緊急記者座談会

緊急記者座談会

行方知れない日本経済



聞き手 編集局長 島田一

――10月ごろから予想されていた通り、米の金融緩和政策が出口に向かい始めるのではないかということで、円高が一服して株価も反転してきている…。

 まだ、一本調子に円安・株高になるのか分からないが、とりあえず、円高・株安で攻めてきた巻き戻しが起こっているといった見方が妥当なのではないか。もちろん、しばらく巻き戻されて、平均株価が1万2000円を回復することを期待したいが。
 平均株価の1万2000円回復を期待するむきは多い。なにしろ、1万円割れのままだと金融・資本市場が干上がってしまう。再び、コスト削減だということになりデフレスパイラルだ。コスト意識を持たなくて良いパブリックセクターはデフレでも関係ないから、「金融は極めて安定的」などと呑気なことを言っていられるが、民間は円高・株安・物価の下落にあえいでいる。
 しかし、日銀も日銀法改正という刃を突きつけられてようやくリスク資産の買い取りというカードを出してきた。引き続き「ツーレイト、ツーリトル」(遅過ぎる、小さ過ぎる)の感は否めないが、円高反転はこうした日銀の姿勢の変化も少しは寄与している。やらないよりはまだましだ(笑)。
 とはいえ、円はまだ84円台だ(11月29日時点)。決して円高ではないといえる水準ではない。それだけに、財務省、日銀ともに追いかけ介入を行うべきだが、これまでのところそこまでの姿勢は感じられない。財務省、日銀ともに円高が反転してくれて一息つけたといったところだろう。ここからが本当の勝負なのに、市場をコントロールする判断力に乏しい。
 確かに、80円台の水準は、かつての1ドル=360円からみるとまだ4倍の円高だ。円安に反転したと喜んでいられる水準ではない。これに対し中国元の現在の水準はかつてのわずか4分の1の安値、韓国ウォンは50%下落している。だから、両国の輸出は依然として好調だ。また、韓国は北朝鮮の砲撃によりウォン安圧力が掛かりやすくなっているため、来年も輸出は好調なのではないか。
 日本の外交力の弱さと政治家の経済音痴が円高と経済低迷の最大の原因だ。80円台の円高が続けば、日本からASEAN各国などへの企業の脱出が続き、日本では働く場所がさらに無くなってくる。法人税を5%引き下げるか否かを議論している場合ではない。5%引き下げ程度では「ツーリトル、ツーレイト」だ。加えて、課税ベースを引き上げるとか、高額所得者の増税など、企業や金持ちが海外に脱出することを促進させる政策ばかりとろうとしている。
 やはり日本は、今のままだと公務員と失業者と老人ばかりの国になっていくだろう。それでも公務員と老人は良いが、若者を中心に失業者が増加して子どもも産めないという閉塞感の一層強い国になってしまう。そうならないようにしなければいけないが、今の民主党では企業や金持ちを活かしていくという考えに乏しく、逆に企業や金持ちは悪だといった考えのもとで政策が打ち出されている感じだ。

――SENGOKU 38か…。

 それはよく分からないが、例えば中国を先頭にアジア各国は株式市場を活用して経済発展をしようとしている。これに対し日本は逆で、株式市場にはお金が流れないようにして国債市場を守り、結果としてデフレを深刻化させている。アジアで日本が一番の社会主義国だと言われるゆえんだ。国債市場が守られているから、国債の大量発行が可能となっており、それが財政の肥大を生む要因になって、結局、国債残高がGDPの2倍に巨大化してしまった。また、その反動で新興株市場は不振にあえぎ、年間わずか20銘柄前後に停滞するなど、民間企業は育たず企業の海外移転と合わせ税収源は枯渇するばかりだ。

――確かに利益を生まないパブリックセクターばかり大きくしては経済成長はない…。

 パブリックセクターは、日本のバブル崩壊後の20数年間、民間経済が長らく調整したため、そのいわばカンフル剤として肥大化し続けている。その間、民間はデフレに対応して3〜4割のコストを削減してきたが、国は昨年からの仕分け以外は何らコストが削減されていない。地公体では東京都や横浜市などが率先してコスト削減に成功してきたが、国や特殊法人ではコスト削減という意識すらないところも圧倒的に多い。これが日本経済の大きなお荷物になってGDPの成長を妨げている。

――尖閣諸島で戦争でもして円安にするか…。

 海と空ではまだ日本が勝てるため、ひとつの案だと思うが、そうしたことを考えられる人材が今の政府にいないことが大きな問題だと思う。尖閣諸島というと中国が一方的に悪いという意識を日本人は持ちがちだが、防衛省の元幹部によると、中国はここ20年間で着実に陸上部の国境問題を解決してきた。残るは尖閣諸島など海上部の国境問題だけになっているとのことだ。そして、そのために空母を建造して着々と海の守りも固めつつある。これに対し日本は20数年前に世界一の経済大国になりながら、国境問題はひとつも解決できなかった。

――やはり中国は戦略的で頭がいい…。

 日本の外交は米国に「おんぶにだっこ」だから、自分で行動するということをしてこなかったから、外交能力も大幅に欠落してしまった。その象徴が4倍の円高で、貨幣戦争の敗北者といえるのではないか。
 とはいえ、今まではアジアでは日本だけが先進国で、かつ米国の核の傘の下に入っているから自由な外交ができなかったということもある。この点、今は中国が米国の上手を行っているから、ロシアと米国の対立から、米中の対立へと安全保障の構図が変わってくれば、その変化のなかで新たな外交経済政策を打ち出すことは可能だ。

――そんな頭の良い人間が今の政府にいるかはかなり疑問だが、そうした状況に期待するしかないか(笑)…。

 また、米国に対等に対応する中国の動きを見て、日本に欠けているのは外交力と感じた国民も多いだろう。そして、日本のGDPはもう伸びる必要はないといった経済の分からない民主党の現役大臣もいるが、経済がダメになれば尖閣諸島も北方領土も侵略されるということも今回のことで良く分かっただろう。もっとも、民主党の閣僚のなかには、北方領土も尖閣諸島もくれてやれば良いという平和主義的な思想を持った人もいるという話を一般紙の経済部記者が言っていたが…。

――戦争になったら直ちに白旗をあげて降参しろといった思想も日本の戦後には流行ったが、本当にそれで済めば良いが、それはグローバルスタンダードではないだろう(笑)