補助金漬けと規制で新産業が埋没

補助金漬けと規制で新産業が埋没

みんなの党代表
渡辺 喜美 氏



聞き手 編集局長 島田一

――昨年末の選挙では、みんなの党が大躍進した…。

渡辺 昨年末の選挙で投票率が低下したのは、民主党への失望に加えて、「誰と組むか」が横行する政治に国民が嫌気をさした結果だと思う。そんな中で我々は「誰と組むか」ではなく、政治理念と基本政策が大事だと言い続けてきた。「何をやるか」が政党の命であり、魂だ。それによって組む相手を考える。目指すところが違っていれば一緒になれないのは当然だ。維新の会との連携も昨年7月頃には無理だと思った。原発問題でも我々は一貫して電力自由化・原発ゼロという自民党とは真逆の政策を掲げている。そして、そのためには送発電の分離を徹底する必要があり、小売の新規参入も可能にすべきだと考えている。東京電力は破たん処理して送配電網を売却すれば5兆円程度にはなるとも言われている。それを損害賠償の原資にすればよいのではないか。電力自由化が上手く進めば、現在3%程度に過ぎない特定規模電気事業者(PPS)も一気に増えるはずだ。原発を続行するということは、1941年に完成した9電力による供給システムを温存するということに他ならない。

――自民党の原発政策は知恵がない…。

渡辺 私の地元は山の傾斜が急で農業用水の流れが速いため、これを利用して発電機を回している。ただ、計画停電になると止められてしまうというとんでもない電力システムによって、結局、社会主義、中央司令塔で電力が供給されている。小水力発電をきちんと活用できる分散型電力供給にするためには、スマートグリッド、スマートメーターといったものを活用して賢い送電線を作る必要がある。このような考えを、安定供給の邪魔になるとしてやらせてこなかったのがこれまでの日本だが、すでにスマートグリッドに関する素晴らしい日本の技術は海外で活躍している。実際にスマートグリッド体制を導入すると、家庭や工場で1日毎の電力の契約が可能になる。例えば電力需要が一番大きい夏の甲子園の時に、会社を臨時休業にして余った電力を高く売り戻す。市場メカニズムが通用すればこのようなことが可能になる。そして原発優遇政策をやめれば、原発による電気料金がいかに高い買い物なのかが一目瞭然になるだろう。そういう形で2020年代には原発ゼロになり、経済が成長し、新産業も創出される。原発ゼロと経済成長は両立させることが出来る、これがみんなの党の政策だ。

――安倍政権の財政金融一体政策については…。

渡辺 安倍政権の財政金融一体政策はもともと我々が唱えていたことであり、その範囲では自民党と協力していくことも可能だ。財政政策だけでは円高になる可能性もあるため、財政政策を飲み込んで余りある金融緩和をやらなくてはいけない。ただ、この内閣は安倍麻生内閣であり、人事も麻生さんの意向が反映されている部分がある。そして、財務省にとって麻生さんは、財務省主計局の権限を尊重してくれる格好の人物と見られており、増税させるためにたくさんお金を配るように仕向けられている。それが少々心配だ。最悪なのは口先だけのインフレターゲットを掲げ、財務次官OBが日銀総裁に天下り、日銀法改正が行われないことだ。また、どこの国の中央銀行も金融政策で雇用の最大化を図っているのに、日本にはそういう感覚が全くなく、厚生労働省が集めた雇用保険料を補助金や小手先の雇用対策のためにばら撒いているシステムも変える必要がある。私は常々、中央銀行総裁にはマクロ経済の博士号Ph.D(Doctor of Philosophy)と英語能力、そしてマネジメント能力が必要だと言っている。そういう人材が日銀総裁として自民党側から提案されなければ、我々が安倍総裁に人材を推薦することも考えている。

――中国との関係について、みんなの党の考えは…。

渡辺 尖閣諸島については、「現状維持で、変更は認めない」という強いメッセージを出すことだ。それは同時に自己抑制も必要とするが、これが戦略的リアリズムだ。民主党は「東京都が尖閣諸島を購入するよりも国が購入した方が安定的に管理できると」思い込んでしまったようだが、中国側はそれを「日本は尖閣諸島を国有化する」というメッセージとして捉えた。それは現状変更であり、これこそ今日の騒動の発端だ。民主党の外交ではことごとく失敗を重ねてきたが、それは裏ルートを上手く使えないからだ。相手国の指導者と腹を割って話が出来るような特使や密使を送り込めない、或いはそういう裏ルートをもった政治家がいたとしても活用出来ないというところに最大の問題があったのではないか。

――自民党政権で復活した公共事業に関して、みんなの党の考えは…。

渡辺 今の震災復興予算をみると、すべてを霞が関が決定して補助金交付金と一緒に一斉発注している。これでは無駄なものや足りないものがあとからあとから出てきて、人材・資材不足に陥るのは目に見えている。本来、公共事業というものは、権限・財源・人間を地方に委譲して、地方に優先順位を決めて進めるほうが遥かに効率的なのに、自民党は国土強靭化計画と称して相変わらず縄張り意識が強い。公共事業の内容としても、例えば、老朽化したトンネルの補修や耐震化、配電線の地中化や農業用水のふた掛けなど、今は土地を使わずに地域の人々の安心につながるようなものに注力することのほうが重要なはずだが、霞が関にそういったことはわからないし、自民党にもそういう発想はない。成長に継続性がない理由も、補助金などを霞が関が決定して全国一律にばら撒いているからだ。どのような投資がその地域のためになるのかという発想は、実際にそこに住む人達にしかわからない。そういう発想がない人達がお金だけを配っても、そこに成長の継続性はない。

――では、成長戦略として国が考えるべきことは…。

渡辺 国の仕事はマクロ政策と規制緩和だけでよい。すでにガチガチに固められた規制を緩和することだ。そして、どういう産業を育てるかについては地方が決めればよい。これまで自民党が成長産業と着目して保護してきた農業・医療・電力エネルギー業界が成長産業になっていないのは、既得権益でがんじがらめになってしまったからだ。農業の世界には農協という日本最大の拒否権行使集団、圧力団体があり、医療の世界には日本医師会、電力の世界には強烈な既得権益を持つ9電力体制がある。特に農業については産業政策ではなく農協のための社会政策のようなものになっており、儲からない農家がたくさんあるほど農協は儲かる仕組みになっている。私は地元の那須野ヶ原土地改良区連合の理事長を務めており、自分自身でお米も作っているため、農業については最前線を知っている。結局、農業・医療・電力エネルギー業界は既得権益によって戦う覚悟をなくしてしまい、補助金漬けと規制によって伸びるべき新産業が成長できずに埋もれてしまっているということだ。(了)