やることをやらない民主党を離脱

やることをやらない民主党を離脱

衆議院議員
木内 孝胤 氏



聞き手 編集局長 島田一

――4月に民主党を離党されたが、その経緯は…。

木内 離党した直接的な原因は消費増税への反対だが、私は以前から消費税は中長期的に15〜20%にせざるを得ないと考えている。しかし、国民の皆さんが民主党に期待していたことは、予算編成をすべて官僚に任せて再分配するという国の仕組みを、政府に任せて大胆に変えることだったと思う。高速道路を無料化するかしないか、或いは、子ども手当てを配るか配らないかは、実はどうでもよく、ただ、本当にそれらの公約を実現することが出来れば、日本の仕組みが根本から変わり、国全体が本当に変わるだろうと期待していた。それなのに、民主党は最初の予算編成から失敗して、結局、財務省に丸投げし、体制はまったく変わらなかった。さらにスピーディな意思決定を目指して政府と党の一体化を進めるという公約も中途半端に終わって、突然の消費増税発言となった。もちろんギリシャショックの問題もあり、財政再建を重要視することは必要で、増税議論から逃げないという姿勢も認める。しかし、代表選挙が終わって一年も経たないうちに、何の根回しも無く突然増税と言われても、それは納得がいかない。

――予算組み換えや無駄の削減で16兆円捻出するという話も全く聞かなくなった…。

木内 予算配分の仕組みも、国家経営の仕組みも、従来と全く変わっていないということだ。与党として実際にやってみて、現実は甘くなかったということは確かに沢山あったと思うが、ただ、出来るはずなのにやっていない事もまだ沢山ある。それをやらないまま増税は有り得ない。増税をするのであれば、せめて歳入庁を新設するなど、財務省が絶対に認めてくれないようなことをセットで進めていけば良いのに、歳入庁も公務員改革もすべて骨抜き状態だ。党と政府の一体化、そして政治家主導の予算編成という、国民が期待したこの二つをやらずに、他の個々の政策について進めようとしても、今は全く説得力が無い。なぜ、国が保有するJT株やNTT株をすべて売ったりしないのか。合同庁舎の建て替えにしても、街宣車を広い駐車場に置いているのであれば、そこに大きなビルを建てて再開発すればよいではないか。それをやりたがらないのは、へそくりを動かしたくない財務省のあの手この手の反対に負けてしまっているからだ。

――民主党内に留まり、考え方の似ている小沢一郎議員と一緒に動くという方法もあったのではないか…。

木内 本来ならば民主党として当選した私は、民主党内で活動する努力をしなくてはならない。しかし、民主党はあれだけ増税を明確にした野田総理を党の代表に選んでしまった。当時ほとんどの人間は増税に反対だったが、結局、政策ではなく人間関係で代表を選んでしまったのだ。逆に言えば、小沢さんと一緒に食事をしたことがない人は、同じ党内でも彼には絶対に力を握らせたくないと思っている。民主党は確かにバラバラの寄せ集めだが、それを共通化させるマニフェストを錦の御旗にして、一丸となって取り組む姿勢が何より大事だと思う。ギリシャショックや大震災による適宜の軌道修正は必要だとしても、それが今、すべて逆方向に動いているのはおかしい。私は有権者の皆様に対して「やることをやらない増税には反対」ということを唱え続けてきた訳であり、そうやって明確に反対し続けていた重要法案をいい加減な形で閣議決定されたことは許せない。そのまま民主党に留まることなど考えられなかった。

――民主党を辞めたことによる不利益は…。

木内 一つは政党助成金がもらえないことだ。民主党では年間1000万円程度の助成金が給付されていたが、それがなくなることはかなり大きい。また、民主党主催の会議に参加できなかったり、政策決定の過程が見えなくなるという問題もある。一方で、無所属だからこそ開ける新しい世界もあり、今は、これまであまり親しくなるチャンスが無かった野党の人たちとの交流が深まっている。周囲の人達も、私が民主党の中で期待に応えられなかったという申し訳ない気持ちでご挨拶に行くと、「言っている事は正しいから、自信をもって」と応援してくれる人がほとんどだ。逆に、改めて民主党の人気は相当程度落ちていると実感している。

――民主党の不人気が、「維新の会」や「みんなの党」への期待につながっている…。

木内 私を含めて国民の皆さんはある程度の消費税増税は仕方がないと理解している。ただ、その前になぜ議員定数を削減したり、公務員改革を進めたり、保有している株を売ったり、議員宿舎の問題などを進めないのか。特殊法人の問題にしても、色々なしがらみがあることは分かっているが、それでも民主党は心を鬼にしてやりぬいてくれると国民は期待して投票したのに、結局出来なかった。新自由クラブ、日本新党、そして究極の新党である民主党は15年かけてそれなりのメンバーを揃えたが、結局何も変えられず、むしろ自民党よりも酷いと思っている人も多い。国民はもはや新党ブームに懲りており、それが維新の会に変わっても同じと考えている人もいるだろう。しかし、橋下大阪市長を中心とした「チーム橋下」は着々とまとまりつつある。今後「みんなの党」や現職の議員とどのように組んでいくのかがポイントだろう。政治家にはそれぞれがこだわる政策があるが、その中でも「八策」を中心にしてガバナンスを効かせていくのではないか。

――橋下大阪市長が高く評価されている理由をどうみるか…。

木内 橋下さんは、目の前にたくさんの政策がある中で、自分が特にこだわっているたった1つの政策さえも実現できなければ、国民は「この人に任せていてもすべて実現出来ない」と思うことを良く理解している。実際に、大阪府知事時代に4月から始まる予算を2月に一気に決め抜いた、その胆力は素晴らしいものであり、色々な攻撃を跳ね除けて、やるといったら絶対に妥協せずにやり通す姿を見て、ある自民党議員が維新の会に飛び込んだほどだ。菅前総理も昔からTPPのことを考えていれば、胆力があってやりぬく姿勢を見せたかもしれない。しかし、結局それが出来なかったということは、本当にやりたいと思っていた訳でもなく、胆力も無かったということだ。さらに野田総理など本当はやりたいことなど何も無かったのではないか。そこで、なぜだか増税に火がついてしまったという感じだ。

――御自身の今後は…。

木内 無所属の新人議員5人と一緒に新会派を作ろうという話もあるが、本当に心を一つに出来るのかどうかなど、様々なハードルがある。私は自分の政策を明確にして信念を貫き通すために離党したのであり、選挙のためにどこかの党に入るようなことはしたくない。ただ、「維新の会」と「みんなの党」とは政策自体が相当似ていると思っており、そういった政策を集約して最終的に一緒になるという状況はあっても良いことだと考えている。「維新の会」に対して国民は、期待と同時に不安も持っている。その不安を解消するために、プロの政治家が多い「みんなの党」に「維新の会」が出来るだけ近づくことは好ましいことだ。

――金融界にいらした経験から、マーケットについての提案などは…。

木内 私が金融機関で働いていた頃は、国民の本当の姿が見えていなかった。私の周りでも、例えばトップ1%の報酬をもらう人達が「増税は仕方ない」「自分たちは状況を良く分かっている」と言ったとしても、実際には彼らには普通の国民の生活は全く分かっていないと思う。金融市場について言えば、私は物価安定のメドが消費者物価の前年比上昇率で1%など有り得ない、最低でも2%にすべきだと思っているが、それを実現するには、まずは日銀法を改正してそれが実現できる新しい総裁を選び、そのルールに則っていくべきだろう。具体的には、マネタリーベースを50兆円程度増やしていけばインフレ率1〜2%になることは十分可能だと思っている。そうすると為替も1ドル100円超辺りで安定するのではないか。もちろん単にアナウンスメントするだけでも、1ドル85〜90円の円安方向に振れることは十分期待出来ると思っている。今の日銀に期待していた時もあるが、やはり日銀法を変えなければ難しいというのが最近の考えだ。(了)