マクロ経済を左右する選挙戦に

マクロ経済を左右する選挙戦に

〜緊急記者座談会〜



聞き手 編集局長 島田一

――いよいよ選挙戦に突入した…。

 今回は、安倍自民党総裁が大胆な金融緩和を主張しているため、総選挙に対する市場の関心が従来以上に高い。また、消費税についても自民党はデフレ脱却前の引き上げは否定しているし、維新の会は消費税の地方財源化、日本未来の党とみんなの党は増税自体に反対している。このため、今後のマクロの経済政策が今回の選挙で大きく左右されることは間違いない。
 そうかな。消費税反対の民主党が、結局、消費税引き上げ法案を通したように、どの政党が政権を取ろうと、結局は霞が関や日銀のコントロール下に置かれるのではないか。まずは日銀法改正が頓挫して、その後は消費税引き上げが実現すると私は見ている。民主党を見て、つくづく思ったが、本当にマクロ経済政策を知っている政治家はごくわずかで、霞が関に折伏(しゃくぶく)されれば簡単にコントロールされてしまう。野田首相が良い例だ。
  確かに信念を持って消費税法案を通したのなら、小選挙区だけに出馬して国民の信を問うべきで、比例区と重複すべきではないという意見が多い。政治家は国民の代表であり、ましてや首相はその政治家の代表であるわけだから、仮に小選挙区で落選したら、自らの判断が浅はかだったと潔く認めるという姿勢を取るべきだろう。比例区にしがみつくのは何ごとだと言いたい。
 もっとも、それが民主党だと言う人もいる。つまり、結果的にマニフェストで見事に多くの国民を騙したように、その場限りで一貫性がない、政治哲学がないというわけだ。しかし、一貫性や政治哲学は長年の経験や熟慮の末に生まれるものだから、そもそもにわかづくりの政治家が多く、政権の経験がない民主党には無理だったということではないか。もっとも、あえて民主党の肩を持てば、自民党が行えなかった抜本的な政治改革を掲げたまでは大変良かったし、それを国民が大いに期待したというのも事実だろう。
  問題は、民主党ができなかった抜本的な改革を、今度は自民党がやり遂げられるのかということだろう。そして、それにはまず、日銀法を改正できるか否か、これが第1の試金石と見ている。というのは、安倍総裁発言によって円安・株高となったことが日本全体を活気付かせ、国民に期待を持たせることに成功しているため、これが支持率に大きく貢献していると見られるためだ。前回の総選挙で民主党が16兆円の財政コスト削減を掲げて国民の支持を得たように、日銀法改正ができなければ、来夏の参院選や次の総選挙では今度は自民党が解党の危機に見舞われるのではないか。
 確かに、1票の格差に対する最高裁の違憲判決の関係で、すぐに次の総選挙をせざるを得ないだろうから、その時までに円高・株安が是正されていなければ、自民党も大きな失望の対象となる。しかし、自民党の山本幸三前衆議院議員が「日銀につぶされた日本経済」という本を出しているくらいだから、日銀法改正と大胆な金融緩和は自民党の議員には最重要課題として認識されているのではないか。
 それはどうかな。自民党の中でも、まだ日銀の独立性といった事を口にする議員がいるぐらいだから、実際はまだ解らないよ。また、日銀の後ろ盾となる財務省は、今のデフレ政策による円高・株安・債券高は、自らのテリトリーである国債発行には都合が良いし、消費税引き上げ法案が通っているため、いざという時の財政上の手当ては目先はできている。日銀に借りを貸すためにも、日銀法改正を先送りにして、ゼロ金利政策などの大胆な金融緩和のみを後押しするのではないか。
  だとすれば、日銀総裁は竹中平蔵慶応大学教授や山本幸三前議員ではなくて、武藤敏郎大和総研理事長あたりが妥当なところか。いずれにせよ、円が90円台、株価が1万2000円あたりを回復してくれば、資産効果で内需は活気付く。また、自民党が掲げている国土強靭(きょうじん)化計画も先の中央道のトンネル事故により正当化された観もあることから、大胆な財政出動も行いやすい。その結果、欧州に続き中国の景気が減速を続けていても、日本の景気は持ち直すことで、14年度の消費税引き上げも実現が可能となる。
 まあしかし、大胆な金融緩和は賛成ながら、自民党→民主党→自民党による財政のバラマキの継続はいただけない。自民党はリーマン・ショック対応で、民主党は東日本大震災でそれぞれ大量のバラマキを行った。それにより日本経済に無駄がまん延しているため、大胆な金融緩和と同時に財政コストの抜本的な削減を行っていくことが最も適切な政策であると思うが、やはり愚衆民主主義ではバラマキは避けられないというわけか。
 バラマキを続けている結果、財政が火の車になっている。また、パブリックセクターを中心に一層の高コスト体質となっている一方で、民間部門ではお金がだぶついている状況だ。これが円安・株高となると、財政については当面は消費税の引き上げで対応し、円安は高コストの解消効果をもたらす。しかし、民間のだぶついた資金がどこに行くのかということが大きな問題で、海外に行き過ぎたり資産価格を急騰させれば、今後は貿易赤字の拡大やインフレによる国債価格の下落→財政赤字の拡大といったマイナス効果を生む。
 当たり前だが経済運営は、日々刻々と変わる経済情勢に、素早く弾力的に対応していくというバランスが一番大切だ。そういうバランスで観ると、これだけデフレにしてしまったのだから、しばらくは思い切った緩和政策が必要で、その意味ではミニバブルも良い効果を生むだろう。しかし、反対にこれだけバラマキを続けてきたのだから、どこかできちんと財政を引き締めていかないと、これは大変なことになる。
 昔の日本人には、「独立自尊」、「勤勉は美徳」といった言葉を口にして、生活保護を受けるのは恥ずかしいといった気持ちも強かったが、今は詐欺的に受給している人も目立っている。同様に、国任せ、親任せで、苦労もせず、何でも手に入ると勘違いしている人も多い。役人にしても、国を背負っていこうという気概のある人は少なく、自分のため、自分の役所のためという姿勢が目に付く。
  とはいえ、東日本大震災におけるボランティア精神の発揚や、この円高局面において中小企業の積極的な海外進出を見るにつけ、まだまだ日本も捨てたものではない。

――競争原理による経済合理化とその敗者や弱者の救済・復活、金融緩和と財政コスト削減、市場監視体制の強化と市場育成策の充実、それぞれバランス良くできる政党が政権を握ることが、経済政策では理想だな…。