参議院議員 自民党 中川 雅治 氏

参議院議員 自民党 中川 雅治 氏

明るい将来を描き消費税の筋道を



聞き手 編集局長 島田一

――参議院選挙から自民党に風が吹いてきたようだ…。

中川 国民にとっては、菅総理が消費税増税の発言をし、その後、発言が迷走してしまったことが、鳩山前総理の普天間を巡る迷走とイメージが重なってしまったのだと思う。今回、民主党が選挙で過半数をとれなかったのは、消費税増税に対する反発と言うよりも、総理の発言の軽さに対して国民が信頼感を失ったからだ。そういう意味では、自民党に風が吹いたと言っても良いだろう。しかし、東京選挙区に関して言えば、終始、蓮舫旋風が吹いており、自民党に風が吹いたという訳ではない。確かに、民主党に対して不信感をもった国民はいたが、だからといって自民党が良いという流れにはなっておらず、みんなの党など、新しい党に票が流れている。その結果として、比例区では自民党が負けているということだ。

――一人区で自民党が勝利した理由は、「地方が疲弊している中で、消費税増税論がマイナスに働いた」という見方もされている…。

中川 消費税の増税に対しては、総論賛成、各論反対という方が多い。国の財政事情がここまで厳しくなっている中で、今後少子高齢化が更に進んでいけば、国民の負担を増やさないことにはやっていけないという総論に対しては、世論調査でも5割以上の人たちが賛成している。また、税負担が増える時には消費税が柱になるだろうということに関しても、理解してもらっていると思う。とはいえ、今すぐに増税ということになれば反対する人は多いだろう。私は、こういった消費税の問題を選挙の争点にして戦うことは適当ではないと思っている。連立を組むかどうかは別として、与野党で本当に国のことを考えて、政治の責任として然るべき時に増税に踏み切る以外にない。国民からは「まだ無駄遣いがあるじゃないか」とか、「ここまでひどい財政状況にしたのは政治家だろう」というような声もある。選挙に増税を掲げて勝てる程、国民に対して理解を求めることは難しいだろう。

――仕分け人として大量票を獲得した蓮舫議員や、消費税を上げないと公約して躍進したみんなの党をみていると、国民はやはり、無駄を削減することを望んでいる…。

中川 確かに、それが国民の声だと思う。ただ、民主党が昨年の総選挙の時に「マニフェストを全て実施すると16.8兆円かかるが、これは全て無駄を見つけて予算を組み替えて実現する。国債は増発しない。消費税は4年間上げない」と言った。「自民党政権は無駄なことばかりやっている。自分たちが政権をとれば、いくらでも無駄は見つけられる」というようなことを国民の意識に植え付けて、「だったら一度民主党に入れてみよう」という空気を作った。ところが、実際に昨年の事業仕分けで見つけた財源は7千億円弱。これがすべてと言えるかどうかは分からないが、その程度だ。次に行なった事業仕分けでは金額はあまり重視しないということで、これはつまり、「大きな無駄がある」と誇張宣伝して政権をとったという、つまり、詐欺に等しい。もちろん、無駄はこれからも見つけなければならないが、国民の誰もが見て無駄だと思うものは無く、一部の人にとっては必要なお金だ。それを削るということに対しては、きちんと「申し訳ない」という姿勢を示しながら削っていくべきだと私は思う。実態を隠して無駄がいくらでもあるようなことを言っていては、国民にはいつまでたっても国の本当の姿が理解できない。

――概算要求にしても、96兆円という常識では考えられないような金額が出された…。

中川 日本は財政赤字を累積させてしまったことで、いざという時の政策手段を失ってしまった。景気の悪い時は減税をして、歳出を拡大し、建設国債などを発行することで景気を刺激する。景気が良くなって税収が増えたら、今度は緊縮財政に切り替え歳出をカットし、場合によっては増税しながら元に戻すといった、財政による景気調整機能が全く果たせなくなった。これはもちろん、自民党政権時代の責任も大いにあると思うが、それを批判していた民主党がそれ以上のことをやってしまうとは本当に話にならないことだ。子ども手当も全て実施すれば5.3兆円。そんな財源がどこにあるかも分からない上に、それは景気刺激効果には繋がらない。しかも、「コンクリートから人へ」というようなスローガンを掲げて公共事業のような景気刺激策となるものを削減するとは、支出面での政策においても理解の出来ないものだ。子どもたちが貰う子ども手当にしても、財源がないということは、貰った子どもたちの借金ということであり、結局それは、子どもたちが大人になった時に返済しなくてはならないとなると、親だって嬉しくは無いだろう。こういったことは、随分国民の皆さんも分かってきているようだ。金融政策も、ゼロ金利まできている以上、もう政策の幅は小さい。少しでも良い時に金利レベルを元に戻しておくことが大切なのだが、バブル時の後遺症からか、バブル崩壊後はずっと景気が悪いという感覚に陥ってしまっている。特に政治家はそれをあおっている面があると思う。少し景気が良くなっても「これは大企業だけの指標であるため、中小企業の皆さんにまでは景気回復の効果は及んでいないので、これからもっともっと景気対策を打たなくてはならない」と言う。そうやって、この20年以上、増税のチャンスは無く、金融緩和を元に戻すチャンスも完全に失っている。さらに大規模な景気対策のための歳出拡大をしたり、法人税を減税するにしても、それでギリシャのような国家破綻に近づいていってしまってはどうしようもない。

――今後、日本はどのような道を辿るのか…。

中川 これまでモルヒネを打ち続けてきたため、これ以上の即効薬はなかなかない状態だ。私はまず、将来良くなるというような、明るい未来を描くことが大切だと思う。少子高齢化の進展や経済の国際競争力の低下、国民の教育水準も落ちている中で、財政赤字も民主党政権下で膨らみ続けている。GDPも中国に抜かれ、インドやブラジルがどんどん発達を遂げている中で、海外の人たちも日本経済の先行きが暗いと思えば、日本に対して投資などしてこないだろう。暗い話ばかりの今の日本に、これからの明るい将来を描いていくことは必要であり、それを実現することは、私は可能だと思う。少子高齢化も、今後ずっと進むわけではない。高齢化社会に伴って、働き手を高齢者まで広げていくという筋道を示し、徐々に、確実に、国民の教育水準を上げていくことが必要だ。特に、子どもたちの理数系の学力を上げていくことで、日本の得意分野となる環境やIT、医療分野などの技術開発を押し進めて、国際競争力を上げていくことが必要だと思う。子ども手当などはやめて、そういった分野の技術開発が進むような支援をしていくことが大事だ。同時に、そういった分野の雇用を確保するといったことも必要になってくる。そういう中で、消費税増税などの筋道も描いておけば、法人税減税だけ先に着手することも可能になってくるだろう。

――民主党の代表選については…。

中川 管政権の本質は非常に左翼寄りなのだが、その本質が小沢氏と抗争することで隠されている。小沢氏のやり方や、政治と金の問題、菅氏との抗争を見ていると、国民は「昔の自民党と変わらないではないか」と思ってしまう。その一方で、「いろんな考え方の人間がいるから大丈夫だ」と安心感を持つ国民も出てくる。しかし、結局、民主党自体は明らかに左寄りの政党であり、その中での抗争が繰り広げられているということだ。そういったことは、国民に対しても明らかにされるべきだろう。(了)