あまりに遅い政府の原発対応

あまりに遅い政府の原発対応

衆議院総務委員長 民主党
原口 一博 氏



聞き手 編集局長 島田一

――福島原発事故の情報の開示が遅すぎる…

原口 政府が国民のパニックを恐れて開示を遅らせたということでは済まされない。放射性物質の中には、希ガス、ヨウ素、セシウム以外にも、ストロンチウム、プルトニウム、その他にも、特に3号機はプルサーマルのモックス燃料を使っているために何が出てくるかも分かっておらず、検知していない可能性もある。しかし最近では、こうした更なる危機の話に対して、もう聞きたくないと耳を塞ぐ傾向が見られ、私はそこに二重の危機を感じている。

――しかし、情報を開示しないことには、国民が自分たちで防御することも出来ない…。

原口 特に内部被曝に関しては、私はECRR(放射線リスク欧州委員会)の基準が正しいと思っている。ICRP(国際放射線防護委員会)では、長崎や広島の被爆データを基に作っており、間接被曝は軽くみられてきたが、それでも徐々に真実が明らかになるにつれてその基準は厳しくなってきている。それなのに、日本の政府は、まだ年間の被曝限度量を20mSv(マイクロシーベルト)とし、福島の多くの地域に人を住まわせている。これには大本営発表と似た空恐ろしさを感じざるを得ない。チェルノブイリでは5mSvが強制避難地域となっており、3mSvの地域には今なお18歳未満は入れない状況にある。こういったことを日本でもしっかりと伝えるべきであり、それに沿った危機管理をして、被害を最小限に抑えることが大事だと思っている。

――東電の情報の信憑性にも問題がある…。

原口 情報を現地からまっすぐに届ける仕組みを整えることも急務だ。今、原発関係で働いている下請けの会社は30社近くあるが、そういったところからメーカーを通して東電まで届く情報は、もともとの情報の10分の1以下になっていると言っても良いだろう。東電が発表しているデータは嘘ではないのだが、情報が吸い上げられる段階で希釈し、結果、福島第一原発の現場で事故対応している人たちが見ている放射能マップと、東電がホームページで出しているものとは大きく違っている。また、3号機の横で900mSvという、大量の放射能が出ていたというようなことも東電のHPには載っていない。

――事態の収束は一体いつになるのか…。

原口 重要なのは、国家予算ですべての資源を投入してこの原発の事故を収束させるということだ。すでに各省ではあらゆる手段を用意して、ゴーサインを待っている。それなのに、菅総理は全く分かっていない。例えば、私の古くからの知人である上原春男元佐賀大学学長は、事故当初の3月12日から、ずっと「外付けの腹水機で水のサーキュレーションを作らなければ、瞬く間に莫大な水処理が必要になり、海洋汚染や地下水汚染を引き起こす」と言っていた。私は、すぐにこの重要性を菅総理に訴えたのだが、3カ月経った今でも決断できないでいる。3月20日に菅総理と話した時、その理由は「放射能が高くてどこの配管につければ良いのかわからない」というものだった。私は、「それは総理がお考えになることではなくて、ゴーサインを出して前に進めることがあなたの役割なのです」と言った。今考えると、メルトダウンを隠したのかとも思ってしまうが、私自身もこの3カ月間、ずっと「なぜ、こんなことが出来ないのか」と、自分を責めてきた。しかし、その答えはまだ見つからない。この経営体ともいえないような経営体の中の論理に絡みとられているのか、誰に聞いても分からない。その対応のあまりに遅いことは、非常に残念で仕方が無い。

――これ以上の人災を防ぐためには、やはり、原子力災害のすべての責任と権限を持つ総理を変えなくてはならないと…。

原口 確かに、リスク管理や経営そのものがマーケットに与える安心というものは大きい。リスクを図ることが出来ればそれを管理できる。しかし、今はリスクの計測すら出来ないような状況だ。日本は本来、300Kmで走る新幹線を一両も脱線させること無く止めることが出来るようなすばらしい技術を持つ国だ。そういった日本を「投資をすることで支えたい」という人たちは世界に山ほどいる。ところが、原発から復興する見通しが立たないために、なかなか近寄れないという非常に残念な状態になってしまっている。このため、今回、隔靴掻痒では本当に駄目だと思った。だから、先頭に立とうと思っている。

――総理になったらまず何をやるのか…。

原口 リーダーとなった時に一番重要になるのは、チーム作りだ。そして、大きな枠組みが必要になる。ビジョンと工程を示せば勝手に動き出す。総務大臣を務めた366日間につくづく感じたが、日本は本当に優秀な人材が揃っている。ただ、役人は、全体の枠組みが出来ず、「この分野を任せる」というようなことを言われなければ、絶対に動かない。つまり、政治家が責任を取ってくれない限り動かないということだ。リーダーは、まず現場の生の情報をダイレクトに持つこと。そして、積極的に枠組みを示して責任を取る。それは、どこの会社も同じであり、ことさら珍しい話ではない。私は、すでにビジョンとして掲げている「光の道(すべての世帯でブロードバンドサービスの利用)」、「ICT(情報通信技術)」、「地域主権」という成長戦略を、ある意味一つのジャンプ台として、今後の新しい日本を作っていく。

――「復興」するには政治家の胆力が必要だ。その胆力が無ければ、復興財源として20兆円を使っても「復旧」止まりとなり、税を生み出すことも出来ず、結局、残るのは国債残高だけになる可能性もある…。

原口 それは確かに的を射た質問だ。高邁な復興の理想像とともに、一歩一歩、集中的にやらなければ、復旧の先まで見えてこない。災害基本法では、「被災した地域の自治体が被災者を支援する」という枠組みになっているが、まずは、その枠組みを早く取り外す必要がある。義援金に関しても、これまでになく莫大な金額が集まっているが、無謬性の行政に任せていたら、いつまで経っても本当に必要なところに届かない。もっと柔軟性を持たなければ。先日の国会の参考人質問では、新潟県の泉田裕彦知事に参考人招致としてお越しいただいたが、中越地震が起こった時に泉田知事は、財政の心配などせずにやれることをやってくれと指示したとのことだった。まさに今、胆力が問われている。大きな枠組みがあって、現場ですぐに決済出来る仕組みさえきちんと整っていれば、その中で必ず復興が果たせるはずだ。(了)