財務副大臣 参議院議員 櫻井 充 氏

財務副大臣 参議院議員 櫻井 充 氏

GNPベースの考え方も必要



聞き手 編集局長 島田一

――マーケットから見れば、歳出削減、新規国債発行の削減が最大の国債管理政策だ…。

櫻井 短期的に見れば、歳出を削減することが財政再建に資することだと思う。ただ、GDPの規模が昭和60年当時と比較して1.5倍程度伸びているにも係わらず、税収が当時と同じということは問題だ。税収と国債発行はセットであり、税収が上がらない限り、国債の発行を減らすことは無理だ。税収を上げるためには、増税するか、景気を良くして自然増を見込むかという二つの考え方があるが、まずは、税収の自然増をどう見込み、どのような形で誘導していくのかを考えなければならない。結局、歳出を抑制して5年後の税収を現在と同じにするのか、もう一度産業構造の変換を図るなど様々な政策をとって、その結果、5年後、10年後に実を結び税収が上がるのか、ということに尽きる。

――具体的な政策は…。

櫻井 例えば港の整備にしても、もっと迅速な取り組みが必要だ。国交省港湾局がこれまでの計画を前倒しして進めれば、予算は膨れるかもしれない。しかし、本当にリターンが見込める事業であれば、そのリターンを早く得ることが出来る。今までは財政状況が厳しいことから財政出動を抑え、そのために国際競争力を失ってきたが、これからは、各省庁に「どの事業にどれだけの将来リターンが見込めるのか」という見通しを立てさせ、我々が本当にその見込みが正しいかどうかを判断する。そこできちんとした判断が出来るかどうかが勝負になってくると考えている。

――23年度予算のポイントは…。

櫻井 例えば、経済産業省の予算はわが国にとっての投資だ。投資したものが一体何年後に、どういった形のリターンになるのかをかなり厳しくチェックした。また、文科省の予算では、総合科学技術会議の人たちにも加わっていただき、研究の成果がどれだけの形になって出てくるのかをかなり細かく評価してもらった。ここで判明した問題は、日本は基礎研究の段階から前に進まないということだった。つまり、予算だけではなく、予算を執行する上での体制、例えば官民で共同研究を行うステップを作り、民間がそのシーズを持って新たな商品開発や技術開発を行うようなシステムも一緒に作り上げないことには駄目だということだ。今回の予算措置では、将来の税収増にいかに結びつけていくのかを相当深く考えている。

――国債の年限についての考えは…。

櫻井 私は、国債管理政策の中で最も大切なのは、金利リスクに対してどのようにヘッジしていくかだと考えている。我々が描く今後のシナリオは、日本経済が立ち直っていくというものだが、シナリオ通りに景気が戻り、他の運用利回りも良くなってくれば、当然金利も上がってくる。そうすると、国債の利払いも増えてくる。そういった観点から、超長期国債を発行することは極めて大切なことだと思っている。とはいえ、このような国債の発行額が20年も30年も続けば日本は破綻してしまう。過去には対GDP比250%まで耐えた英国のような国もあるが、日本がそうなるまでには残り10年程度しかない。つまり、この10年の間に構造改革を行い、産業の構造変換を起こし、税収を増やす手立てをとらなくてはならないということだ。日本の10年先、20年先を見据えたうえで、金利政策をとる際に一番有利な年限を考えると、短期物では、景気が良くなるに従って金利上昇幅に応じた多額の国債金利が問題となり、一方で不必要に長い国債を発行すれば、それだけ金利の利払いが増えてしまうため、私の考えでは30年債と40年債を発行しておけば十分だと思う。仮に永久国債のようなものを発行すれば世界の信用を失うかもしれず、そういったものを発行するよりも、30年債や40年債がマーケットできちんと消化できることの方が重要だ。まずはそこで安定してから、次の段階として国債管理政策をどうすべきかを考えていきたい。

――法人向け国債の商品性については…。

櫻井 国はこれまでにも様々な商品を開発してきたが、デフレ下ということもあり、物価連動債は発行を中止せざるを得ない状況となった。しかし、他の国では元本を保証した物価連動債もある。デフレから脱却すればもちろん物価連動債を復活させることも考えているが、新たに元本保証の商品を開発して売ることも検討しているところだ。一方で、15年変動利付債についてはマーケットからの要望も少ないため、今のところ発行する予定は無い。

――個人向け国債の商品性は来年度見直されるが、今後、個人投資家の国債保有割合はどの程度になると見込んでいるのか…。

櫻井 重要なことは、如何に金利リスクをヘッジするかであり、そうすると、どういう形が国債を消化しやすいのかを考えることが一番大切になる。例えば、個人保有比率を10%にすることを目標に掲げて、それが消化できなければ、金利は上がってくるだろう。そうなると、金利を如何に安く抑えて国債を消化出来るかにかかってくる。割合を全く考えない訳ではないが、それを最重要視している訳ではないということだ。ただ、今回の商品見直しでは個人にとって大変魅力的な商品に出来上がっていることは間違いない。私自身も「これなら買ってみたい」と思えるような商品だ。

――最後に…。

櫻井 破綻する国としない国の違いは、国として金利を支払えるかどうかが最大のポイントだと思う。今回の予算でも、71兆円という歳出部分以外の国債費約21兆円が、国家予算上、非常に大きな問題となっている。この点、国債管理政策はわが国にとって最重要課題であり、国家財政上、増えていかざるを得ない国債の利払いをきちんと行うためには、景気を良くしたり、住宅政策などでも固定資産価値を高めるような仕組みを作るなどして、税収を増やす方法を考えなくてはならない。一方で、企業が海外のマーケットを求めて海外に拠点を移している現在においては、GDP(国内総生産)ではなくGNP(国民総生産)という考え方に立っていくべきではないかと私は考えている。GNPを基本にすれば、海外生産も算入することが出来るため、今、日本企業がどんどん海外に進出していることと整合性が取れ、国債の発行限度についても今少し猶予が生まれる。そうなると、強い円を使ってさらに海外進出を拡大していくことも可能だ。そういうことによって財政再建をしていけば、日本はまだまだ十二分にやっていけると思う。(了)