自由民主党 政務調査会長 衆議院議員 石破 茂 氏

自由民主党 政務調査会長 衆議院議員 石破 茂 氏

彼方此方にけんか売る姿勢に不安



聞き手 編集局長 島田一

――中国との付き合い方をどうすべきかが問題になっている…。

石破 私は、中国のように広大な国土を持ち、14もの国と地域と接している大国を治めるのは容易な事ではないと思っている。政治は共産主義、経済は資本主義というのは歴史上、非常に珍しい体制だ。その結果、中国国内には格差が広がり、民衆の不満が高まってきた。私は、民主主義国家の条件とは、「徴税権」を国民が選んだ代表に与え、「税金を何に使うのか」を国民が決めることだと思っている。しかし、それを今すぐ中国で実現するのは不可能だ。中国が存続するためには、経済を拡大して国民にその利益を還元し、国境を拡大し、反抗するものには容赦なく軍を差し向けることが必要と考えられている。中国は中国なりに、同じ共産主義国であったソ連が崩壊した理由をつぶさに研究し、ソ連の二の舞にならないように、アメリカが豊かなことや、日本が自由であることなどの真実を、中国国民に対して知らせないように情報統制をしているのだ。

――中国を取り巻く国に武器を輸出すれば良いという意見もあるが…。

石破 日本の兵器は少量限定生産のため価格が非常に高い。90式戦車一台が約10億円で、これは米国のM1A2の約2倍の値段だ。このような高価な兵器を一体どこの国が買うというのか。もともと、日本の兵器というものは、地域に「力の空白」を作らないために高いコストでも仕方がないという意識で作り始めたものだ。実際に戦争をするわけでもなく、使えるかどうかも本当のところ分からない。それは単なる工芸品といっても過言ではなく、それで値段も高いとなれば、輸出など出来たものではないだろう。今、NATOでは28カ国という加盟国が、同じ兵器を皆で研究・開発・生産し、共有している。そんな中において、日本だけが独自の物を作ろうとしたところで、高リスク、高コストとなり、しかも他の国との共有も出来ないのであれば、売れるはずがない。

――中国の勢いに負けないためにはどうすれば良いのか…。

石破 兵器に関しては、「武器輸出3原則」のような愚かなものは直ちに止めて、他の国と一緒に研究・開発・生産をし、共同使用することでリスクを下げるべきだと思う。例えば、スウェーデンは以前、戦車や戦闘機、潜水艦など何でも自国で作っていたが、福祉の予算に力を入れ始めたことで、独自で戦車を作る金銭的余裕がなくなった。そこで、制御システムのコア部分だけを自国で開発し、それをドイツへ売った。ドイツの戦車はスウェーデンのコア部分があって始めて完成する。そうすることで、スウェーデンにはいつでもドイツが戦車を売ってくれるという構図が出来上がった訳だ。日本も武器のすべてを自国でつくって売ろうなどとは考えずに、コアのシステム部分だけを作り、それを高く売れば良い。中国にはそういうものを作る技術はまだない。今のうちに、テクノロジーにおいて日本は圧倒的に優位だという関係を、旧西側諸国としっかり作り上げるべきだ。

――現在の政府与党の外交については…。

石破 今の日本のように、中国、ロシア、米国という周辺主要国すべてとぶつかっていては、どこにも進みようがない。例えば、中国を牽制しようと思うのならば、ロシアとの関係を悪くしてはいけない。私は前原外務大臣とは友人だが、中国に啖呵を切り、ロシアに啖呵を切り、正しいからそれで良いといわんばかりに彼方此方にけんかを売りながら一人で突き進んでいる彼の姿には不安を覚えざるを得ない。私が小泉内閣で防衛庁長官だった時、当時総理の靖国神社参拝などを受けて、中国との政府間交流がすべてストップした時期があった。私の前任だった中谷元防衛庁長官の頃から訪中も拒否されており、後任の私にも当然それが続いていた。長官になって最初の訪問で私は米国に行き、そこで当時の米国防長官だったラムズフェルド氏と意気投合した。次に訪問したロシアでもイワノフ国防大臣と仲良くなった。その後、防衛庁長官として初めてのインドや韓国など、次々に各国を訪問して密な関係を築いていった。それを見た中国は、これまでの頑なな態度を一変させて、訪中を要請してきたという経緯があった。

――日本が他の国と仲良くなっている姿を見て、中国が不安になったと…。

石破 当時私は45歳で、中国側からはきっと、「日本の若造が来た」と思われていただろうと思う。しかし、有事法制やミサイル防衛について国防部長に淡々と説明し、結局、温家宝首相にまで会うことになった。外交とはそういうものではないか。それなのに、小沢氏が大勢の議員を引き連れて中国に挨拶に行き、写真撮影などを行なっているような光景を見ると、そうじゃないだろう、今の外交は本当に下手だなと、つくづく思う。

――企業は日本から中国へ、そして今度は中国からからASEANへと移り始めている…。

石破 日本の法人税もASEAN並に下げなければ、企業がASEANなどへ逃亡する流れは止まらないだろう。研究開発優遇税制や、設備投資減税なども考える必要があるかもしれない。財務省は、法人税を下げるからには増税をしなければ困ると言うかもしれないが、我々としては、そうでなくても消費税を上げることは急務だと思っている。消費税増税は禁句になっているが、間接税を上げると景気が悪くなるという不思議な理論を唱えているのは日本だけだ。どの国でも「直接税を減らして間接税を上げることが景気回復の決め手だ」という認識にもかかわらず、日本では消費税増税議論を封印し、国債を発行して借金を増やし続けている訳だ。挙句の果てには、「景気が良くなると金利が上がり、金利が上がると国債費の利子分が増えるので景気が良くなっては大変だ」というような説まで出てきている。これは、かなり病的な考えではないか。

――日本は、国民資産はたくさんあるのに、国は借金ばかりで、なかなか景気も良くならない…。

石破 お金の有る無しと景気の良し悪しは必ずしも関係がない。今はお金を使わないから、景気が悪くなっている。国民金融資産の大部分を持つ高齢者は、新たに高級車や高級ブランド品などを買ったり、新築の家を建てるようなことはあまりしない。それよりも、年金の問題や家族構成等の問題から、自分の老後のために手元資金を蓄えておかなくてはならないと考えている。一方で、欲しいものがたくさんある20〜40歳代の人たちは、この景気で職がなかったり、給料もボーナスも上がらずお金を持っていないという状況だ。この悪循環を抜け出すためには、消費税を上げて、「これは医療・年金・介護に使います。老後は何の心配も要りません。」と言えるだけの社会保障のプランをきちんと示し、お金を使っても安心していられるような環境をつくらなければならない。生前贈与をもっと拡大したり、高齢者の方々の購買意欲をそそるような商品を作るといった工夫も必要だろう。そして、企業は団塊の世代が退職した後には、きちんと若者の給料を増やしていかなくてはならない。私は、株主への配当ばかりを気にするよりも、まずは従業員に還元することが、今、このタイミングにおいては最重要視されるべきことではないかと思っている。(了)