日興コーディアル証券 代表取締役社長 渡邉 英二 氏

日興コーディアル証券 代表取締役社長 渡邉 英二 氏

新しい総合証券会社を再構築



聞き手 編集局長 島田一

――三井住友フィナンシャルグループの一員となって一年。10年ぶりに総合証券会社に復帰した…。

渡邉 リテールビジネスを中心としていた事業に、総合証券として、引受業務と投資銀行業務を加えるため、新たに資本市場本部と投資銀行本部を設けて体制を整えた。リテールビジネスとホールセールビジネスを両輪とした総合証券として前進出来る事は大変有り難いことであり、私も、胸に熱いものを感じている。リテールビジネスにおいては我々がこれまで培ってきた販売力を生かし、また、ホールセールビジネスにおいては幅広い商品を提供し日本を代表する証券会社のひとつとして、シナジー効果をしっかりと発揮していきたい。

――ホールセールにおける現在の課題は…。

渡邉 ホールセールの分野で強化すべき主なポイントは3つある。それは、トレーディング、リサーチ、海外だ。債券のトレーディングに関しては、この一年間、債券の引受けとともに、着実に実績を積み上げた。エクイティトレーディングについては、今年の夏にシステム売買が再開し、多くの機関投資家にご利用いただいている。今後もこの流れを拡大させていきたい。また、エクイティのトレーディングを行う上で必要なリサーチ力については、調査部門にトップレベルのアナリストを揃え、現在の上場17業種の対象を、年末までに20業種まで増やす体制を整えている。

――エクイティ・ファイナンスでは野村證券の独壇場のような状況だが、この辺りをどのように切り崩していくのか…。

渡邉 資本市場全体として考えれば、やはり複数の会社が競争して盛り上げていくことが大事なポイントだと思う。しかし、幹事基盤は一朝一夕で変わるものではない。特にエクイティ・ファイナンスの分野では実績が必要だ。そういう意味では、多くの案件に参加し、一歩一歩実績を積み上げていくことが大切だと思っている。今後はホールセールビジネスへの投資や人件費などコストも増加するが、それらのコストを吸収してなお、他社と伍していける業績を確保できるように、今後の投資先や海外への進出などについては銀行とも相談しながら進めていく。

――海外部門の進出状況は…。

渡邉 先ずはロンドンに拠点を開設した。ニューヨーク、香港、上海にも拠点の開設を進めている。ただ、あくまでもマザーマーケットは日本だと考えている。機関投資家のニーズや、個人のお客様にどのような商品提供を出来るかを最重要課題とし、海外での活動は、基本的にIRや、国内の法人に対するM&Aの相談、そして、海外の商品を日本マーケットに供給するための拠点だと考えている。海外での株式や債券のブローカレッジ業務はローカルビジネスとしてやっていきたい。昔のようにポジションを持ってトレーディングするようなことはまだ先になると思うが、海外のお客様と日本で連携を図りながら取り組むつもりだ。そして、総合証券としての機能をひとつひとつ積み上げて、お客様からの信頼を獲得し、他社に真似が出来ないような証券会社を目指していく。

――三井住友銀行との連携体制について…。

渡邉 SMBCと共同で行ってきた債券トレーディングや引受けなどは、この一年で他社と伍していけるレベルに近づいた。個人の部分については、年明けにSMBCフレンド証券の金融商品仲介業務等を統合する。リテール業務では、お客様とのコミュニケーションが特に重要だ。この点においては、93年前から築き上げてきた日興證券に対するイメージは我々の財産としてきちんと遺されている。これまでも応援をいただけたのは、お客様の信頼を得ていたからであり、そういった信頼を得続けることが出来たのは、社員が努力してきたからだ。有り難いことに、リサーチやトレーディング部門では、一度辞めた社員たちが再び戻ってきてくれている。その他、新しい総合証券会社を再構築するために色々な方面から集まって来てくれた社員が、皆、同じ方向性と価値観を共有していることが、この一年間で様々なことを実現できたことにつながっているのだと思う。

――日興アセットマネジメントが住友信託銀行の傘下となったが、商品部門で不便に感じるようなことは…。

渡邉 お客様のニーズに応えられるような商品としてこれまで販売してきた投資信託の中には、当然、日興アセットマネジメントの商品も多くあったが、「日興だから、日興アセットマネジメントの商品」という時代を卒業してもう長い。この10年の中で、投資信託は「ベストプロダクトポリシー」を掲げ、商品部門があらゆる運用会社と一緒になって、常に環境を見ながら、今一番何がいいのかということを考える時代になっている。日興アセットマネジメントが同じ資本下にあった時代から「なぜうちの商品を扱わないんだ」と文句を言われるほど吟味してベストプロダクトを作り、リテールの信頼を高めてきたという歴史があり、こういった、「お客様のニーズに、より合ったものを提供していく」というスタンスは、これからも全く変わらないし、変わるべきではないだろう。

――銀行と証券が一緒になるメリットとは…。

渡邉 信用力が最大のメリットだ。個人でも1,400兆円の金融資産があり、そこには銀行の口座が存在する。そういった方々の証券ニーズに対して、我々の持つノウハウや商品を提供することでシナジー効果が生まれてくる。そのためにも、我々の努力で総合証券としての能力を高めていくことが求められている。そのためには、銀行と証券の業務は当然違うということをきちんと認識して行動することが大切だ。我々はシティグループの100%子会社だった時代もあって色々な経験をしてきているためか、相互交流の中できちんと相手を理解して付き合っていくということに長けていると思う。緊張感や親会社への信頼感をもって、しっかりとやっていくという決意ははっきりしており、その意気込みや覚悟の程はある。そして我々が証券会社としての使命をきちんと果たすということがフィナンシャルグループ傘下にいるという責任であり、存在価値だ。そして、今ある状況で、銀行と証券が一緒になって機能を充実させ、法人・個人のニーズに精一杯お応えしていく。それが、今後の一番の課題だ。(了)