ラオス進出の魅力拡大

ラオス進出の魅力拡大

ラオス計画投資省・ラオス首相府
上級顧問
鈴木 基義 氏



聞き手 編集局長 島田一

――ラオス政府の顧問として、どのような活動をされているのか…。

鈴木 投資セミナーを通じて日本企業の誘致を行っているほか、依頼に応じて原稿などで情報を発信している。投資戦略の立案や法律の草案作成も私の仕事だ。ラオスの投資法や経済特区法は、実際に私がドラフトを書いたものだ。近隣諸国の制度を全て調査したうえで、日本企業の進出を促すことを念頭に作っており、このため日本からの投資の恩典はラオスがアジアで1番だと自負している。これを聞くと驚く人も多いが、カンボジアやミャンマーと比較しても優れていると断言できる。

――ラオスは人口が少ないため、労働者が集まりにくいという問題もある…。

鈴木 統計を見ると、1990年に350万人しかいかなかった人口は、年2.5%のペースで増加し、2006年には613万人となった。15歳から65歳までの労働人口はそのうちの約43%、289万人だ。推計では今後、人口は年2.2%のペースで増加し、2030年ごろには1000万人を超え、労働人口も毎年のように純増していく。私がラオスに進出している外国企業50社を対象に行った調査に基づくと、2006年から2010年までの5年間では、約10万人の雇用が生まれたのに対して労働人口は約35万人も増加した。これを見る限り、当面は労働コストが大幅に上がる心配はないだろう。タイのタクシン首相が2004年、労働局に登録を行った外国人不法滞在労働者に対して1年間の滞在と就労を認めるとの政令を出したところ、約18万人のラオス人が届け出たとのVoice of America (VOA)の報道もある。雇用機会が多く、賃金の高いタイに外国人労働者が流れている訳で、還元すればラオスは余剰の労働者を抱えているとを意味している。

――ラオスに工場を建てるにはどのようにすればよいのか…。

鈴木 ラオスの憲法では国家が土地の所有権を有しているが、土地の相続権・使用権・譲渡権が認められており、使用権は買い取って譲渡・貸与することが出来る。具体的には、民間が持っている土地を借りる方法と、政府や県から国有地を借りる2つの方法があり、どちらも実例は豊富だ。今まではジャパンクオリティーの経済特区(SEZ)が無かったため、我々が民間の土地を紹介していたが、日本企業専用の特区がサワンナケートという中部の県に出来たため、日本企業にとって安心して進出しやすくなるに違いない。プノンペンのSEZは2年間で260ヘクタールが完売するほどの人気を博したが、その理由は電力や水道などのインフラが整備され、高い環境水準を日本人マネージャーが責任を持って提供したからだ。これまでラオスは人口の少なさなどから過小評価されており、その水準に合致するSEZがなかった。しかし、ラオスでは電力や水道のコストはアジア一安く、労働争議が皆無のほか、識字率も高い。さらに、南北回廊が完成すれば地理的なネットワークも向上し、各国に対してさらにアクセスしやすくなるため、多くの企業の進出が期待できる。

――ラオスの賃金水準はどの程度か…。

鈴木 タイでは最低賃金法により、1月あたりの最低賃金が全国一律で300バーツ(約240ドル)となったが、ラオスの最低賃金はまだ約80ドルで3倍程度の差がある。しかし、実際には最低賃金で雇うことは出来ず、諸手当も勘案する必要があるが、その中には賞与や勤続手当、出産手当、教育費など、ラオスで支給されていないものがある。これを間接労務費として加算し、30社にインタビューを行ったところ、タイは1人あたり437ドル、ラオスは102ドルで約4倍の差にもなる。これを活かさない手は無い。

――タイとの賃金の差を生かす方策とは…。

鈴木 私は地域補完型工業化という国際分散立地を念頭においてビジネスモデルを提案している。ネットワークが繋がってこれからASEAN諸国が1つの市場になっていく際、すでにアッセンブリー工場(最終組み立て工場)があるタイとの住み分けを行うことが重要だ。ワイヤーハーネスを例に挙げれば、部品作成プロセスの前半は高度な技術が必要となりタイや中国でしか出来ないが、後半には比較的単純な作業もある。その後半の過程をラオスやカンボジアに移すと、生産費は安くなる。人件費の上昇により、中小の部品メーカーがタイやベトナムで生産を続けることは難しくなっているが、情報共有や意思疎通の観点からアッセンブリー工場の近くにいる必要がある。そこで、ラオスやカンボジアといった周辺諸国に生産を分散することで、相互に補い合うことが出来るというわけだ。

――しかしその場合、輸送のコストは…。

鈴木 労働コストに加え、電気代はタイの約半分、地代もほとんどかからない。これを活かせるビジネスモデルが出来れば、カンボジアやラオス、ミャンマーに進出する意味が企業にとって出てくる。縫製産業など人件費の割合が大きいものはどんどん周辺諸国に進出してきている。例えば、タイとラオスの間で往復のコンテナ輸送をした場合、税金を含めてコストは約2000ドル、輸出と輸入をコンテナの片荷で2往復した場合は約3400ドルかかる。先ほどのタイとラオスの賃金差が約330ドルなので、輸送費を人件費の差で割ると、片荷でもたった10人の労働者を移せば賄える計算だ。とあるラオスにある日本企業の例では、月2万ドルの輸送コストに対し、工場では約500名を雇用しており、1カ月あたり約1500万円、12カ月で約1億8000万円、賃金差による節約分が出る計算だ。やり方によっては、かなり大きい金額の儲けとなる。

――投資法については…。

鈴木 ラオスでは2009年に投資法が、2011年にはSEZ法が出来た。サワン・ジャパンSEZはまだ建設途上だが、今年中に20ヘクタール、来年に200ヘクタールが完成する予定だ。今後はSEZを中心に製造業を展開し、タイで働いている約50万人のラオス人を呼び戻し、雇用できる環境を作りたい。彼らがタイで稼いでいる給与から電気代・水道代、アパート、食費を差し引いたものと、ラオスでもらえる給与の差がもう少し縮まれば、きっと彼らは戻ってくるに違いない。ラオスにおける日本企業の投資は2012年の暦年で25社、合計73億円となり、既に年間60億円からの日本のODAを上回る規模となった。2013年も上半期だけで日本企業によって405億円の投資が行われている。これから開発されるSEZではさらにしっかりした環境が提供できるので、今後も日本からのラオス投資は増えていくと確信している。