北方領土問題を解決し、中国包囲網の構築を

北方領土問題を解決し、中国包囲網の構築を

一水会
代表
木村 三浩 氏



聞き手 編集局長 島田一

――日本が中国に対抗するには、中国を取り巻く諸国と友好関係を結ぶことが重要だ…。

木村 中国は自国民をどんどん国外に出して、そこで労働力を提供し、最終的に移住させている。これはチベットやウイグルで行われてきた漢民族の人海戦術の混合政策と同じ手法だ。覇権国家内での冊封体制をミャンマーやロシアなどでも行なっている。特にミャンマーでは経済制裁が解かれる以前から中国の進出が続いているが、それはミャンマーが欧米から経済制裁を受けてしまったために、国際的な資本を中国に頼らざるを得なくなったという背景がある。しかし、実際に中国がミャンマーで行っていることは、パイプライン建設とはいうものの、土の中に埋まっている金を取り出すなど、とんでもないことばかりだ。こういったこともあり、現在では中国資本企業を追い出そうという流れになってきている。一方、日本国内における対ミャンマー認識は依然としてよくないが、それは日本のマスコミが西洋諸国の受け売り報道しかしていないからであり、竹山道雄も「ビルマの竪琴」で表現しているように、ビルマ人達は本当に親日だ。それは、日本の軍人で陸軍大将だった今村均のお陰でもある。そのミャンマーが、今後日本にとって重要な国になっていくことは間違いないだろう。

――中国の周辺諸国がどれだけ深刻な悩みを抱えているかということを、日本人は理解しなくてはいけない…。

木村 ベトナムではかつて「越南」と表記されて中国の属国扱いをされていたが、彼らは民族としてのプライドや文化を守るためにベトナム語を作った。チベットも自治区を守るために仏教を保っている。インドはもともと中国と緊張関係にあり、特にインド北部では中国に対する抵抗が強い。日本における尖閣諸島問題については、今回中国は「核心的利益」という言葉を用いてきた。これに対して、我々は危惧し、警戒しなければならない。中国はすべて長期的視点で計画している。例えば20年後、中国が日本の2倍のGDPとなった時に一体どうするのか。その時のために、戦略的思考から中国周辺諸国と手を結び、中国を押し戻していく作業を進めていく。そうすれば、中国国内においてチベットやウイグルで弾圧された人達にも目が届くようになるだろう。そうして、共産党一党独裁に基づいた覇権的利益主義が間違っているという判断を促さなくてはならない。

――中国国内の週刊誌「南方週末」が、当局の圧力によって自分たちの主張を改ざんさせられるという事件があった…。

木村 これは、中国国内で共産党を批判し、チェックする機能が少しずつ出てきたという証であり、良い兆候だと思う。実は以前、私は南京虐殺問題について南方週末の記者から取材を受けた事がある。実際、彼らはマスメディアとして事実をきちんと追及しており、決して共産党のプロパガンダとして日本の過去をあげつらい、コントロールしようというような考えではなかった。偶然その記者だけがそういう体質だったのかもしれないが、しかし、その様な体質が許容されているのが南方週末という会社だ。そして案の定、共産党に対する徹底的な批判を当局によって封印された。彼らは弾圧されているということだ。「南方週末」のようなマスメディアの出現と、こういった事件が明らかになることで、中国国民の政治に対する意識も高まり、国の実態がわかってくるだろう。

――ロシアも中国との間で悩みを抱えている…。

木村 率直に言えば、ロシアでも中国人は恐れられている。中には「日米露の同盟を結びたい」と公言するロシアの学者もいるほどだ。ただ、シベリアにおいては寒さから誰も進出したがらないため、結局中国人を受け入れているというだけの話だ。事実、シベリアは寒くて技術が通用しないという声もあるが、そういったことをカバーするために、それぞれの都市間の幹線整備を実施するなど、流通路の確保を築いていくべきだろう。天然ガスや地下資源のポテンシャリティが大きいシベリアに、きちんとした技術を持った日本が進出していけば、恐らく中国人よりも重宝されることになる。私は中国を牽制するという意味では、ロシア、インド、ミャンマー、ベトナム、日本という包囲網を構築することが望ましいと思うが、日本の外務省は米国の要人から中国と適度に良好な関係を保つように釘を刺されているようで、そのために領土問題を棚上げしたり、中国をけん制し過ぎないように控えている。それは致し方ないとしても、例えば中国が尖閣諸島を「核心的利益」と言っていることに対して日本の国家的戦略を考えれば、日本はアジア共通の「平和的利益」を守るために中国隣国との良好な関係を構築することがより重要であるということだ。特にロシアに関しては、プーチン大統領が返り咲いている今、北方領土の問題をある程度まで解決させておくべきだろう。

――北方領土問題の打開策については…。

木村 北方領土問題では、1956年の日ソ国交回復時の宣言に基づき、1993年の東京宣言、1997年のクラスノヤルスク合意、1998年の川奈会談など色々な歴史を経て、現在は色丹島、歯舞群島の2島返還で引き分け論ということになっているが、色丹島と歯舞群島の2島合計面積と、択捉島、国後島の2島合計面積の比はおよそ1:13で、正確には7%にもならない。面積を均衡に分けるとなれば、色丹島、歯舞群島に国後島を加えて3島とすることで、ようやく択捉1島と匹敵する大きさになる。一方で、外務省は一貫して4島一括の返還請求を主張しているが、対中国戦略から早期決着が求められるこの問題においては、とりあえず面積が均等となる3島の返還を求め、いずれ択捉島も返還してもらうというような流れがベストだと考えている。今後、日本とロシアにおいてはシベリアにおけるガスパイプラインなど、経済活動面において協力をしていかなくてはならない。これは親日のプーチン政権だからこそ出来ることだ。今のうちにロシアとのパイプを大きくして作業を進めていくべきだろう。

――そのようなアイデアで具体的に動いている政治家はいるのか…。

木村 森喜郎元総理が2月下旬にロシアを訪問する予定だが、彼は面積等分論から「3島返還」に言及していると報道された。今回のロシア訪問でも柔軟な意見を伝えてくるのではないか。とにかく戦後67年たっても全く進展のないこの状況を打破しなくてはならない。北方領土問題において日本が色々な解決案を出し、領土保全を実行していく姿勢を見せれば、竹島や尖閣諸島問題についても波及していき領土に対して本気だということを示すことになる。そうすれば相手国も自ずと慎重になり、イ・ミョンバクのようにいたずらに竹島に行くようなことなど出来なくなるはずだ。今、日本に必要なのは、目的に向かって、具体的にひとつひとつのアイデアを積み上げていく実行力や突破力だ。そのためにも、国際的なネットワークを形成して、現地からの的確な情報を入手しなければならない。だが、最も重要なことは、責任主体を明確にして、政治を動かせる決定力を強化しない限り、何も出来ない。これが戦後の一番の問題だと思う。(了)