グループCEO制で徹底的に1つの銀行に

グループCEO制で徹底的に1つの銀行に

みずほフィナンシャルグループ
取締役社長 グループCEO
佐藤 康博



聞き手 編集局長 島田一

――グループ再編の進捗状況は…。

佐藤 順調に進んでいる。2013年上期中にみずほ銀行とみずほコーポレート銀行を法的に統合してワンバンク化するが、その前に2012年4月から実質的なワンバンクの組織とする。新しい組織は、お客様のセグメントに併せて、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行を跨ぐ横断的な営業推進体制を構築する。新組織は1月中に役員人事と合わせて発表し、新しい役員が来年度の事業計画を作成する。さらに2015年度末を目標に、みずほ信託銀行を含めた3行統合の次期システムを作り上げる。時期に関しては、二度とシステムトラブルを起こさぬよう最善の注意を払い、十分に時間をかけ何回もテストを重ねて慎重に作りあげていくつもりだ。

――2015年までに約3000人を削減する…。

佐藤 まず、役員数を2年間で約2割減らしていく。3行のバランスも崩れる。これも徹底的にひとつの銀行にするためだ。3000人の人員削減は、現在の採用ペースをキープしていれば退職など自然減少で無理なく達成可能だ。それよりも粗利経費率を50%以下にすることが重要だ。3000人の人員削減で約220億円、みずほ証券とみずほインベスターズ証券の統合による店舗やシステムの合理化で約80億円、みずほ銀行とみずほコーポレート銀行の統合効果で約100億円。こういったことを合わせて2015年時点で400億円のコスト削減を行い、一方で600億円の粗利益を上げ、全体で1000億円の統合効果を出していく。この期間も金額もミニマムの数字だが、これらを確実に実現させて、マーケットに対して新しいみずほグループの存在を示していきたい。

――昨年のシステム障害は日本経済に大きな混乱をもたらした…。

佐藤 当行のお客様はもちろん、多くの方々に多大なご迷惑をおかけしたことは真に痛恨の極みだ。システム上の問題はもちろんだが、それよりも大きな問題はガバナンスだ。ツーバンクが悪いとは思わないが、ガバナンスが一本化されていないと緊急時の意思決定が遅くなる。ガバナンスの一本化の必要性はシステム障害以前から検討していたが、結局、あの事故を二度と起こしてはいけないという強い反省がグループCEOを作るきっかけとなった。実際にグループCEOを作ったことで意思決定は格段に早くなり、良い結果をもたらしている。

――海外展開については…。

佐藤 日系企業の海外進出支援では、現在、海外日系企業に対する貸出残高は右肩上がりとなっており、今後も拡大が見込まれる。また、開発途上国を中心としたスマートシティの建設や、インドの道路や鉄道の整備、ベトナムにおける電力会社など海外インフラビジネスは、欧米の金融機関が引き上げているという現状にあって、日本の銀行の役割が重要視されているため、今後も伸びていくだろう。その国の発展に貢献するという意味でも重要だ。そして、海外展開において他行とは違うと思われる当行の戦略は、非日系企業の取引先との関係構築だ。大きなアセットを使って大型のシンジケートローンやLBO案件に参加し、アップフロントで多額の手数料を得るという戦略もあるが、これに対してみずほは非日系企業に対して日系企業と同じ様にトップ同士のリレーションシップを作り上げることを戦略としてきた。非日系企業に対しても、将来の企画や戦略に深く踏み込んだ関係を築いてきたことが実を結び、今、花開いてきている。例えば、英BPとは長く緊密な付き合いを続けてきたことにより、今では彼らがアジアで資産売却など行う際には先ずはみずほに相談していただける。また、社債発行の際に声をかけてもらうこともある。逆に、トップ同士が大変懇意にしているシンガポールのハイフラックスには、中国やインドでスマートシティを建設する時の水処理事業の担当としてこちらから声をかけたりもする。今後、日本企業がアジアで展開して行く際に、非日系企業との関係は非常に大切になってくる。こういった非日系企業との関係を使って日系企業との関係を深めることも出来る。このようなビジネスを今後もさらに展開させて、他のメガバンクとの差別化を図っていきたい。

――みずほCBが出資したベトナム大手行のベトコンバンクから、ベトナムに社債市場や株式市場を作ってほしいというオファーがあった…。

佐藤 日本の産業が高度成長を遂げた背後には、社債市場や株式市場等のマーケットの発展・拡大があった。そのことを彼らはよく勉強していて、みずほに対して、そのような経験を活かしてベトナムのマーケットを一緒に作って欲しいと思っている。こういった要求はインドネシアやタイやマレーシアにもある。この部分に上手く踏み込めば、我々はアジアにおけるキャピタルマーケットのメインプレーヤーになることが出来るだろう。未だ誰も住んでいない森がアジアにはたくさんある。そこに乗り込んでいけるのは最大のメリットだ。

――野村証券や大和証券もアジアには大変力を入れている…。

佐藤 かつて日本がそうであったように、アジアも、先ず間接金融が発達し、それからキャピタルマーケットが育っていくことになるだろう。間接金融と直接金融のノウハウの両方を備えていなければ上手くいかない。幸いに、みずほは両方が出来る機能を持つ。だからこそ、アジアにおける証券部門を徹底的に強くしていくことがみずほにとっての大きな戦略だと考えている。

――M&Aについてのお考えは…。

佐藤 折角融資で非日系企業とリレーションを作って、相手からアジアのマーケットで証券に関する要望があっても、みずほ証券ではこれに応えられない面がある。もっと強くなければ。自分だけで強くなれるかわからないので、場合によっては、アジアのキャピタルマーケットにおける地場の独立系の証券会社、銀行系の証券会社の買収、提携など考えながら補強していくということも考える。国内でのM&Aは余り考えていない。

――農林中金さんとの関係は…。

佐藤 現在みずほ証券に出資していただいている農林中金さんに関しては、今秋にみずほ証券とみずほインベスターズ証券が統合してもその出資部分は残しておいていただきたいと考えている。そういう意味では農中とみずほの関係は非常に強いもので、農中さんが農林系の証券ビジネスをみずほ証券と一緒にやっていく。オルタナティブ投資やヘッジファンドなど投資顧問分野において外部に仕掛ける際に、農中さんが一緒に参加されることはあるかも知れない。

――グループ全体で5万7000人。この大所帯をひとつにまとめ上げる秘策は…。

佐藤 グループ全体をひとつにまとめ上げることは、私1代だけではとても成し遂げられるものではないだろう。これから色々な仕掛けを考えて、2代、3代かけて完成させていくつもりだ。私がみずほCBの頭取になってからの2年半は、CBの行員一人一人に責任を持たせ課題を出させることを実践してきた。アイデアや悩みや課題すべてをテーブルの上に出させて上司と徹底的に議論させ、上司まであがってきた案件に関しては経営側ですべて面倒を見るようにした。最初に課題を出すことを社員一人一人の役割としなければ、結局上層部と現場の思いはつながらない。そして今、ようやくCBでは一人一人が積極的に問題意識を持ち、たくさんの意見を持ち寄るようになり、海外のナショナルスタッフ5千人を含む1万人がひとつにまとまりつつあると実感できるようになってきた。そのカルチャーをみずほFG全体に広げていきたい。一人一人が自分で考えて失敗を恐れずに行動するようなカルチャーを作り上げる。それはリテールバンクのビジネスにおいても同じだと思っている。例えば、自分の眼力で今は小さくても大化けする可能性のある会社を発掘し、将来の産業を育てるというのが金融の基本的役割の一つだ。そういうことが出来る若者、バンカーがいなければ、日本にとっても良いことではないだろう。一斉に右向け右の金太郎飴集団になってはいけない。それはグループにおける人材育成の問題でもあると思っている。(了)