日本監査役協会 会長 築舘 勝利 氏

日本監査役協会 会長 築舘 勝利 氏

法制化で役割をより有効に



聞き手 編集局長 島田一

――日本監査役協会の会長として3年目を迎える…。

築舘 協会の会長として2年が過ぎた。監査役は独任制であり、法律で一人一人の独立性が求められているのだが、そうはいっても監査役会を設置している会社では、会議体として色々なことを判断したり、意思統一を図っていく必要性が生じている。監査役の役割は時代とともに劇的に変わってきており、私が以前、会社で執行部にいた頃と比較してみても、今の監査役は取締役の業務執行を監査するという任務を全うするために、取締役会を始めとする重要な会議で積極的に発言するなど、非常に活発な監査活動をしていると思う。平成13年の商法改正で監査役会の半数以上を社外監査役にするという規定が出来てから、広い見識と経験を持った人たちを社外監査役として招聘した会社は多い。それは、取締役会の活性化や良い意味での緊張感につながっていると思う。

――かつては、取締役と監査役の間には、馴れ合いという雰囲気もあったが…。

築舘 馴れ合いは会社によってだとも思うが、これまでは全般的に監査役がおとなしかったのだと思う。しかし、現在の監査役は、積極的に取締役会等で発言を行っている。私自身は現在、東京電力で「社内監査役」という立場にいるのだが、「社外監査役」の方々には、会議などでより幅広く意味のある発言をしてもらうために、私が知り得る社内の情報はすべて提供することを心がけている。そのようなスタイルを形成している会社は多いと思う。

――協会の今後の取り組みは…。

築舘 関前会長の時代に有識者懇談会を開き、各界の有識者の方々に監査役という立場からみた「これからのコーポレート・ガバナンスのあり方」について幅広く議論していただいた。その答申を受けて、1年間にわたり協会としての対応について議論し、最終報告書を昨年4月にまとめたが、今はそれをもとに、まずは現行法制度の枠内で出来ることを最大限に実践することに務め、さらに、法改正を要するものに関しては関係団体へ働きかけるような取り組みを進めている。また、その他の色々な観点から考えて、この協会を今年中に公益社団法人として認定を受けるための手続きも進めている。

――監査役としての、あるべき姿とは…。

築舘 例えば、平成18年に施行された現在の会社法の下では、取締役会で内部統制に関する基本的な方針を決定し、それを事業報告で株主に開示しなければならない。しかし、株主が知りたいのは今や内部統制に関する基本方針ではなく、その方針を経営者がどのように実践しているのか、それを監査役がどう評価しているのかということだ。そうであれば、そういった運用状況を事業報告の中で開示したほうが良いのではないか。また、そうした経営者の実際の行動を監査して、監査報告書に開示するということを法律的に定めてもよいのではないか。このようなことを法制審議会会社法制部会において提案している。

――監査役の仕事もどんどん難しくなっている…。

築舘 もう一つ、会計監査人の選任議案とその報酬を経営者が決定していることは、今の会社法における大きな問題点だ。これは長い間議論され続けていることだが、独立した立場にいるはずの会計士を選び、報酬を決めるのが監査される側の経営者という今の制度では、インセンティブのねじれが生じる。どのような会計監査人を経営者が選ぶのか、会計監査人にどの程度の報酬を提示するのかといったことに対して、監査役には拒否権を伴う強力な権限とも言える同意権が与えられている。しかしながら、適正な判断基準となる情報入手等に不安が残るといった理由などから、実際にそれらを監査役が行使するのは難しいとされる。もちろん、きちんとそれを行使している監査役もいるが、一方で実質的な同意権を行使できない監査役がいるのも事実だ。我々はそういった問題に対し、法改正を要求するとともに、現行法制度の中でも出来ることを考えている。例えば、一年間のうちに、監査役が経営者や会計士と話し合いをする時期を事前に計画に組み込み、監査役会として同意権を有効に行使できるよう早めに必要な情報を収集するといったベストプラクティスを作成している。

――法改正に向けての具体案は…。

築舘 法改正に対する要求として一つ目は、先述したように、内部統制の基本方針だけではなく、その運営状況についても開示するということだ。また、会計監査人の選定議案と報酬の決定は、経営者から独立した監査役が権限を持つべきだという法改正も要求している。さらにもう一つ、大規模な第三者割当についての問題もある。これは既存株主の希薄化という問題を孕み、一応上場ルールはあるのだが、こういった時に既存株主をどのように守るかが課題となっている。そこで、株主の負託を受けている監査役という立場から、利益相反的色彩が懸念される第三者割当及び持株割合の大幅な希釈化を伴う第三者割当についても、監査役監査報告に監査意見の記載について法律として定めるべきではないのかと提言している。コーポレート・ガバナンスに対しての関心はますます高まっており、昨年4月から始動した法制審議会会社法制部会では、企業統治の見直しと企業結合法制などの議論がなされている。我々監査役も、当事者の一人として様々な変化に対応していかなくてはならない。

――公益社団法人への移行については…。

築舘 現在、我々のような社団法人が、公益社団法人になるか、一般社団法人となるかという判断を迫られている。 我々も一年程度時間をかけて内部で議論を行ったが、我々が広く一般に発信している監査役監査基準など色々な指針や、或いは、その時々の状況判断となる研究成果などは、全国各地の監査役に頼りにされているものだ。それは、会員の利益としてだけでなく、広く日本企業全体のコーポレート・ガバナンスの有効性にも寄与するものと言える。一人一人の監査役がベストプラクティスを実践し、色々なところで行われている議論に参画しながら法改正問題などに取り組んでいく。そういう志で協会の事業運営を行い、それに見合う更なる幅広い活動を会員以外の人達にも発信していく公益性の高い組織であり続けたいと考えている。(了)