参議院議員 民主党 大久保 勉 氏

参議院議員 民主党 大久保 勉 氏

4年間で17兆円の削減は実現可能



聞き手 編集局長 島田一

――参議院選挙を振り返って…。

大久保 民主党政権になってから、政治と金の問題や、普天間基地を巡る迷走などで色々な評価があった。そして民主党の支持率が下がっていたところに選挙が行なわれた訳だが、やはり、そこに消費税増税論は厳しかった。それには菅首相自身の問題もあると思うが、これが民主党の本当の実力だと考えて、今後の反省材料にすべきだろう。10カ月の政権運営に関して国民は100%の納得はしていない。44という議席数も、3年前の参議院議員選挙での自民党の議席より多いが、目標の54議席よりも低く微妙な数だ。これから半年〜1年が我々にとっての勝負だと思っている。

――国民に納得してもらうためには、何をすべきか…。

大久保 まずは、責任説明をきちんとすることだ。消費税増税に関しても国民の60%は賛成か、もしくは反対していない。そういった人々に、消費税を引き上げる理由や、増収分を何に使うのかをきちんと説明して、増税のための改革を行わなければならない。私は今回の選挙を非常に不幸な出来事だったと思っている。消費税の発言をして選挙に負けたということは、次の総理が誰であっても、消費税を引き上げて選挙に突入することに対して躊躇する可能性があるからだ。そうなると、消費税増税のタイミングは益々遅れてしまい、日本はギリシャと同じ道を辿ることになりかねない。

――予算削減の状況は…。

大久保 事業仕分けで実際に削減した額は昨年度で2兆円超。その他、予算設定の厳格化で合計3兆円前後の削減となっている。第2次事業仕分けでは、数千億円単位の削減を見込んでおり、平成23年度の予算編成に関しては10%の基礎的財源の削減に向けて取り組みを進めている。具体的には、経済対策予備費や社会保障費および地方交付税を除いたものから各役所の予算で一律10%マイナスのシーリング(概算要求基準)をつけることを考えている。そこで2兆3000億円程度が捻出される予定だ。来年度にもう少し厳しい査定をしたり、行政コストに対する10%のマイナスシーリングをその次の年度には20%〜30%に引き上げるなどすれば、4年間で17兆円の削減まで切り込んでいくことも実現可能だ。とにかく、無駄の削減には時間がかかるということをご理解いただき、国の予算削減に関しても、もっと長期スパンで見守っていて欲しいと思う。

――財政金融委員会の筆頭理事として…。

大久保 税法、関税法、公債特例法等、やるべきことは山積しているが、先ずは予算をどのように作り、如何に通過させるかを考えなくてはならない。予算を実行するための歳入関連法案には衆議院と参議院での可決が必要で、仮に参議院で否決、ないしは2カ月以内に可決できなかった場合は衆議院に戻され、そこで3分の2以上の賛成が必要になる。今のねじれ状態でそのようなことになっては大変だ。3月に予算を通したとしても、予算関連法案が通るメドがたたないという事態になってしまう。そうならないような仕組みを今から考えておかなくてはならない。その話し合いの最前線が参議院財政金融委員会であり、その民主党筆頭理事として大変な責務を担っていると自覚している。

――ねじれ国会で赤字国債の発行が難しくなっている…。

大久保 来年度の予算では、新規の国債は前回の44兆円より少なくして、歳出は71兆円以下に抑えなくてはならない。国債の発行には日本財政に対する信認が欠かせないため、市場のみならず、G20など国際会議で日本の信頼度を深めることも重要だ。この点、現在の円高や、国債の金利が1%を割っているような状況は、市場が日本の国債に対して極めて強い信認を抱いているということだ。この信認を将来までいかに続かせるかが重要になってくる。インフレターゲッティングやデフレ経済の脱出といった議論も景気を良くするためには必要かもしれないが、あまりアクセルを吹かしすぎて急激なハイパーインフレになると国債が暴落する危険があるため、節度をもったマネタリーポリシーが必要だ。個人的には政治家や国債を発行している財務省が金融政策を支配するべきではないと思っている。やはり、日銀という中立的な通貨の番人が、独立性を持ってチェックしていることがベストだ。この点、民主党政権は日銀の独立性をしっかりと支えている。それも、現在の国債価格の上昇と円高につながっていると私は思う。

――外為介入についてのお考えは…。

大久保 為替操作は少なくとも過去にやりすぎている。円高対策としてすぐに効果を表すのは円の金利引下げだろうが、事実上はすでにゼロ金利で、金融政策として出来るところまではやっている。為替介入を行なえば、いつでも円高を食い止めることは出来るが、長期的な効果は望めない。例えば、1ドル70円台など、急激な円高になった場合には介入するかもしれないが、いつでも何かあればすぐに介入をして円安に持っていこうなどという考えは許されない状況だ。日本はこれまで円高介入を続けた結果、外為特会(外国為替資金特別会計)の残高が100兆円になった。その100兆円相当のドル資産は、以前は国債購入か、或いはインターバンクのオーバーナイト取引で運用していたのだが、現在は我々が改善要求をしたことで、例えば、JBICなどに資金を流してTOYOTAなど日本企業に対してドルのファイナンスをつけたりと、よりスプレッドを上げるような運用をしている。ただ、それにも限度がある。同じように、経済政策によって為替を操作するということも極めて難しく、そういうことを人工的に出来るのであれば、簡単に景気を良くすることが出来る。市場のことは市場に任せるしかない。

――日本に対する信認があるだけマシということか…。

大久保 企業にとっては円高も困るが、それよりもっと困るのは、為替の乱高下だ。緩やかな円高であれば、企業は円高対策として色々なことが出来る。例えば実際に、中小企業も含めてアジアなど他国へ進出している企業は多い。日本は、生産性を高めて、付加価値の高い、円高になっても十分な価格支配力を持つようなものを増やしていくことが求められている。ただ、工場の移転などに伴って国内生産拠点の空洞化や雇用の減少といった、マクロ的な問題も出てくるため、この辺りは規制緩和を進めるなど、産業政策をしっかりしていかなければならないと考えている。

――最後に…。

大久保 民主党政権は、透明、オープン、グローバルといったことを重要視し、国内の経済をありのままに映し出す鏡を作ろうとしている。自民党政権のように、汚いものを見えないように磨りガラスにしてしまうのではなく、実態が良い悪いに関わらず、それを映し出す。そこで、財政赤字や無駄といった醜い問題が出てきたら、例え痛みを伴ってもきれいにしていかなくてはならない。現に今、GDPの200%近い財政赤字や、にっちもさっちもいかない予算編成など色々な問題が見えてきたということは、一歩前進したということだ。それらをどの部分からきれいにしていくのか、今後、国民の意見を聞きながら進めていかなくてはならないと考えている。(了)