原発ゼロ目指し、最大限の政策努力

原発ゼロ目指し、最大限の政策努力

経済産業大臣政務官 内閣府大臣政務官
国家戦略・経済財政・原子力行政担当
衆議院議員
岸本 周平 氏



聞き手 編集局長 島田一

――経済産業大臣政務官と内閣府大臣政務官を兼務されて、大変ご多忙のようだ…。

岸本 経済産業省ではデフレ脱却と経済再生、中小企業対策に取り組んでいる。私自身も地元でどぶ板の政治活動を行っているが、今、中小企業は本当に大変な状況だ。中国景気は尖閣問題が起こる随分前から景気が減速しており、欧州はご存知の通り金融危機でどうしようもない、そして米国の景気もなかなか思うように回復しない中、今まで日本景気を押し上げていた復興需要が今年終了すると、来年前半には反動減になることも考えられる。まずは復興予算を中心に予備費を使って出来ることを今月中にやっていかねばならない。

――具体的には…。

岸本 経済産業省に割り当てられている東北地方に対するグループ補助金は大変使い勝手がよいのだが、それゆえ資金不足状態となっており、その代わりに予備費を使って被災地の方々の活動再開を支援していく。野田総理からは来月中にも経済対策を打つよう指示が出ているが、それにはグリーン・イノベーションやライフ・イノベーションといった、再生戦略として取り組んで来た政策を経済対策として打ち出していく。そのための経済対策用予備費として約9000億円が準備されているが、出来れば、自公民の三党合意で補正予算を組み、公債特例法案もすみやかに通していただきたい。その前提となる解散総選挙については小選挙区で0増5減、民主党としては比例区も合わせ45議席減を実現させていきたい。

――内閣府では国家戦略・経済財政・原子力行政などを担当されている…。

岸本 私の主な任務は再生戦略を前倒し実施し、中小企業を中心に日本全体の景気を良くしていくことだ。それは現在担当している経済産業省政務官としての任務と、内閣府の担当政務官としての任務と重なっている。野田総理は敢えてそういう人事をなさったのだろう。私はもともと大蔵省出身で、その当時、経済産業省にも2年間出向していた。また、トヨタ自動車勤務時代に内閣府に出向を命じられて2年弱籍を置いていた経験もある。当時の仲間たちが今、両府省に沢山いて、大変仕事がしやすい。まだ任命から3週間しかたっていないが、本当にスムーズに溶け込めていると感じている。

――市場では、解散総選挙後には再び自民党政権に戻るのではないかという声もあるが…。

岸本 経済対策についてやるべきことは、党派によってそこまで差はない。社会保障と税の一体改革がそうであったように、真面目に日本経済に責任を持ち、日本国民の未来に責任を持った政党であれば、結論はそう大きく変わらない。実際に我々はその経験を持っている。我々の再生戦略の肝は、2030年代に原発ゼロを目指して最大限の政策努力をしていく中で、再生エネルギーという面で官と民が一緒になって日本の技術を最大限に利用していくこと。そして、iPS細胞のようなライフサイエンス関連でも、夢と希望を持って日本の技術力を存分に活かせるような基盤を整えていくことだ。日本はこの20年ほど意気消沈していたが、それでも世界第3位の経済大国であることには間違いない。中国をはじめとする東アジアの追い上げがあったとしても、基礎科学におけるノーベル賞の数を見れば明らかなように、日本人はそれだけの力を持っている。それを世界に再認識してもらうためにも、TPPを含め、冷静な判断をしながら世界に向かってチャレンジしていかなければならない。

――デフレ脱却についての見解は…。

岸本 デフレ脱却は大変難しいと思う。もちろん、米国の中央銀行が3回にわたって金融緩和を行い、それに対して日銀券の量的な緩和の比率が少ないのは事実だが、それ以前に日銀は、日本の経済情勢に応じて思い切った金融緩和を実施してきている。私は経済の専門家として、更なる金融緩和の余地はあると思っているが、日本銀行には独立性がある。この問題はあくまでも自発的に日本銀行が考えることであり、政府があまり口出しするのは慎んだほうが良いと考えている。とはいえ、決定会合には前原国家戦略担当大臣も出席され、その中で大変有効な提案をされている。次の会合で前原大臣が欠席される場合には、私が代理で出席することになり、政府として言うべきことは、公式の場でしっかりと提案していくつもりだ。ただ、最終的な判断は日本銀行が行うということだ。

――日銀の独立性は大切だと…。

岸本 私は7年間、地元で中小企業の皆さんと一緒に汗を流して活動してきたが、単に日銀がお札を刷ってばら撒けば日本経済が良くなるという段階ではないことを、身をもって感じている。もう一度、経営者一人一人がアニマルスピリッツを取り戻し、円高でも売れる商品を開発したり、ニッチな部分のニーズを掘り出していくようなことが必要だ。特にご高齢の方は潤沢な資金を保有していらっしゃる。そういった個人資産を使っていただけるような、新しい商品やサービスを作り出していくことに尽きるのではないか。そのために法人税を下げたり、或いはイノベーションを後押しするための税制改正は政府の仕事としてやっていく。ただ、その先まで政治家や役人が立ち入ってしまっては、ろくな事にはならないと考えている。

――もう一度、日本の活力を取り戻すには、海外から人を呼び寄せる工夫も必要だ…。

岸本 先日、経済産業省と米国大使館等の主催でアントレプレナーシップのシンポジウムを開いたのだが、藤田さんという日本の若者が、米オハイオ州ですばらしい起業を行ったとしてホワイトハウスに招待されたという。今年のオバマ大統領の一般教書演説の時にゲストに呼ばれた唯一の日本人だ。そういう能力を持つ日本人は沢山いるのだが、残念ながら起業するとなると、米国では簡単にできても、日本ではなかなか難しい。このあたりの条件整備も、我々政府が早々に行うべき仕事だと認識している。私はこれまでに企業と役所での勤務経験があり、政治家としての落選経験もある。そういったバラエティのある経験と、これまでに培った人脈を存分に活かしていきたい。

――自由貿易についての考えは…。

岸本 TPPもそうだが、いわゆるAPECの国々が自由貿易という一つの大きな枠組みの中に入った場合、日本という一つの島国をAPECという大きな太平洋の中で捉えて、その中で活動して国富を増していくという考えもある。現在、日本の貿易収支は赤字だが、企業が海外に出て行っても、過去投資した分は配当などで戻ってきている。もはや小さな島国根性で考える時代は終わり、21世紀はアジア、APEC全体の経済活動について考えていくべきだ。ただ、雇用の問題だけは留意する必要がある。雇用を生み出すには製造業が必要であり、それには円高でも売れる魅力的な商品を生み出していかねばならない。或いは、アニメや映画などでは、日本でソフトの部分を生みだし、それを海外に売るように、「無」から「有」 を生み出すような創作作業にも力を入れていくべきだろう。

――中国に対して…。

岸本 隣国が豊かであることはお互いに幸せなことだ。今は少し不幸な状況になっているが、貿易関係を見てみれば明らかなように、中長期的には中国も日本も一心同体だ。そのあたりは賢明に折り合いをつけながらWIN−WIN関係で発展していく以外に道はない。特に企業経営者の方々は我々よりももっと冷静に考えていらっしゃる。政府としても毅然たる態度を失わずに、与野党関係なく日本の政治として対応していく。それは韓国に対しても同じだ。外交当局や官邸がきちんと処理をしていくことを前提に、中国との経済的一体感はこれからも持ち続けていかなければならない。

――原子力の問題については…。

岸本 今時点で決定していることは、2030年代には原子力発電をゼロにするということを目指して最大限の政策努力をしていくということだ。その間、色々と状況も変化していくだろう。その都度見直しを行いながら、皆で知恵を出し合いながら、現実的な路線に向かってソフトランディングしていくということだと考えている。(了)