収益向上を目指し福岡に注力

収益向上を目指し福岡に注力

佐賀銀行
取締役頭取
陣内 芳博 氏



聞き手 編集局長 島田一

――現在の中期経営計画のテーマは「泥くさくても誠実に」。この意味するところは…。

陣内 数年前、佐賀県と福岡県内のお客様に対して、当行に対するイメージと期待することをアンケートしたところ、福岡のお客様から「泥くさいけど、誠実」 という答えが返ってきた。それをとてもいい表現だと思い、現在の中期経営計画のテーマとした。我々は佐賀、福岡を中心に営業しているが、福岡の銀行と比べて規模の違いもあり、出来ることと出来ないことがある。そのため、同じ土俵で戦うよりも、我々独自のカラーを出したほうが良い。「泥くさくても誠実に」という言葉は、佐賀県人そのものを表していると思う。技術をしっかり身につけて、自分がやることをやればお客様がそれを評価してくださる。そして銀行の場合は「誠実」であるということは重要なことだ。ちなみに、「泥くさくても」というキャッチコピーは、野田総理の発言前に考案したものだ。

――この中期経営計画は今年で最終年度だが、振り返ると…。

陣内 当行は平成15年に大幅赤字決算となり、中核的自己資本を中心に相当額の自己資本をロスした。それを元に戻すことと、収益を上げるというのが現在の中期経営計画の大きな二つの目標だったが、進捗状況は約一年遅れという具合だ。貸倒引当金が予想よりも少なかったことで、今年3月末時点で自己資本は随分積みあがってきたが、正直なところ、計画策定時には、ここまで長期の超低金利状態が続くとは思っていなかった。そのあたりが目標数字に達しなかった要因となっている。ただ、効果が現れるのに時間はかかっているものの、狙ったことはしっかりと実現させている。例えば、福岡で貸出金残高を増やすという目標については、着実に右肩上がりとなっている。また、非対面型の個人向けカードローンについては、平成22年の4月にシステムを全面更改してから、試行錯誤の開発を重ねて時間もかかったが、今では確実に稼動し始めている。

――「地方の疲弊」という言葉をよく耳にするが…。

陣内 佐賀には基幹産業がないため、産業といえば、どうしても自動車産業の下請などとなる。佐賀県全体で見ると法人関連の伸びは少ない。そのため、我々の次期3年計画では、もともと口座数の少ない福岡でのリテール業に力を入れていくつもりだ。出来る限り人の手を使わず、とはいえ、ネット銀行を作る気はないため、このあたりをIT戦略プロジェクトとして、ダイレクトセンタープロジェクトチームを組み、彼らに支店の窓口以外をどのようにするかを検討してもらっているところだ。最終的にはお客様に選んでもらえるチャネルを増して利便性を高め、顧客数を増やしていく。私はもともとシステム担当の出身であり、これまでにも数々の新しい金融サービスシステムに関わってきた。その経験を存分に活かしていきたい。

――運用についての考えは…。

陣内 運用で利益を出すのは難しい時代だ。株は非常に難しく、外債についても保有している外貨の範囲内で行う程度だ。過去、長短の金利ギャップで苦い思いをした経験があるため、このあたりは特に慎重に考えている。また、国内債券については金利をどう見るかだが、ここ2〜3年は上昇することがないのではないか。とはいえ、資金を遊ばせておくわけにもいかないため、十分にヘッジをかけながら運用している。基本的に残存期間は長くなっているが、持ちきりにはせず、回転売買でこまかな幅の利益を狙っている。例えば金利が0.2%〜0.3%の間でもコンスタントに動いていれば、かなりの利益を上げることが出来る。逆に言えば、これだけ相場が動かない状況が続いていると、少しの動きを見過ごしてしまうと、ずっと持ち続けなくてはならなくなってしまう。

――住宅ローンについては…。

陣内 基本的には、佐賀JAとバッティングする10年物は扱わず、5年物、3年物、変動物など金利期間を短くして取り扱っているのだが、ここで少し苦戦はしている。というのも、佐賀県の方々は10年固定物を好む傾向にあるからだ。一方で、県民性の違いからか、福岡県民の方々は変動を好む傾向がみられる。住宅ローンについては信用リスク、金利リスクをとりながら進めていくことが大事だと考えている。

――中小企業金融円滑化法が終了するにあたっての出口戦略は…。

陣内 円滑化法終了後、円滑化法実施前のような企業間での自然淘汰はあるとしても、来年3月末からいきなり中小企業がバタバタと倒産するようなことはないと考えている。政府は銀行にコンサルティングを含めて中小企業に対応することを期待しているが、それは非常に難しい。財務部門であればアドバイスも出来るが、一番重要な売り上げの増加に対しては、我々はなかなか寄与できない。実際に色々やってみたが、我々が売り上げに寄与できる額はほんのわずかだ。ただ、中小企業支援協議会などでは佐賀県はモデル地区になっているほどよくやっていると評価されている。もう一つ、円滑化法が終了すれば、銀行の不良債権が急増しクレジットコストが増えるという見方もあるが、これも極端に増えることはないと考えている。円滑化法を実施している中でも、格付は厳格に運用している。このように、円滑化法以前からすでに同じことをやってきており、そういう意味では、各企業が経営していく中でソフトランディングしていくということになろう。

――海外進出についての考えは…。

陣内 どこまで我々が応援できるかが重要であり、海外に拠点を持った機関と提携していくという路線は変わらない。ただ、従来福岡と佐賀にそれぞれ置いていた国際部門を推進するための人員を、今年7月から新たに「海外ビジネスサポート室」として明確に組織とした。この組織には、お客様の支援を最重要項目とし、外為収益はそれに付随して発生すると考えるよう徹底して指導している。もともとネットワークを海外に持っている訳でもない。そうはいっても、行員の中には、どうしても海外といえば外為収益という考えが先にくるようで、この考えを植えつけるのには数カ月かかった。やはり、お客様あっての銀行だ。

――現場がよく分かっていらっしゃる…。

陣内 実は私は40数年の行員生活の中で、現場にいたのはたったの8年で、支店長も2カ店しか経験してない。ただ、現場の方が好きだという気持ちがある。頭取になって、お客様のところへ挨拶回りをした時に、それが終わると夕方から近くの支店の行員達を集めて、一緒に飲んだり食べたりして皆で交流する時間を作っている。そうすると、行員たちがとても喜ぶ。このように、上下の差をなくすことで、一体感が出てきて、それが良い方向につながっていくと信じている。

――将来の抱負は…。

陣内 佐賀の経済基盤と人口減少を考えれば、今後、福岡でどのように根を下ろしていくかが非常に重要なポイントになる。現在、佐賀と福岡の顧客割合は6対4だが、これを半々にしたい。これは、佐賀での事業を縮小して福岡に移るという訳ではなく、佐賀銀行として生き残るため、収益を上げるために福岡へ注力していくということだ。そのためにどこかを買収するという考えはない。理由は、銀行としてはお互いを尊重して存続していきたいということが一つ、また、証券会社を傘下に抱くという考えに関しては、我々はそこまでの規模ではないということが一つ。周囲と良い関係を築き合いあいながら、肩を組んでやっていきたいと考えている。(了)