衆議院議員 川口 博 氏

衆議院議員 川口 博 氏

国・地方とも自主自立の気概必要



聞き手 編集局長 島田一

――日本の統治構造のトップにいる人たちは経済を知らない人が多い…。

川口 私は国会議員になって1年2カ月だが、正直なところ消化不良だ。未だに自民党だ民主党だ、小沢だ反小沢だという争いをしており、もうそろそろ世の中が必要としていることをきちんと実行するべきだ。例えば地方がきちんと自立していけば将来的には国の財政規律も回復するし、もちろん外交だって上手くいく。地方のことがきちんとできなくて、外交が上手くいくはずがない。今は地方のこともきちんとできないような状況だから、対中・対米外交もすべて上手くいっていない。日本が成熟社会に入って何をやらなければいけないかということを、政治がよくわかっておらず、実際に政策として打ち出せていない。

――日本にとって必要なことは…。

川口 政策さえよければ国民の暮らしは良くなる。私が以前、町長を務めた秋田県の小坂町では都市鉱山の活用などリサイクル・環境事業に活路を見出した。平成に入って日本の税収は下がる一方だが、小坂町では1人当たりの所得が倍増した。私は今、飛行機のリサイクル事業に取り組んでいる。今まではジャンボ機が花形だったが、これからは中型機等が主流になり、今後10年間で1万機くらいのスクラップがでる見込みだ。航空会社・商社・海外の企業などと何回か研究会を重ね、ビジネスとして成り立つのかどうかを議論し始めたところだ。

――TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加交渉では自由貿易派と農業保護派の対立があった…。

川口 私は農家の息子だが、耕運機なども、中東から輸入した石油がないと動かない。自由貿易と農業のどちらが大事かではなく、自由貿易の中に、石油も入っていれば農業も入っているということだ。日本の農家の技術は非常に高く、自由貿易でも世界に太刀打ちできる農業を作るべきだ。その道筋を付けるとともに、貿易のルールづくりにわが国がリーダーシップをもって関与していくことが重要だ。

――日本の農業を強化するための取り組みとは…。

川口 日本の田んぼは今の6割あれば米を食べるために十分で、残り4割は減反の対象となっている。「お金をあげるから田んぼで米を作らないでほしい」というのは間違った政策で、その4割を活用するような政策を実施すべきだ。私は3年前から自分の田んぼで飼料米を育成し、豚に食べさせている。日本の家畜は海外の穀物メジャーから買った餌を食べており、空いている田んぼに家畜用の穀物を植えることによって自給率は大幅にアップする。また、自ら育てた飼料米を食べた豚は、遺伝子組み換えの可能性がないなど安全性が高いので、昨年から業者は1割程度高く買ってくれた。つまり、農業もやり方次第だ。TPPの議論を契機として世界に太刀打ちできるような農業の実現に向けた研究会も立ち上げたいと思っている。

――日本の農産品は海外から高評価を受けている…。

川口 今まで日本のものづくりは安くて良いものを作ることに努力してきたが、これから日本の農産品は高くても質の良いものを作るべきだ。日本は資源がないと言いながらも、降雨量は世界平均の倍以上ある。雨が降っても、緑がない国ではただの洪水になるが、日本は原生林があるので、ミネラルが溶け出してアミノ酸の入った良い水になる。これから他の国では水がアキレス腱になるだろう。土壌も良く水質も良いとなると、高くても質の良い農産品が日本ではとれる。消費者には「日本の農産品はすばらしい」と、もう少し自信を持ってほしい。今までは金さえあれば安くて良いものをよそから買おうという考えがあった。その結果、最も大事な食料・エネルギー、防衛さえもすべて、金でよそ頼みとなり、日本に自主自立の気概がなくなってきた。自主自立の気概がなくなった一つの例が、地方の急速な衰退だ。自主自立の気概を田舎がきちんと持って、それを政策として打ち出せば、暮らしは良くなり、所得は上がる。小坂町ではそれをやった。

――農業改革のためには、農協などのシステムの改善や機能の向上が必要となる…。

川口 農協は農家の作物を買い取るのではなく、販売を代行して手数料をもらう仕組みになっている。その結果、農家の側が赤字にもかかわらず、農協に箱代や手数料などを渡すという場合もある。現在は農協側が困らないようなシステムになっている。そこで一部の農家は消費者に直接販売を行っている。そういう意味では中国の富裕層は魅力的だ。人間古来の夢は不老長寿で、ある程度お金や社会的地位があると健康にお金を使う。中国の一部はそのような段階に入ってきている。例えば中国は質の高い農産品を育成する技術やノウハウがないので、こちら側がそういう商品を販売することも一つの国際貢献だ。貢献すれば向こうも尊敬してくれる。日本が中国の安価な労働力を利用するという状況では、中国だって日本に対する不信感が出てくる。

――地元の秋田県など、地方経済は厳しい状況にある…。

川口 秋田は米も美味しい、秋田杉がある、地下に行けば鉱石があるという非常に恵まれた県だ。ただ、鉱石にしても、採掘し終わると大企業は利益がなくなるため、あっという間にいなくなっていく。秋田杉も切れば無くなる。米だって、自由経済では需要と供給のバランス悪化で価格が下がるのは当然だ。今まではそのような状況をカバーするために公共事業があったが、現在では米価が下がる、公共事業の予算が減っていく、役場も市町村合併で減少するなど全て逆風だ。考えてみると、公共事業を行うのも国で、米価を支えているのも国。公務員として働ければ一番良いという状況を考えると、米価も公共事業も役場も公が支えているという、ある意味で社会主義国家的なことになっている。こういうことをやっているから日本の財政や経済が駄目になってきた。

――地方の自立を考えていかないといけない…。

川口 地方には自主自立の精神が必要だ。三位一体の改革では、小泉首相は「税源移譲すれば流れは良くなる。地方に税源を移譲する」、「バブルが崩壊して国も苦しいから地方もがんばってくれ。国が面倒を見るから地方も借金してもかまわない」と言っていた。しかし、いよいよ地方交付税を一気にもらえると思ったら、逆に減ってしまった。その辺の改革から地方は一気に疲弊してきた。国を当てにしすぎてきたからこそ、地方は今日のような状況になってきたのではないか。そうした状況を一刻も早く変えることで、国全体も良くなっていくよう、自らができることを全力でやっていきたいと考えている。(了)