信金との連携をさらに強化へ

信金との連携をさらに強化へ

全国信用協同組合連合会 理事長
内藤 純一 氏



聞き手 編集局長 島田一

――全国信用協同組合連合会について…。

内藤 連合会の一番の役割は、信用組合より預った資金を安全・安心に運用することだ。ただ、最近では、地域経済が低迷し、信組業界も厳しい状況に立たされているため、困難に直面している信組に対しては、どういった経営方策をとるべきかといったサポートや支援も重要な業務となっている。金融庁でも地域密着型の金融機関のビジネスモデルを推進しており、中央金融機関が地域の金融機関を指導したりサポートしたりすることは、ますます重要な役割になってきている。これまで各信組が効率化を進めてきたことで、今や過剰な人件費を抱え込むということはなくなったが、半面、情報収集や分析、そして今後の戦略などを自前で考えることが難しくなってきた。つまり、そういったことに十分対応できないという問題が出てきた訳だ。信組という中小零細の企業金融の世界は、新たな事業展開を模索していくためのアドバイス機能やコンサルティング事業が非常に重要だ。それにも拘らず、彼ら自前のツールでは困難な面もある。そのため、信組のバックに我々がついてサポートしていくという枠組みを作っていくことが必要になってきている。

――信組の現状は…。

内藤 現在、全国に158の組合があり、その資金額の合計約17兆円を融資・運用している。信組業界は、特定業種の関係者を組合員とする業域信用組合や、同じ職場に勤務する人たちを組合員とする職域信用組合など、非常に多様性に富んでおり、それぞれが違った事情や課題を抱えている。中でも問題は、各信組の職員数が10〜20人と非常に少なく、人的な面で運用への対応が非常に難しいということだ。実際に、金融機関からリスクの高い商品の勧誘を受けた小さな自治体などが、結局投資に失敗してADRに駆け込んだというような例も沢山ある。連合会としては、個別の信組が金融商品に対して迷った時にはいつでも相談出来るように、企業金融という面だけでなく、信組自体が運用する際のアドバイスにも力を入れていかなくてはいけないと考えている。そのためにも、我々自身の能力アップが求められている。

――連合会自体の運用方針は…。

内藤 連合会で預って運用する資金は全体資産17兆円のうちの約4兆円だ。資金運用部には専門家に来てもらい、しっかりやってもらっている。経営困難に陥ったところを、様々な形で迅速かつきちんと対応するためには、連合会自体の体力を増強しておく必要がある。ただ、そのためにリターンを狙いすぎると、当然ながらリスクも高まるため、安全運用には心がけている。リーマン・ショックなどでマーケットに激変が生じた時には、この連合会も厳しい局面に立たされたと聞いているが、すぐにポジションを入れ替えるなど迅速な行動をとったことで最小限の影響に収まっている。今の日本市場には不安定要因がたくさんあり、この先もまだまだどうなるか分らない。米国経済は未だ不透明で、欧州では非常に不安定な状態が続いている。米欧の株が下がれば日本の株も一気に下落するだろう。このように、先が見えない時期には安全・安定運用が基本だ。連合会では経営上、子会社の株は保有しているが、運用という観点での株式は扱っていない。せいぜいETF程度だ。

――系統金融機関の中には、もはや国内に投資する先がなく、海外への投資を考えているところもあるようだが…。

内藤 連合会では原則的に、外国債券を扱うとしても円建てで投資することになっており、為替リスクをとらないように決められている。農林中央金庫程度の規模になれば国内の運用先がなかなか見つからず、為替リスクを上手くヘッジしながら海外へ投資していく必要性も出てくるのだろうが、この連合会の資金運用部隊は約30人と人数も限定されているため、広範囲に複雑な仕組みにするより、もっとわかりやすく、信組業界全体に対して説明しやすい方針で進めていく必要があると思っている。その方針とは、あまり無理をして利幅を狙うようなことはしないということだ。

――日本の金融機関の数の多さは昔から指摘されているが、信組と信金の合併や、信組同士の統合などについての考えは…。

内藤 地銀レベルであればもう少し考え方も違うと思うが、信金や信組といった業界で、例えば合併して経営効率化を図るとなると、店舗が減少して金融過疎となり、お客様の利便性が低下する可能性が出てくる。それでは何のための金融再編かわからない。経営は効率化していかなくてはならないが、他方では、顧客の利便性をしっかりと保っていく必要がある。単に再編すればよいということではない。問題は、今の資金の流れの中で、日本の預金量が大きすぎることであり、本来、マーケット部門に行くべき資金がなかなかそこに回らないということだ。

――日本の貯蓄額が多いままで金融再編に取り組んでも、うまく行かないと…。

内藤 貯蓄が多いのはデフレないし低インフレの中、日本人が安全志向だからという根本的な問題もある。それは別としても、金融再編などを通じて店舗の数を減らして経営を効率化すればすべてがうまく行くというような問題ではない。特に、信組は地元との密着が一番濃厚な機関だ。地域にいて、日々顔を合わせるという関係があってこそ、財務諸表の数字だけではわからないような、企業の情報や経営者の状況が分かってくる。そういったところをきちんと見ながら、融資活動をしっかりと行うのが信組だと思う。政府が推進している貯蓄から投資へという流れを作り上げるためには、税制を含めた制度的措置も考えていくべきだろうが、銀行、証券、保険会社すべてを含む金融機関の経営努力がやはり必要だ。例えば、今、預金が満期になった時に、定期預金よりも金利が少しは高く、かつかなり安全な商品を提供できている金融機関は実はそれほど多くないのではないか。個人向け国債は徐々に改善を重ねており、今後魅力的な商品になっていくと期待しているが、その他にも、流動性や価格透明性を備えた、安全かつ金利が多少良いものがあれば、資金の流れはもっと変わってくるだろう。

――理事長として、今後の抱負は…。

内藤 全信組連の理事長としてまず心がけるべきことは、信組業界が何をやっているのか、どういう役割を果たしているのかを各方面に発信して理解してもらうことだと思っている。信金と信組との違いを含め、まだまだ信組とはどのような金融機関なのか解からないという方は多い。また、信金と信組の違いは制度面では違うが、金融機能という観点ではほぼ同じような役割を果たしている。このため、信金と信組が密接に情報交換や意見交換をしながら、地域の中でお互いの機能をより発揮出来るように、両業界の連携をますます強めていきたいと思っており、具体的な方策を検討していくことも私の課題であると考えている。

――大学の客員教授としてもご活躍中だと…。

内藤 実践に即した金融の授業を、早稲田大学で毎土曜日に行っている。特にリーマン・ショック以後の金融の混乱や、10数年前の日本の金融危機の問題などを中心に、銀行部門の問題、市場部門の問題などについて講義している。学生は大手の各会社から派遣されている方々がほとんどで、一部にはアジアからの留学生などもいる。彼らも中央銀行や政府などから派遣されており、すでに実務経験を持っている。30代の人たちが中心だ。これから経営者や政策マンになるための素養として、金融の基本を身につけようと一生懸命勉強しにきている彼らに、私の知っていることはしっかりと伝えていきたい。内藤塾のようなものだ。そのための準備に日曜日も忙しく休む暇もないが、平日の理事長業務と二足のわらじで、充実した毎日を送らせていただいている。(了)