一水会 代表 木村 三浩 氏

一水会 代表 木村 三浩 氏

ことなかれ外交で問題大きく



聞き手 編集局長 島田一

――32年前、愛国心から尖閣諸島魚釣島に点滅式灯台を建設された…。

木村 当時私は21歳で、祖国愛に燃える民族派団体の「日本青年社」に所属していた。そして、先輩達と工事士8人のグループで、1978年8月11日、私有地であった尖閣諸島魚釣島に上陸し、約10mの電信柱の先端に太陽電池をつけて「魚釣島漁場灯台」を建設した。その灯台は夜になると周辺20km程度を照らし、それが実行支配に向けての布石となった。奇しくも8月12日は日中平和友好条約の批准日だった。漁師以外でこの尖閣諸島に日本の固有領土という意識を持って上陸した人は、やはり民族派の先輩たちで、昭和46年の沖縄返還時が初めてだ。その後、この領土には地下資源が豊富にあるいう報告が出たことによって、台湾や中国が領有を主張し始めた。

――尖閣諸島はもともと私有地だったと…。

木村 魚釣島は、もともと福岡県在住の古賀氏が開発してまぐろ漁業などを行なっていた島だ。実際に私が上陸した時も鰹節工場の跡があった。そして、その後はさいたま在住の結婚式場経営者の方の手にわたり、私有地となった。その他の南小島、北小島も同様で、久場島はその母親が所有しているようだ。ただ、大正島に関しては今でも財務省が管理している。大正島は戦後、米軍の射撃場となっていたからだ。

――その領有権の問題をうやむやにしたまま、ここまできてしまった…。

木村 日本青年社は灯台を建設した後も点検補修などを続けて維持管理を行なっていた。そして、国土交通省に対してこの灯台を国際的な海図に載せてもらうよう提案していた。灯台を海図に載せるということは、国際的な海の地図の中に、「ここには日本の灯台がありますよ」という事実を示すものになったはずだ。しかし政府としては、実行支配はしていたとしても、ことさら中国との関係を荒げたくなかったのだろう。「まだ時期が早い」と言われていた。

――せっかく実行支配をしているのに、政府の対応は困ったものだ…。

木村 今の菅政権は自民党政権時代の申し合わせ事項をきちんと勉強していないため、物事の判断に継続性が無く、本当に対応が遅い。基本的に「ことなかれ主義」の菅政権は、外交問題では「問題を大きくしたくない」ということばかり考えて、逆に問題を大きくしている。

――今回の中国漁船衝突事件の一番の問題は何だったのか…。

木村 97年に締結された日中漁業協定(新協定)があったことだ。尖閣諸島の領有権問題については棚上げ状態を続けながら、海中の漁獲問題については、お互いの利益を共有出来るように、「相手国の漁船が自国の排他的経済水域に相互入会して操業することを認める」という漁業協定を結んだ。そして、資源管理や操業秩序に関してその規定を違反した場合には、自国の船舶に対して取締りを行なう措置を義務付けて定めた。このため、今回の中国漁船に関しては、本来ならば中国機関に取り締まらせるべきだったのだが、それを日本側が公務執行妨害で逮捕してしまった。これが領海侵犯や出入国管理法令などで取り締まるのであればよかったが、公務執行妨害では相手国の言い分も、その理屈も立てようと思えば立つ。漁民はそれを知っていて、日本政府を馬鹿にしているという訳だ。私は、そこはきちんと再定義するべきだと思う。

――菅政権ではこのことを知らず逮捕の仕方を間違ってしまい、その後の対応にも戸惑ってしまったということか…。

木村 実は日中漁業協定(新協定)は01年で失効しているが、その後、日中漁業委員会が作られて毎年交渉されているということを菅政権は知らなかったのではないか。そもそも、捕まえるのであれば起訴しなくては駄目だ。その辺りの判断も間違っている。さらに、公務執行妨害で捕まえたとしても、証拠物品となる船まで返すとは一体何を考えているのか。船長の釈放に関しても、せめて起訴猶予にしておくべきだったはずだ。

――日本外交はボロボロだ…。

木村 韓国との間には竹島の問題もある。先日は韓国の政府観光局が、竹島に来ている日本人観光客が100人を超えたと発表した。それは、竹島の実行支配が韓国側にあるということを示そうとしているのはもちろんのこと、色々な問題で日本の外交の弱さを露呈している今だからこそ、それを見計らってわざわざこのタイミングで発表したと思って良いだろう。

――今後、この日本の弱腰外交をどのようにしていくべきか…。

木村 政府の閣僚がその認識を持つことは言うまでもないが、まずは国民のナショナリズムや、外交で主張すべきは主張するといった姿勢が求められていることを認識すべきだ。そのためには、正常なマスメディアがきちんとした報道をする必要がある。マスメディアが国民の声を無視し続ければ、その押しつぶされた声は鬱積し、不満となり、さらに増幅していく。そして、それがどうしても届かない場合、不穏当なことかもしれないが、凶器をもってその不満の心をぶつけてくる人間が出てくるかもしれない。

――これまでマスコミが意図的に封印してきたようなことも、ネット社会が発達したことで簡単に流出するようになった…。

木村 これまで日本人は、「極論」「快感」「危険」という3Kを避けてきた。特に「極論」に関しては、大手マスコミが言葉狩りをしてすべてシャットアウトさせてきたという歴史がある。しかし、これまで封印されてきたことで溜め込まれ、鬱積していた過激な言葉や情報は、反動となって、今、ネットで噴出している。中国ではそれを情報統制して止めようとしているが、民主社会の日本において、これを止めることは不可能だ。

――あらゆる国民の声を、メディアがきちんと反映させなければならない…。

木村 今回、政府が衆議院予算委員会だけに限定して尖閣諸島沖での中国漁船衝突のビデオをみせたが、結局それも、現場の行動を分かってもらいたいという海上保安庁職員のクーデターからその映像が流出されることになった。色々な機密事項もあったと思うが、それにもかかわらずこういった問題が起きたということは、明らかに政権の内部崩壊が起きているということだ。政府はもっと国民の意識を信頼したうえで、中国側に日本国という立場をきちんと説明し、問題の衝突ビデオを公開する手続きを取るべきだったと思う。

――日本が諸外国と上手に付き合っていくために必要なものは…。

木村 私は基本的に、「王道博愛主義」を唱えている。「王道」とは揺らぐことのない東洋精神、「博愛」とは隣人を愛すキリスト教精神を表す。つまり、縦と横が一緒になることが大切だということだ。自分の国だけが正しいという偏った考え方ではなく、もっと各国と十分に話をして、道義を持って相手国をきちんと理解する必要がある。理解したうえで、相手国を尊重しながら自国の守るべきものをしっかり守るという、この「王道博愛思想」は、非常にモラル性が高い思想だ。各国と十分にコミュニケーションをとることによって、改めて東洋を見直していく契機にもなるだろう。つまり、日本を軸に東西が融合され、伝統と現代が調和することで、これからの新しい道が作られていくと私は信じている。(了)