真の保守主義で強く豊かな日本復活

真の保守主義で強く豊かな日本復活

衆議院議員 自民党
塩崎 恭久 氏



聞き手 編集局長 島田一

――野田新内閣により民主党の支持率が急回復した…。

塩崎 国民が何か新しいものを求めているということが如実に現れている。二年前の選挙では自民党流のやり方が否定され、国民は民主党に期待を寄せた。しかし、マニフェストは今や崩壊寸前で全く上手くいっていない。それでも、まだ何か新しいことをやってくれるのではないかという気持ちが国民の中に残っている。裏を返せば、支持率を伸ばすためには、自民党をもう一度蘇らせ、国民に対して自民党が変わったということを示すしかないということだ。

――しかし、民主党政権では今の円高状況を変えることが出来ないと市場は見ている…。

塩崎 財務省は円高対策として「円高対応緊急ファシリティ」を創設したが、一年間の時限付きでは一時的な対応に過ぎない。しかも、政策融資の財源として外為特会から最大1000億ドルを国際協力銀行に対して貸し出すというような政策は、本来ならば外務省も絡めて国家の資源戦略として行い、そこにドルを利用すれば良い話だ。それを単なる為替対策として行っている。今の日本には、国家として、国益を定義し、国益を実現するための司令塔がない。今年7月に発表されたモンゴル南東部にある世界最大級の炭田開発の入札でも日本は外されてしまったが、日本と緊密な関係を築くこと自体がモンゴルの国益になるという間柄だったにも関らず、開発権を中国やロシアに奪われてしまったのは、日本に司令塔がなく、すべてにおいて対応が遅かったことに原因がある。

――もっと国が前面に出て外交戦略を行うべきだと…。

塩崎 現在の円高をもっと活用すれば良い。例えば06年に東芝がウェスティングハウスを買収した時の取得額は54億ドル、当時1ドル115円換算で約6210億円だった。これを現在の1ドル77円で換算すれば約4200億円となり2000億円も安くなる。こういったことを利用して国はもっと色々なことに取り組むべきだ。エネルギー源、資源、農地など海外権益の確保や、インフラが必要な海外市場の開拓など、日本の資金力を有効利用しつつ国益をアップさせることを真剣に考えなくてはならない。この点、自民党の成長戦略「日本フェニックス戦略」では、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を創設して、日本の国益を増進させることを目指している。

――官僚の組織も、相変わらず省あって国益なしでバラバラだ…。

塩崎 省益の壁が問題なのであれば、官邸に日本版NSC(国家安全保障会議)を創設すればよい。これは安倍内閣時代から提言しているものだ。また、今回民主党では、第二次森内閣時代に設置された経済財政諮問会議を念頭に、民間人の知恵を借りるような仕組みを作るとしているが、そんなものを新設するより、今も法律として残されている諮問会議を使えば良いことだ。民主党内に自民党政権に対するアレルギーがあるからというような理由ですべてを一から作り直そうとしていることもおかしな話だ。

――各省設置法を廃止して、内閣府や内閣官房などすべてを一体化した首相府を作るという案もある…。

塩崎 各省設置法を廃止する案はよく耳にするが、例えば、前首相のように思いついたことを次々と発言してしまうような首相であれば、役所は大変だろう。首相府は英国でも置いているが、英国が08年に行った内閣改造で、環境・食料・農村地域省が管轄する気候変動分野と、ビジネス・企業・規制改革省が管轄するエネルギー分野を統一してエネルギー・気候変動省を新設したことは非常に理にかなっていると思う。環境を考えずにエネルギー政策などありえないからだ。しかし、日本では経済産業省下にある資源エネルギー庁と環境省の間では圧倒的にエネ庁の方が力を持っており、例えばIRENA(国際再生可能エネルギー機関)が開催する国際会議などに出席するのもエネルギー庁の人間ばかりだ。これでは日本としての体を成していない。

――増税すれば、日本から企業が逃げてしまうということは財務省もようやくだが分かってきている。早く何らかの形で成長戦略を描かなければならないのだが、そのアイデアがない…。

塩崎 野田総理は「成長なくして財政再建なし。財政再建なくして成長なし」と発言しているが、私は、財政再建がなければ成長がないとは思わない。財政再建は成長が大前提であり必要条件だが、十分条件ではない。今、日本企業がぞくぞくと海外に進出している理由のひとつは税金だ。その他に、インフラコストメリットや、良い人材がいるということが挙げられる。また、将来中国と韓国の間でFTAが結ばれても、政治力の弱い日本と中国の間では当分FTAは結ばれないだろうと見込んで韓国に進出している企業も多い。財務省が財布を握ってその紐を緩めないようにするのは、それが役割だから当然だ。しかし、それだけでは日本という国が幸せにならない。どの部分にどれだけ使うかといったことは、官邸できちんとコントロールすべきことだ。

――自民党再生の秘訣は…。

塩崎 霞ヶ関や企業が嫌がるようなことを言う人、例えば、経済産業省の古賀茂明氏を自民党が積極的に雇ったり、原発事故の賠償スキームを法的処理にする等の政策変更を行ったりすれば、国民もその変化を感じ取ってくれるだろう。また、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題を如何に上手く進めていくかも今後の政治の重要なポイントになってくる。特に中核となる農業分野については、守るべきところをきちんと守りつつ発展させていかなくてはならない。そういうことを一番良く理解し、一番力を発揮出来るのは、自民党のはずだ。

――党派を超えた「保守の会」を設立されたそうだが、その趣意は…。

塩崎 東日本大震災以前から、政治混乱や経済低迷で国際社会における日本の地位は低下し続けてきた。こうした不安感と閉塞状況を打破すべく、私が会長となり「日本を根っこから変える保守の会」を設立した。「保守主義」は基本的に「小さな政府」だ。安易に増税せず、経済を活性化させる。そして、頑張る人が報われ、頑張れない人は頑張れるようにしてあげる。どうしても頑張れない人は、皆で温かく支えてあげようという理念だ。子供手当てにしても、高校無償化にしても、お金に余裕がある家庭の子供たちまで一律に無償にする必要はない。日本人は「小さな政府」を嫌がる傾向にあるが、私は、余計な負担を強いて国民の皆様にご迷惑をおかけしないように、真の保守主義に基づき、強く豊かな日本を復活させていきたいと考えている。(了)