COP17の次の枠組合意を評価

COP17の次の枠組合意を評価

参議院議員
自民党 政調副会長
中川 雅治 氏



聞き手 編集局長 島田一

――COP17が閉幕したが、その評価は…。

中川 これだけ多くの利害対立国が参加した国際会議で、よくまとまったと思う。12年末で期限を迎える京都議定書の温室効果ガス削減義務期間は延長されたが、日本は議定書の延長期間に参加せず、13年以降は新たな削減義務を負わない。さらに米中を含めたすべての主要な排出国が参加する新しい枠組みの構築については、15年までに新枠組みを採択し、20年の発効を目指すことが決まった。事前の雰囲気では、決裂して成果なく終わってしまう可能性もあると言われていたが、交渉の世界において、先送りでも次の枠組みにむけた合意がなされるほうが、決裂するよりもはるかに良い。

――中身は無くとも、一定の方向性が出せたことに意義があると…。

中川 確かに中身はまったく決まっておらず、新枠組みが発効する20年には今回の国際会議に出席していた人たちは皆いなくなっているかもしれない。そういう中で今後どのような合意がなされるのか甚だ疑問だという声もあると思う。しかし、COP17に参加していた人たちは、何とかして温暖化を食い止めなければ地球が滅んでしまうという危機感や使命感を持って会議に臨んでいた。そして、それを解決するための道筋が出来たことは評価すべきだ。

――これまで、日本は削減目標を達成するために何千億円というお金を使った…。

中川 日本は90年(基準年)比で08年はマイナス8.8%、09年はマイナス13.6%、10年はマイナス10.3%と京都議定書のマイナス6%削減義務を達成し、さらに貯金がある状態だが、この貯金の大部分は、京都メカニズムで定めたシステムを使って、政府や民間がお金を払って買ったものだ。つまり、高い削減義務を達成させるためにお金を払ってきた。そして、11年は原発事故があったため今後のCO2排出量は増え、その貯金もかなり使うと思う。そういうこともあり、今回のCOP17で日本が削減義務を負わないと決まったことは良かった。もともと日本は環境技術も進んでおりCO2排出量も少ない。そこにさらに厳しい目標を達成させることは国益に反するという考えが京都議定書発足当時からあった。経済界からも「平成の不平等条約だ」などと言われていたが、元来、日本は政府も民間も真面目であるため、一生懸命CO2削減策を進め、さらにお金を払ってでも目標を達成しようと頑張ってきた。しかし産業界では今、国際競争力が低下してきており、仮に京都議定書が延長されて日本に削減義務が再度課せられるとなると、高い法人税や円高に加えて原発事故による電力不足など問題が山積している中で、日本の国際競争力はさらに失われていく可能性がある。そこで、政府が一貫して、日本が法的削減義務を負うような形での延長は絶対反対として臨んだ結果がきちんと出た。さらに新しい法的枠組みを作るという良い流れが出来たことを私は評価したい。

――排出権取引のグローバル化についての考えは…。

中川 排出権取引についてはグローバルに拡大する必要性はないと思っている。排出権取引がグローバルに広がってくると、先物やデリバティブのような商品が出来てしまい、本来の「CO2の削減」という目的から離れた、金融取引ゲームのようなものになってしまう恐れがあるからだ。もともと排出権というものに実態は無い。そんなものを取り引きしていくのはどうかと思う。キャップアンドトレード方式を前提に、個々の企業に排出権を平等に割り振ることさえ難しい。さらに、自分の企業がどれだけ排出したのかを他者が見ても正確に把握出来るようにしなくてはならない。こういった取引が、ただでさえ複雑な金融の市場に参加することは、決して望ましいことではない。一方で、EUは排出権取引市場を維持したいために、京都議定書の延長を望んだという見方もある。

――金融市場自体、複雑なマーケットからシンプルなものに移行しようとしている…。

中川 いわゆるカジノマーケットのようなものは必要ないという認識がリーマンショック以降、世界的に拡大している。だからこそ今回のCOP17の結果は落としどころとして良かったと思っている。この問題に一番真面目に取り組んできたのは間違いなく日本だ。それを誇りに思って、今後の国際会議でも主張すべきところは堂々と主張すべきだろう。原発事故があったことでリーダーシップを発揮しづらい状況になってしまったが、それは仕方が無い。京都議定書が延長となって法的削減義務を負わなくとも、経済界が自主削減目標を立てて、温暖化対策についてしっかりと取り組んでいく。同時にクリーンエネルギーの推進に向けて努力していく。そうすることで世界のリーダーとしての日本の地位を保っていかなくてはならない。

――クリーンエネルギーはまだ日本ではほんの数%だ…。

中川 いわゆる再生可能エネルギーは水力を除けば2%程度だと言われている。太陽光発電や地熱発電には適地が必要で土地の狭い日本では一挙に拡大することはなかなか難しい。火力や液化天然ガスに頼らざるを得ないとしても、これらはCO2を出す。すべて一長一短だ。しかし、とにかく再生可能エネルギーを増やすことは必然だ。これまでは電力会社なども原子力発電に頼っていたため、国産資源であるメタンハイドレードなどを使った新エネルギーへの取り組みが遅れていたが、原発事故が起こったことで頭も切り替わったはずだ。自民党内でも、今までは原子力推進派が多数いて、再生可能エネルギーに対しては掛け声だけで終わっていたという面もあるが、ここにきて、再生可能エネルギーに本気で取り組んでいかなくてはならないという気持ちが民主党以上に強くなっている。現在、山本一太参議院議員が委員長となって総合エネルギー政策特命委員会を開き勉強会を重ねている。今回の再生可能エネルギーの買い取り法案も、自民党の修正案によってかなり良いものになっているといえよう。

――社会保障と税の一体改革についても、民主党内での意見がまとまっていない…。

中川 民主党のマニフェストには16兆円余りの財政コストを削減して、マニフェスト実現のための歳出に充てる事が盛り込まれていたが、これは実現不可能なことが明らかになった。民主党は、何故、実現できないマニフェストを作ったのか、その過程や原因をしっかりと検証して、公表し、謝罪すべきだ。そして改めて誠心誠意、野田総理のリーダーシップの下で社会保障と税の一体改革の案を党内でまとめて協議を求めるべきだろう。自民党内には、「インチキマニフェストで作りあげた政権など信用できない。まずは解散だ」と言って協議に応じる必要は無いとの声が強いが、それでは日本の政治は前進しない。その結果、外国から「日本の政治は何も決められない、進まない」と思われて日本国債が売り浴びせられる流れになることも危惧しなくてはならない。利害が錯綜してなかなか政治が前に進まないという現状を早く打破し、国のことをもっともっと真剣に考え、知恵を出し合い、しっかりとした方向性を出していく必要があると感じている。(了)