最悪のシナリオを回避せよ

最悪のシナリオを回避せよ

緊急記者座談会



聞き手 編集局長 島田一

――引き続き原発事故が収束していない…。

 余震も続いているし、東日本では神経をすり減らしてきている人たちが目立っている。その余震もM6.0とかM7.0とか何年に一度しか来なかった大きな地震が1日に何回もあった日があった。しかも、震源地は原発のある福島県の浜通り付近が多いため、原子炉が壊れて大量の放射能が飛散しないか心配だ。遅ればせながら、NHKでもそういった報道を始めている。
B NHKまで言い始めたら怖いな。本当に起こるかもしれない。原子炉の破損による放射能漏れは、当初からネットや御用学者以外の専門家から指摘されていたが、原子力安全・保安院がその可能性を認めたのは津波から2週間後だ。また、燃料棒溶融による原子炉の破壊の可能性についても、当初からネットなどでは指摘されていたが、燃料棒の破損の可能性という報道がされたのも最近の事だ。
C ネットなどの情報が悪い事態を指摘して、それが外れていれば良いが、現実はその逆でネットの悪い情報が的中している。そうなると、最悪の事態も的中するのではないかという怖さがある。

――最悪の事態とは?

C 余震や燃料棒の溶融などによって、原子炉が破壊され大量の放射能が放出されることで、冷却を始めとする作業の停止を余儀なくされ、結果として4基ないし6基の原子炉ともに大量の放射能を放出してしまうというものだ。そうなると、チェルノブイリ原発の10倍ともいわれる放射能が放出され、東京を含めた東日本が壊滅的な被害を受けるというシナリオだ。
 恐ろしいシナリオだが、これだけ大きな余震があり、しかも福島の浜通りを直撃しているだけに、その可能性は否定できない。前週、保安院が福島原発事故のレベルを最悪の7に引き上げ、避難地域も拡大したが、これはその予防線ではないかと勘ぐりたくなる。
B 避難地域の拡大は遅すぎた。既に体内被曝している子どももいるかもしれないと心配している。というのも、これもごく最近の発表だが、レベル7に引き上げた背景説明として、3月15〜16日に放射性物質が大量に放出されたことを、保安院が明らかにした。これに対し、菅首相が福島など4県のほうれん草などの出荷停止を指示したのは3月21日で、つまりその間は、大量の放射能が付着したほうれん草などを食べていた可能性があり、仮にそうなると、とりわけ子どもは将来、甲状腺がんにかかる危険性が出てくる。
C チェルノブイリ事故が大きな要因で崩壊したといわれている旧ソ連は、事故から3日後まで発表せず、その間に食べた食料が体内被曝の原因といわれている。福島でもその可能性は無いのか。あるいは東京でも3月16日以降、21日まで採取・出荷されたほうれん草などを、水で洗わずに子どもに食べさせたケースは無かったのか。子どもの健康診断をして、きちんと調べる責任が国にはあるだろう。

――前回のこの記者座談会(3月28日付)でも指摘されたが、他の国に比べきちんと情報は開示していると思うが、事故に対する対応が遅く、また情報開示自体も後手後手の印象が強い。その遅れが子どもの被爆ということにつながらなければ良いが…。

B しかし、それは「神のみぞ知る」だ。悲観的すぎると恐れられるかもしれないが、放射能は見えず、匂わず、味もせず、測定器以外ではその存在は分からないうえに、空気や水に混ぜてどこに運ばれるかも分からないという、大変にやっかいな存在だ。このため、測定器を大量に配布し、かつ、海を含めてたくさんの地点で四六時中のデータを公表すべきだが、いまだにその体制ができていない。例えば、栃木産のかき菜が4月14日に出荷停止を解除されたが、県内の佐野市の2カ所の検査で基準を下回ったことが解除の理由だという。

――20カ所の間違いではないのか…。

C 栃木県によれば、かき菜を生産しているのは佐野市のみとしているが、それでは風評被害といって消費者を批判できない。むしろ風評が出て当然で、消費者は自分の身を守るために買う気にはなれない。もっとたくさんの検査箇所を設け、徹底した放射能検査をすることで信頼を回復させるべきだ。

――ところで、復興対策でやはり復興国債や復興税の案が浮上してきているようだが…。

 復興国債など発行しなくても、今の国債市場であれば10兆円程度の増発は十分に可能なことは、財務省、市場関係者ともよく分かっている。理由は、国債は既に10兆円以上の規模が次の年度から前倒して発行しているためだ。また、日銀の直接引受などのバカなことをすれば別だが、今のところ十分に市場の信任を得ているため、1%台前半の極めて低い金利で発行されている。

――日銀直接引受はダメか…。

A 海外にきちんと説明できれば話は別だが、一般的な市場のイメージは市場で消化できなくなったから引き受けるという、悪い受け止め方をされがちなため金利の上昇要因になりやすい。ただでさえGDP比2倍の国債残高は巨額だというイメージがあるため、暴落の契機になることが心配だ。
B その通りだ。どうも民主党の国会議員の中には、日銀の直接引受を行うことで金融緩和にもなると考えている人がいるようだが、それは国債買い切りとは別物であることを理解する必要がある。というのも、直接引受は財政政策、国債買い切りは金融政策であって、買い切りは政府の命令ではなく、あくまでも日銀の判断によって行うことで、通貨政策に対する市場の信頼を担保しているということだ。
C まあしかし、日銀がこれまで思い切った金融緩和をやらなかった事が国会議員の意見を過激にさせているという面はある。早いところ日銀自らがインフレターゲットの導入を打ち出して、CPIのプラス1%が維持できなければ、日銀総裁の首を差し出すという事をやるべきだ。
 そういう点では、やはり財務省はしたたかだ。五百旗頭復興会議議長に言わせる形で震災復興税を提示している。「国民みんなで痛みを分かち合う」と、耳障りの良いフレーズで無理なく増税を勝ち取ろうという作戦だ。コスト削減という公務員の痛みは引き続き横に置いて…。
C まあ、たいしたコスト削減をせずに、震災復興税が導入できれば、財務省は「焼け太り」だ。民主党 vs 国家公務員の主導権争いは、やはり国家公務員の完勝といえるだろう。ただ、そうなると増税の中身にもよるが、金持ちや企業の海外脱出がさらに加速し、日本には担税力の低い中・低所得者層と公務員、そして1,000兆円の公的債務だけが残るという最悪のシナリオに一歩近付く。
B アジア各国は今、地震と津波に加え放射能汚染のある日本から、企業や金持ち、有能な人たちが脱出してきてくれることを手ぐすね引いて待っている。とりわけ中国は大歓迎だ。そして、日本はもう終わった国という印象をアジア各国ともに強めている。この期に及んで、まだ政治家、役人ともに自らの身を切らず、増税路線でパブリックセクターのみひたすら肥大化させる国は確かに終わったと私も思う。

――津波と同じだ。頭が良くて津波の事を勉強している人ほど、ここまでの大津波は来ないとたかをくくってしまい逃げ遅れる。何も知らなくても、間近に大津波の波しぶきを見た人は直感的に逃げて助かる。財務省などがもっとアジアを肌感覚で知り、日本全体を効率化させなければ、国際化の大波に日本国は沈んでいくだろう。(了)