政治混迷、つのる国民の政府不信

政治混迷、つのる国民の政府不信

〜緊急記者座談会〜



聞き手 編集局長 島田一

――あいかわらず政治の混乱により、経済や国民生活が打撃を受けている…。

 国民と企業は一流だが、政治は三流以下という海外の評価が真にぴったり当てはまる状況だ。国民の目から見ると、復興対策がかなり遅れており、かつ大臣の人事もままならない状況なのに、なぜ菅首相を辞めさせることができないのか不思議な感じだ。もちろん首相には法律上、解散権もあり、強力な権限が与えられているが、これだけ支持率が低下しているのに何もできない野党ばかりか、与党もだらしがないというような声が国民の間には強まっている。
 粘り腰と評価する声もある。それならそれで政策を早急に進めてもらいたいが、現実は遅々として進まない。理由を関係者に聞くと、政策の意思決定の過程が不透明で、だれが決めているのか分からない、役人を使いこなせていない、学者など現場感覚の無い人が検討している、役人が責任を取って前に進めていこうという姿勢が乏しい、などの応えが返ってくる。
 一言で言うと、政治に指導力が無いということだ。政治家に、とりわけ経済に関する知識が無いうえに、責任を取って実行するという胆力も無いし、役人を使いこなせる指導力も今の菅政権には無いという感じだ。民主党の政治家に多い学生運動や市民運動の出身者では勝手が分からないということだろう。もちろん、二世議員も今の局面では難しいと思うが(笑)。

――それでは大方の政治家は失格だ(笑)。

 このため、国民の間からは「革命」といった言葉が出始めている。世界的に見て「温厚」といわれる日本人には最も似つかわしくない言葉だが、タクシーの運転手や居酒屋の店主の口から出始めているということは注目に値する。それだけ景気が一向に良くならず、同様に今の政治家や、その政治家が口にする改革という言葉が、あまりにも期待できない状況が続いており、フラストレーションが国民の間に溜まってきているということだろう。民主党に改革を期待したけれど、その民主党がマニフェストをことごとく覆し、挙げ句の果てには「うつ病総理」の首も切れないということで、国民はもう「うんざり」を通り越して、破壊的な行動を望む芽が出てきていると言っても良いのではないか。
 能天気なマスコミにもうんざりしている。以前から、本紙や本紙記者座談会では福島の原発事故による放射能汚染の深刻さに警鐘を鳴らしてきたが、とうとう福島の子どもたちの尿からセシウムが検出された。しかし、その記事の紙面上の扱いは極めて小さく、かつ「ごく微量」を相変わらず強調している。本紙が金融・経済紙ではなく、かつまだ危険性を強調していなければ、これは1面トップに取り上げ、子どもの健康が恐ろしいほど脅かされていることを国民に知らしめただろう。

――その通りだ。

 チェルノブイリでは、「チェルノブイリ・エイズ」という病気があって、放射能によって免疫力が低下した子どもが、風邪程度の病気で簡単に死んでしまったという。また、その結果、子どもが大人になるまで成長できないことから、平均寿命が50歳ぐらいに短命化してしまっているとも言われている。東日本、とりわけ福島ではそうならなければ良いが…。何せ、民主党の国会議員筋の情報によれば、福島から放出された放射能の量は、30万人が亡くなった広島原爆の何と1000倍だという。
 10倍や100倍でもなく、本当に1000倍だとしたら、3月11日以降、福島の学校の校庭や公園で遊んでいた子どもたちが大量に被ばくしたおそれもある。それに、「風評被害」や「福島応援」といって、広く国民に食べさせた福島やその近郊の野菜を食べて、大勢の人たちが既に内部被ばくしているかもしれない。また、もしそうだとしたら、「直ちに健康に被害は無い」と言い続けた枝野官房長官などは、薬害エイズを拡大させた役人以上の犯罪者ではないか。
 ただ、放射能の被害は直ちに表れてこない。5年、10年かかり、しかも原因不明で死んでしまうというケースも多いという、やっかいな代物だ。このため、「直ちに健康に被害はない」という言葉は嘘ではない。また、今回の場合、NHKを始めとした多くのマスメディアが政府の広報を買って出て、「健康に害は無い」、「ごく微量」と強調したから罪は同じだ。このため、問題を極力顕在化させないように国民を誘導するのではないかというのが私の見方だ。
 マスコミにも良識人はいるが、それが勢力となるかは分からない。かつ、放射能の身体への影響は個人差があると言われ、加えて人類にとって広島、長崎、チェルノブイリなど極めて経験則が少ないことから、判断すること自体が難しい。普通の人の放射能許容量は年間1ミリシーベルトというのが一般的だが、100ミリシーベルトまで大丈夫という学者もいるようだ。それだけに、政府に責任を求めるのは難しいのではないか。
 本当に広島原爆の1000倍の放射能が放出されているとしたら、やはりそれをいまだに公表していない政府に大きな問題がある。また、その結果、多くの子どもたちの健康に重大な被害が出てきたら、これはただでは済まされないだろう。もっとも、その前に国民は政府を信頼しなくなっており、企業も海外逃避をする姿勢が改めて強まっている。本紙がかねてから警告していた通り、企業と金持ちは海外に移り、日本には低所得者と公務員と1000兆円の借金だけが残るということが本当のことになりつつあることに加え、放射能も残るという、まったく恐ろしい国になる可能性がある。
 資本主義のグローバル化により、金持ちや企業はより良い環境を提供してくれる国を求めて移動し、その国を富ませるという動きが活発化し、民族主義やナショナリズムを形骸化させる一方で、低所得者はエジプトに象徴されるように政府打倒という行動に出る。日本国民がそうした過激な行動に出るとは思えないが、その分、現状の「社会主義体制」から抜け出て、「小さな政府」を要望する意見が強まるのではないか。
 そうなれば良いが、日本人はいまだに何か問題があると「政府の責任」、「政府が悪い」といった認識で、自分たちで政治を何とかしていこうという意識に乏しい。ただ、最近の若者の半端ではない失業率を見るにつけ、そろそろそうした姿勢が変わってくるのではないかという予感もする。その導火線は、コメの放射能汚染問題が顕在化し、それにより食品価格が高騰した時ではないか。これに対し、農産品の関税自由化と大規模な金融緩和による円安・デフレ対策が打ち出せれば良いが…。

――大震災という絶好のチャンスをものにできていないだけに、それも難しいと思う。やはり、革命などの手荒な段階まで行ってしまうのかと思わせるほどの今の政治の混迷ぶりだ。