エネルギー戦略の再構築が急務

エネルギー戦略の再構築が急務

参議院議員
大野 元裕 氏



聞き手 編集局長 島田一

――今回の大地震・大津波の影響で日本が大きく揺れている…。

大野 原子力発電の問題では、数値そのものではなく、数値をいかに扱うかという問題が提起された。例えば、退避圏の範囲にしても、米国は福島の原発問題発生にあたり、突然、これまで環境省が科学的根拠に基づく退避措置として定めていた10マイルという規制値を大きく上回る50マイル(約80キロ)を危険地域とした。米原子力規制委員会(NCR)は、騒動の最中で日本の識者と詳しい話し合いが出来なかったため、念のために危険地域を大きめに設定したというが、これまで積み上げてきた議論の中で50マイルという数字は一度も出ていなかったはずだ。それなのに、今、改めて想定されるデータを検討すると、50マイルは適切であったというような話をしている。結局、数値ではなく、数値をどのように解釈し、それを信頼感をもって提示できるかが課題だ。

――石油価格のボラティリティも激しい…。

大野 少し前まで、「もし、石油価格が1バレル100ドルを超えたら…」という話で持ちきりだったものが、結局その数値もあっという間に超えてしまい、また全く違うレベルでの議論がなされている。石油備蓄の放出をIEA(国際エネルギー機関)の放出勧告なしに行うのも歴史上初めてのことで、資源エネルギー庁の非公式な発表によると、石油備蓄日数は数カ月前の165日から145日にまで減少している。震災に際してのこの判断は正しいと思うが、これまで経済学者などが行ってきた細かい議論は、政治的決断の下に見えなくなっているとも言える。

――世界中が危機モードに入るなかで、中東ではネットによる革命が行われている…。

大野 湾岸協力会議(GCC)諸国を除く中東全体では、インターネットの普及率は政権交代が起きたチュニジアとエジプトが高い。これらの国では、ネットが革命の一定の役割を果たしたことは事実だと思う。ただ、現在、その後に波及したリビアやシリアでは、ネットの普及率が低い。しかし、ショートメールが多く使われていることは特徴として挙げられる。イデオロギーを背景としたこれまでの革命と異なり、発せられる言葉が端的で短ければ、それを国民が共有して一つになった時には非常に強い力を発揮する。一方で、同じ政府に対する国民の不満でも、メッセージが統一されなければ、変革を起こす力にならない。例えば、イラクでは非常に早い時期からデモがおこっていたが、その標的が、北部ではマーリキー首相の独裁政治に対する異論、中部では役人の腐敗に対する怒り、南部では頻繁に起こる停電に対する不満と異なっていたため、力が分散されてしまい、結果、今の脆弱な体制でも国は倒れない。つまり、ショートメッセージは、その国がもつ与件によって、影響の大きさは相当違っていた。

――ネットで集まった力で現政権を倒したとしても、新しい哲学や政治信条が無ければ、その後、再び混乱することになる…。

大野 確かに、早い段階で革命が起きたチュニジアやエジプトでは、ショートメッセージがストーリーに編纂する時間が長く、混乱が継続している。基本的に私は、革命というのは利益配分の転換だと思っているが、カタールなどでは、90年代半ばに新世代への利益配分の転換が起こっており、そこでの革命は想像しにくい。相変わらず政府が石油という単品商品を牛耳っている。旧態依然とした石油権益の独占を継続する産油国では、当地基盤の不安定化を避けるために、これまで為政者が独占してきた石油による富を、なるべく多くの国民に還元しようと試みている。そうすることで国民の不満を抑え、混乱を広げないようにしているという状態だ。

――今後の中東情勢が日本経済に与える影響は…。

大野 例えばイエメン、リビア、バーレーンの混乱は暫く続くだろう。そうなると、原油価格はなかなか下がらないのだが、幸い、日本が石油を頼っている国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、イラン、クエートといった国なので、石油の供給が途絶するという状況ではない。仮に現在のリビアの混乱がサウジアラビアに飛び火した場合でも、世界がこれを放置しておくことは無いだろう。サウジアラビアで何かが起こると、全世界が石油に関してお手上げ状態になってしまい、経済に大きな影響を及ぼすことになる。特に米国では、サウジアラビア油田の利権を「アメリカの死活的利益」の一つとして見ており、バーレーンに第5艦隊司令部を、カタールに中央軍の前線司令部を、そしてトルコには空軍を配置し、サウジアラビアを監視している。何かが起こった場合でも、米軍がすぐに介入できる体制を整えているということだ。裏を返せば、米国はリビアに死活的利益がないため、リビア情勢に対して本格的に腰を入れて取り組もうとしないとも言えよう。

――石油や原子力に代わるエネルギーを、世界中で探していかなくてはならない…。

大野 政情不安と金余りとエネルギー需要の偏向した高まりで、原油価格は暫く下がらないのではないかと見ている。一方で、今回の東日本大震災によって、日本の原子力発電が大変な事態に陥ったため、世界的に、化石燃料の価格が上昇している。しかし、米国でシェールガスが実用化されたことにより、天然ガスの価格は下落傾向を継続させている。原子力に対する信頼が揺らぎ、再生可能エネルギーも直ちに実用化するには問題がある中で、目先の代替エネルギーとして注目されるのは天然ガスということになろう。ただ、天然ガスを液化天然ガス(LNG)として利用するには初期投資に大きな資金を必要とするため、これまでLNG開発に力を入れてきたロシアなどは、天然ガスを安く出してもらっては困るという思いもある。資源国では資源ナショナリズムの高まりが見られることもあり、日本も、迅速に、しっかりとしたエネルギー戦略を打ち立てる必要があると感じている。(了)