楽天経済圏を27カ国に展開へ

楽天経済圏を27カ国に展開へ

楽天
副社長 兼 楽天銀行社長
國重 惇史 氏



聞き手 編集局長 島田一

――社内には大変活気がある…。

國重 楽天(4755)の平均年齢は31歳だ。服装も自由で、ノーネクタイにジーンズの若者が活躍している。また、社内では英語公用語化を進めており、それぞれの名前も役職名など付けずにニックネームで呼んでいる。そうすることでフラットな組織を作り出し、上下関係なくダイレクトなコミュニケーションが図れるようにしている。社内で英語を公用語化するメリットとして、楽天が海外展開するために必要不可欠であることは言うまでもないが、言語文法的に考えても、結論を先に述べ、イエスかノーがはっきりしている英語は、ビジネス上、非常に便利で効率的だ。社員も、今秋採用した約70名はほとんどがノンジャパニーズで、中には日本語を話せない人もいる。

――世界一のインターネットサービスを目指しているそうだが、具体的には…。

國重 時価総額で他社比較されることはよくあるが、それがすべてではない。世界中で認知され、利用され、愛される会社になっていきたいということだ。現在の主力は楽天市場で、流通総額は年間一兆円を超えている。その他にも楽天トラベルでは数千億円単位が取引され、さらに楽天証券でも相当額の金額が動くマーケットを作り出している。将来的にホールディングカンパニーという形態をとるかどうかは分からないが、基本的には、楽天トラベルや楽天証券といった各々の会社のバリューはすべて楽天株式会社の株に集約して、一社だけが上場すればよいという考えだ。日本でよく見られる親子上場は、理念的に矛盾があると思う。

――M&Aも非常に積極的だ…。

國重 現在の買収相手は、ほとんどが海外だ。昨年夏には米国ECサイト運営会社のBuy.com社と仏プライスミニスター社を、また、直近では独トラドリア社、英プレイ・ホールディングス、ブラジルIkeda社を買収し、世界展開に拍車をかけている。そして現在、仏、独、英、米、伯、中国、台湾、インドネシア、タイ、そして日本の10カ国に拠点がある。M&Aの基本的な考えとして、欧米に関しては、もともと存在している企業を買収して、そのまま生かすという方向だ。理由は、すでにアマゾンやイーベイなど大手が存在しているところと対抗していくためには、新たに会社を立ち上げて育てていく時間がないため、時間を買う考え方だ。一方、新興国はどちらかというとパートナーを見つけて合弁会社を作り、一から始めるというやり方が多い。日本では高齢化が進み、若者が少なくなり、お金も使わなくなる。しかし海外には70億人近いマーケットがある。そう考えると、今後、我々が日本市場を拡大させていくというイメージは浮かばない。将来的には海外の売上げを7割にしたいと考えている。

――財務上の課題や、格付についての考えなどは…。

國重 格付は現在BBB(R&I)だが、我々は格付を取るために仕事をしているわけではない。マーケットで資金調達が必要な会社とは違う。営業キャッシュフローが潤沢であることに加えて、銀行からも好意的に御協力頂いている。リーマンショック以降、格付の信憑性や在り方自体に疑問の声が上がっているようだが、確かに「AAA格」だったものが問題が表面化した段階で一気に「D格」になった事実を見ると、個人的には格付自体が完全にフィクションであるように思えてくる。

――ライバルはアマゾンやイーベイ…。

國重 イーベイはオークション形式で日本にはなじまなかったためか、すでに日本から撤退しているが、 他の各国では順調のようだ。アマゾンは自社の電子書籍専用端末「キンドル」の新型で日本語表示対応にするなど、日本市場の参入拡大を図っている。電子書籍市場に関しては、我々も紀伊国屋書店、ソニー、パナソニックと共同で取り組んでおり、電子書籍ストア「Raboo」のサービスを提供している。その他にも、インターネット上であらゆるニーズに応える循環型経済圏「楽天エコシステム」の確立を目指し、新規サービスの拡充と各サービス間のシナジー効果に力を注いでいる。

――将来的には、御社のようなEC事業者と宅配業者と製造業者があれば良いという時代になってくるのではないか…。

國重 楽天を創業して2〜3年後のことだが、「信州伊那谷の卵やさん」の卵を楽天市場で販売してもらった。えさや安全に大変こだわりを持つその卵は、卸や小売を通すとどうしても値段が高くなり、そのため利益も上がらない状態だったが、ネット販売を利用したことで以前よりも安く提供出来、北は北海道から南は鹿児島まで注文が相次ぎ、一気に元気になった。その勢いで「たまごかけご飯専用の醤油」まで製造・販売するようになったほどだ。また、震災直後は水や米の注文が多かった。農作物に関して言えば、新鮮なものが提供できることがこの市場の何よりの利点だ。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)もこのような形で産直にすれば競争力でも海外に負けることはない。

――今後の課題は…。

國重 近い将来、海外27カ国に進出することを目標にしている。すでに進出している9カ国を拡大させるとともに、残り18カ国への新規進出だ。そのために、現在、社長の三木谷は一年の半分程度を海外で飛び回っている。もちろん、楽天市場だけが海外進出するのではなく、楽天トラベル、楽天カード、楽天銀行など、グループ事業すべてが海外に進出していかなくてはならない。そのための社内英語化だ。本社を六本木から品川に移転させたことで羽田空港や新幹線(品川駅)に近くなり、移動面での利便性も大変優れている。また、ビル内には「楽天大学」を設置し、全国から集まったマーチャント(店舗)にwebページの作り方やマーケティングの方法、最近ではFace Bookの作り方なども教えている。もともと、楽天は楽天市場上での販売サポートを懇切丁寧に行うことが一番の売りだった。だからこそ、この会社はここまで大きくなったのだと思う。お蔭様で日本では圧倒的な地位を築き上げることが出来た。今後は世界が舞台だ。これまでの日本企業は欧米企業と比べて海外進出に踏み切るのが非常に遅く、或いは海外には進出しないという会社も多かったが、もはや時代は違う。

――最後に、楽天銀行の抱負を…。

國重 楽天銀行は口座数384万とインターネット専業銀行のシェアの40%を超えており、断然のNO.1銀行だ。これに楽天市場の6千万人のユーザーが加われば、他の追随を許さないであろう。Eコマースやトラベル、ブック、クレジットカード、証券など消費者が生活していくのに必要なものは全て楽天経済圏に揃っている。楽天銀行は、その楽天経済圏を流れるマネーをフォローする大事な存在だ。この楽天経済圏(エコシステム)におけるシナジー効果を最大限発揮し、消費者の利便を最大にするとともに、今後は、日本で成功しているモデルを海外にも展開できるよう努力していきたい。(了)