証券の統合シナジー効果を極大化

証券の統合シナジー効果を極大化

岩井コスモHD
岩井コスモ証券
代表取締役社長
沖津 嘉昭 氏



聞き手 編集局長 島田一

――今の証券業界は閉塞感がある…。

沖津 経済は萎縮し、収入の増加も期待できない中で、証券業界は目まぐるしく進化を遂げている。例えば3年前の「株券の電子化」はもとより、一昨年は次世代売買システム「東証アローヘッド」の導入、そして昨年は大証のデリバティブ売買システム「Jゲート」を導入など。しかし最大の進化は、「投資家の保護」という精神の高まりだ。確かに、株券の電子化など効率化を求めたシステムは色々な面で良い効果を発揮すると思うが、実際にそれらを導入する際には莫大なコストが掛かる。普通、会社のコストが上がるということは何かに投資しているということであり、その投資はその先において会社にプラス効果として戻ってくるものだ。しかし、これら一連の進化に伴う事柄のために負担するコストは、すぐに会社に還元されることはない。むしろアローヘッド、Jゲートなどは、ディーリングによる収益が減少するというマイナスの面すらある。「投資家の保護」も、改めて申すまでもなく大変重要なことで、長い目で見れば証券会社の信用につながり、それが収益の増大をもたらすというメリットもあるが、目先的には、すぐに利益につながることは無く、こうしたコスト負担が原因で赤字が続いている会社も多い。

――そうした悪環境下での生き残り策は…。

沖津 こうした状況下で証券会社がどのように戦い、競争していくのか、答えを見つけるのは大変難しい。バブル崩壊後の平成ひとケタ不況の時は、いわゆる証券ビッグバンが行われ、その改革をうまく利用すれば、会社を発展させることも可能だった。つまり、手数料が自由化されれば、手数料を安くする取引形態を考えることで会社を発展させることもできた訳だ。しかし昨今の状況下でいかに会社を大きくしていくかというアイデアはなかなか思い浮かばない。日本経済の低成長下で手数料収入等の収益も思うほど伸びはしない。ということになれば、当面は、会社の運営コストを引き下げるしかない。しかし、証券各社は平成不況時に徹底したコスト削減を行い、既にいくら雑巾を絞っても一滴の水も出てこない状態になっている。このような環境が3〜4年続いている。こうした過程で、約3年前、CSKホールディングスがコスモ証券を手放すという新聞記事を見つけた。即座に、コスモ証券を買収し合併統合を行うと統合シナジーが生じる、ということに目をつけた。こうして、平成22年4月16日にコスモ証券の買収が成立、会社の運営コストを引き下げる目処がついた。勿論、これからの努力も大いに必要だと認識している。

――そして、さらに今年5月1日、「岩井コスモ証券」が誕生した…。

沖津 岩井証券とコスモ証券を統合した「岩井コスモ証券」は、コスモ証券を存続会社とした。従来の岩井証券は既に社名変更し「岩井コスモホールディングス」となっている。グループ連結の、岩井コスモホールディングスの平成23年度3月期は33億円の赤字だったが、この統合シナジー効果によって、今年度は前年度に比べ30億円のコスト削減が可能となる。また、今後は、管理会計を徹底させていくつもりだ。右肩上がり経済時代の収益主義という発想を拭い去り、損益分岐点の明確な設定などを行い、会社運営についてコスト意識の徹底化を図る。不必要な無駄を排除して生じた利益を皆で分かち合う「全員参加型経営」を進める。そのためにも会社は出来る限り多くの情報を皆に提供して、風通しのよいガラス張り経営を行っていく。旧岩井証券では部店別損益計算書を作り、人件費や福利厚生費、賞与、退職金、そして役員への報酬総額などすべてのお金の流れをオープンにし、従業員が取締役会を傍聴できる制度まで作っていた。このような透明性を重視した経営を「岩井コスモ証券」でも続けていくつもりだ。もちろん、上場しているためインサイダー情報には十分な注意が必要だが、四半期決算公表後に、数字の面でも許される範囲でしっかりお知らせしていきたい。

――今後の課題は…。

沖津 コスト削減については、今後の対策や実施への段取りがほぼ終わっているため、これからは、主として収益の増大に力を入れていく。具体的に、営業収益を伸ばしていくには、調査・情報部と営業部の連携が重要だと考えている。調査部員の情報は営業に役に立たなければ意味が無い。営業員がレポートから有用な情報を得て、お客様にわかりやすくしっかりと説明し、それが手数料に結びついて、初めて、意味のあるレポートと言える。アナリストは営業サイドにどのようなニーズがあるのかを聞き、それを踏まえてレポートを作成する。逆に営業部門は、調査・情報部に対して、作ってもらいたいレポートをきちんと伝えることが大切。また、営業企画関係では二番煎じの考えは持たないという意識が大切だ。投資信託や外債の仕入れ部門で「他社がやっていて評判が良いから」という理由で商品を取り扱うようなことはせず、それぞれの部門が、あらゆるところで良い人間関係を築き上げ、有用な情報を一番に入手出来るようになってほしい。会社はそのためのサポートを惜しまない。また、営業人員の構成という面では、直間比率の改善が急務だ。すでに少しずつ作業を進めているが、早晩、直間比率を45%ぐらいにする考えだ。もちろん、いきなり内勤から営業に移すのではなく、投資サービス部や営業開発部で一定期間の訓練やサポート、教育を行って、営業のクオリティにも気を配っていく。
「岩井コスモ証券」は、みんなのための会社だ。株主のためでもあれば、従業員のための会社でもある。それぞれが皆「自分を豊かにするため」という意識で一生懸命働き、不必要な無駄を省き、そのためにも管理会計をきちんと行う。そうした経営姿勢のもと、収益に向かって様々な営業戦略や経営戦略を講じていけば、必ずこの会社は良くなっていくと私は信じている。従業員の質は大変高い。(了)