと思っている。一部の報道で、公務員改革の部分においては「みんなの党」と手を組んで進めていくというような話もあったが、恐らく現実的には、みんなの党が提出してきた案に対して、協議を重ねて進めていくというようなことになるだろう。いずれにしても、どの党が案を出そうと、国民全体の納得が得られるように改革を進めて行くべきだろう。

――9月の代表選挙で菅首相を交代させ、けじめをつけさせて、「みんなの党」と連立を組むべきとの意見も党内に出ているようだが…。

海江田 そこは党内で議論すれば良い。単に責任論ではなく、経済政策や財政再建の歩みなどについて議論を深めて、全員が共通認識を持つことが必要だ。政治家が政府に入ると、役人とばかり議論をするようなことになりがちだが、そうではなく、政治家一人一人が自分のアンテナをフル活用して、それぞれの議論を戦わせながら方向を打ち出していくことが大事だと思っている。また、それが出来るのが政治家だ。そしてその上で、来るべき時が来れば思い切って断行するのが、これまた政治だろう。(了)