国益を見極め政策を具現化

国益を見極め政策を具現化

財務大臣政務官
衆議院議員
網屋 信介 氏



聞き手 編集局長 島田一

――財務大臣政務官になられて…。

網屋 これまでは、インサイダー問題やAIJ問題、会社法や税制改正など、金融行政や財務、税制について、党の一員として、党内のワーキングチームや議会の場で色々と提言してきたが、それは、いわゆる「あるべき論」としての意見だった。今回任命された財務大臣政務官は、政策を役所としていかに具現化していくかが仕事になる。色々な意見や提案を受けても、それが国力として生かされるのか、国益に反しないのかをきちんと見極め、仮にその案が国益に反するものであれば、その理由をきちんと相手に説明して納得してもらわなくてはならない。財務省では国の財政、税制問題、そして国際協調問題を大きな3つの柱としているが、その中で私は税制関係と国際局を担当している。先日、東京で開催されたIMF・世銀総会でも色々な人とお会いして、円借款などの課題をどうすべきか等を話し合ってきた。例えば、インフラ支出を行うときに財務省としてどのようなサポートがベストなのかというようなことだ。

――円高が放置されていることについて…。

網屋 円高を放置しているという訳ではない。まず、急激に円安方向に動かすことが本当に良いのかということがひとつ。そもそも今回の日本の貿易赤字は、東日本大震災で原子力発電が止まった中で、日本が資源を沢山買わざるを得なかったことが背景にあり、それを金融収支でバランスをとってきたというのが現状だ。資源輸入国である日本が円安状況になれば、この赤字はさらに拡大するだろう。将来的に原発を含めて資源が国内で調達できれば円安の方が良いという状況にもなるだろうが、資源を中心に海外から原材料の調達を行わなくてはいけない中では、適正な為替レートに落ち着くことは大事だとしても、急激な為替の変動はあまり望ましいものではない。ただ、為替政策は大臣の専管事項であるため私がどうこう言えるような問題ではない。

――ユーロやドルなど他の通貨に比べて日本のマネーサプライがあまり増えていないという話もあるが…。

網屋 自然発生的に円安にしていくために、例えば、さらなる金融緩和を行うという方法はあるかもしれない。しかしそれは、物価や資産インフレといった問題と絡めて考える必要がある。また、インフレ目標を作ったとしても、輸入する資源価格の変動によって、結果的にものの値段が変わっていくのであれば、これは悪いインフレだ。インフレによって出たお金がすべて外国に持っていかれる構図になっている。我々が実現すべきは、国内で資金が還流する、つまり日本国内の賃金上昇と消費の拡大に繋がる緩やかなインフレだ。そのためにどうしていくのかが一番の課題だと考えている。

――中国や韓国など、為替をコントロールしている国が日本の国債を買うようなことは止めさせるべきではないか…。

網屋 国際的な関係の中で、特定の国だけを対象に販売制限するということはあまりよいやり方ではない。中国は今や世界一の米国債保有国であり、世界二位の経済大国という顔を持つ一方で、G7にも入っていない途上国という顔も持っている。そのため、為替管理の規制は受けない。また、日本の約10倍という人口の多さで、日本商品の一番の購買客であることも事実だ。韓国と同様に、日本がそういった国々と今後どのように付き合っていくかについては、総合的に考えていく必要がある。

――100兆円規模の外国為替資金特別会計については…。

網屋 1ドル110円を超えれば含み損もなくなってくると思うが、現段階でこの特別会計を取り崩すことは考えられない。そもそも外為特会の大半は米ドル債であり、これが金利のアービトラージになっている。実に毎年2兆数千億円の黒字状態で、これは外為特会の剰余金として積み上げられている。確かにこれを一般会計に移して使ってしまったというようなこともあるが、それは別として、日米関係を考えた場合に、これらの米国債をすべて売れるはずがない。そこで、ロールオーバーで保有し続けるのであれば含み損は出ないだろうというのが私の理論だ。或いは、ドルで入ってきた利息をそのままドル建てで防衛省や外務省のドル建て経費にあてたり、スワップで為替ヘッジをしたり、或いは政投銀に預けてドル融資するなどして、少しでもリスクヘッジしていくようなやり方もある。変な話だが、例えば現在のようなペースで国債が発行され続け、国債の金利が上がれば、売りが重なり、超円安、ハイパーインフレになってくる。日本が明らかに過度な円安状態となり、貿易収支が大幅黒字となれば、世界中が日本に対して批判の目を向けるだろう。まさにその時に、大量の外貨準備金を売るという手はあるかもしれない。しかしこれは高度な政治判断になる。

――今は国債ばかりに資金が流れて株式市場に力がない。株式税制についての考えは…。

網屋 私は、今の日本の株式市場が低迷している理由は、制度や価格の問題ではなく、企業の根本的な魅力の問題だと思う。今の株の売買は6〜7割が外国人によるものであり、この人達が日本株にアロケーションするかどうかだ。つまり、日本の個々の企業に投資するだけの重みがあるかどうかが大事なのであって、小手先で税制だけを変えたところでどうなるものでもない。ただ、損益通算について考えるならば、株式だけではなく不動産やデリバティブなども含めて、金融商品の損益通算の間口を少し広くするような案は良いかもしれない。また、日本は他の国と比べて損失の保有期間が短いため、例えば損失保有期間をもっと長くしたり、或いは期限を設けずに、次に利益が出るまで損失分を保有し続けることを可能にするような議論があっても良いのではないかと考えている。(了)