被災復興のトップランナー

被災復興のトップランナー

仙台市長
奥山 恵美子 氏


聞き手 編集局長 島田一

――震災の復興が全く進んでいないという声も耳にするが、仙台市の復興状況は…。

奥山 仙台は被災復興のトップランナーと考えている。もちろん、被災者の方々の生活状況は千差万別で、例えば福島から避難されている方は、いつ地元に戻れるかもわからない状況であり、被災する前から何かしらの問題を抱えていらっしゃるご家庭では、震災によってその大変な状況がさらに増しているというケースもある。しかし、仙台市が昨年仮設住宅にお住まいの全世帯に戸別訪問調査を行った結果では、6割以上の方々が自立した生活が可能ということで、後はこの1~2年の間に建設される復興公営住宅や、防災集団移転先の宅地提供を待つだけという方が多かった。実際に仮設住宅の利用は平成24年3月の1万2000世帯をピークに、今では9000世帯にまで減少している。約25%の方がすでに生活再建をされて退居なさっているということだ。福祉的な手立てを含めた支援がどうしても必要だと思われる方は、3%程度と着実に少なくなっている。

――他の地域に比べて復興が早い理由は…。

奥山 仙台市は政令指定都市で、自治体としての組織が大きいということが一番の理由だ。特に、復興事業の核は震災廃棄物処理や復興公営住宅の建設などになるが、我々は普段から類似の事業を取り扱っているため、問題が起こりそうな箇所や発注書などの段取りがある程度予想出来、ビジョンを持って進めることが出来る。また、政令指定都市は直接国とやり取りすることが多いため、交渉事もスムーズに行うことが出来る。例えば国から求められる説明や書類の書式などについても大体予測がつくため、手続き作業に手間取ることはないのだが、政令都市以外の市の場合は国との直接の付き合いが少なく普段は県にお願いをしているため、国から書類を求められた時に、その書類が一体どのようなものなのかを勉強するところから始めなくてはならない。普段であればそういったことに付きっ切りでお世話をしてくれる県も、今回はあまりにも被災自治体の範囲が広いため県職員の手が回らない状態だ。そういった細かいことの積み重ねが工事発注の遅れや受注の遅れとなり、地域によって半年や1年という時間的差が生まれてくるのだと思う。

――いきなり過疎地に巨額の復興予算がついたために、資材や人件費が高騰して大変な状況にあるという声も聞くが…。

奥山 確かに復興予算の総額は見合い額としてつけられた部分はあると思うが、個別事業の予算については復興庁や財務省によって色々な細かい指摘がなされており、むしろ厳しすぎるというのが現場の各自治体の声だ。一方で、現場の工事がオーバーフロー状態にあるのは事実と言える。仙台市でもこの15年ほどで土木建設のキャパシティを極端に少なくしてきていた。そこに今回の震災で通年の10倍程度の工事量が発生している。これでは色々なものが高騰してしまうのも仕方が無いことだ。仮に復興に20年をかけていいというのであれば、キャパシティに合わせた発注をして、予算上もつじつまを合わせることが出来るのかもしれないが、自治体としては一刻も早い生活再建が最重要課題であり、そのために多少ヒートアップする部分は必要悪のようなものだと考えている。また、その高騰が東北からははるか離れた九州地方などからの業者参入を可能にしているという部分もある。工事費が上がらなければそういった地域から人材が来てくれるはずもなく、復興は細々と長い期間がかかってしまうことになる。

――まだ残っている作業はどのようなものなのか…。

奥山 壊れたビルなどの外壁工事や観光地の復旧は昨年の段階でほぼ終了し、沿岸の堤防も国の事業として第一線堤防が作られているところで、仙台地域に関してはほぼ完成している。残っているのは、被災地の住宅復旧と沿岸地帯の避難道路建設、そして避難タワーといった避難施設の建設などだ。例えば県道の隣には嵩上げ道路を作る予定で事業費も確保しているのだが、これは現在、地権者との用地交渉中だ。用地が確保できなければ設計も出来ないという状況ではあるが、来年度には着工できると見込んでいる。着工から完成までには5年程度かかりそうだが、しっかりと幅を確保し、強固な地盤のもとに新たな道路を作りたい。また、沿岸地域は海水によって塩漬けになった土地が約1860ヘクタールあったが、平成23年度中に560ヘクタール、24年度中に900ヘクタール、そして25年度中に最後の400ヘクタールの復旧を終え、足かけ3年ですべての農地の営農再開にこぎつけることが出来た。国から強力な支援をいただき大規模ほ場整備が出来たことで、今後の生産性はかなり高くなるのではないかと期待している。農林水産省からも様々な法人への支援をいただき、地元のハウス栽培や水耕栽培は以前にも増して盛んになり、また、サイゼリヤなどの企業がこの地を利用して新たなトマト栽培などに取り組んでいる。こういったことを着実に進めて「災い転じて」という流れにしていきたい。仙台市には、何か新しいことをやろうと考える人たちを支援してくれる農業関係の会社や農協などの力が大きい。それも復興のスピードが速い一つの理由ではないか。

――これからの仙台市のイメージは…。

奥山 仙台はもともと大規模な工場を誘致するような産業構造ではなく、第3次産業が主力だ。震災後の今、雇用の場を作り、就業者の数を増やしていくことはますます重要だと考えている。そこで、新しいことを始めたいと考えている人達を官民一緒になって応援しようと、起業を支援する取り組みを進めている。農業では6次化を含めた大規模化を進めて、65億円だった農業産出額を6次化も含めた農業販売額100億円まで伸ばしていくこと、また、観光事業では年間1800万人だった交流人口を年間2300万人までに増やしていくことを目標に掲げている。観光目標はかなり高いものだが、仙台空港をハブに秋田、山形、青森などにも足を延ばして楽しんでいただき、東北全体として北海道に勝る観光地にしていきたい。そのための主導的役割を仙台市が果たしていく必要がある。また、仙台市には県内外の被災地から移っていらした方も多く、仙台市の人口は震災前の105万人弱から今年1月には107万人に増えている。東北で被災された方が仕事を求めて東京にまで出て行くのはちょっと不安だが、仙台であれば大丈夫と思われるのだろう。東北全体の人口流出の堤防機能も担っているということになる。仙台がますます便利になるように、新たな展示施設も建設中だ。来年これが稼動すれば、今まで以上にコンベンションを誘致できると考えている。

――国に対する要望などは…。

奥山 制度的なことや予算的なことはある程度我々の希望をくんでいただいており、仙台市としては特に問題ないのだが、被災地全体として懸念されていることは、国からの復興財源に27年度までという期限がついていることだ。しかし、土地区画整備事業や再開発事業など、現時点で明らかに27年度には終わらないという事業もある。特に沿岸部にはそういった事業がまだまだたくさんあるため、例えば、現在設計中だが工事の発注は間に合わないというようなものに関しては28年度以降もきちんと予算化するといったような保証をいただきたい。国は「その時になったら何とかする」 と言っているが、自治体は保証がなければ動けない。せめて今の段階での保証をつくってもらいたい。(了)