債券市場は流動性が命

債券市場は流動性が命

日本相互証券
取締役社長
島津 正樹 氏


聞き手 編集局長 島田一

――今年で設立41年目を迎えるが、御社の強みは…。

島津 当社は国債の流通市場が実質的にスタートした1978年以降、業者間市場の参加者である証券会社のニーズに向き合い、試行錯誤を繰り返しながら、現在の当社独自の電子取引を中心とした取引モデルを構築してきた。電子取引導入後暫くは、全体の出来高に占める電子取引の割合が2~3割程度という状態であったと聞くが、スピーディな取引執行と様々な機能の利便性がお客様に受け入れられ、今では発注の9割以上が電子取引によって執行されており、電子取引が市場のいわゆる板の厚みにつながっていることは間違いない。この電子取引による債券の価格発見機能こそ当社の強みだ。一方、お客様のニーズに応じて、電子取引を介さないいわゆるオフ取引にも最近力を入れている。

――御社の役割は…。

島津 当社には「債券業者間の取引所機能を果たす」という使命があり、公正な価格形成と債券の流動性に貢献していくことが当社の役割だ。つまり当社は、民間会社ではあるが公的な役割を担っている会社であり、当局からもそのように位置づけられている。2年半前にシステム障害が発生した際には、お客様や関係者に多大なご迷惑をおかけしてしまった。取引所機能の中核であるシステムの安定運行は当社にとって最優先事項であると強く自覚している。また、かつては外資系の仲介業者や他業態からの参入や撤退、合併等が相次いだ時期もあったが、安心して取引が執行できる場として債券の流通市場に残り続けることも当社の重要な役割であると考えている。

――事業の核となるものは…。

島津 市場規模や発行残高の大きさを考えると、事業の柱はやはり国債取引の仲介機能だ。事業債も扱っているが、種類こそ多いが発行残高自体が少ないので取引量はあまり増えない。その他レポ取引も扱っている。そのような中で、当社の強みである価格発見機能を支える取引システムについては、今後も引き続き力を入れていくつもりで、年間経費のうち、約半分をシステム関連費用に充てている。電子取引の利便性・安定性を活かしつつ、そこに人を介する取引を加えながら流動性を高めていく方針だ。

――国債の流動性は低下してきているようだが…。

島津 私はかつて長く債券市場に携わってきたが、債券市場で一番重要なことは流動性だと考えている。そのため、新規の国債発行額の7割近くを日銀が購入することが前提になっているような、マーケットとしては特異な状況の中で、今後市場参加者が一層同じような目線で市場を見るようになっていくのではないかということを懸念している。私は債券市場というものは、プロ同士が自らの考えをぶつけ合い、大げさに言えば思想と思想のぶつけ合いによって創られていくもの、いくべきものと思っている。そのぶつかり合いこそがマーケットの深みや厚みとなって流動性を生み出していくからだ。同じ見方ばかりで、考える力や能動的に動く力が低下してしまっては、市場に厚みは生まれない。プロが中心の市場であっても想定外の事態は必ず起こるし、プロ中心であるが故に一方向に過度なストレスがかかる可能性もある。相場が一時的に一方向に大きく流れること自体は自然なことであるが、いかに早く市場が新たな均衡点、水準を自立的に見出せるようになるかということが、有事の際には非常に重要であり、そのためには十分な流動性が必要だと考えている。国債市場は資本市場の柱のひとつであり、仮に流動性が枯渇し、市場取引が機能不全に陥った場合の影響は計り知れない。この点については行政も強い問題意識を持ち、「国の債務管理のあり方懇談会」等の場で真剣な議論がなされているのは有意義なことだと思う。

――有価証券には流動性が何より大切だと…。

島津 私は若い時1980年代前半に、大和証券のロンドン支店で国債のトレーディングとユーロ債券のマーケットメイキングに携わっていた。ある時、大和証券が主幹事として扱った債券に売り物が重なり、在庫が膨れ上がり発行額の半分ほどになったことがあった。私は知己の海外の大手投資家に全額購入しないかと聞いてみた。彼にとってその金額自体は大きなものではなかったはずだが、彼は一定額を購入しこう言った。「確かにいい水準で全額購入に興味があるが、自分が発行額の5割を買ってしまったら、流動性がなくなり、この債券を殺してしまうことになる。私は、投資家としてマーケットに責任がある。」と。それは、投資家にも債券の流動性に対する責任があり、流動性は市場参加者全員で創っていくものという考えだった。以来、私は証券会社の立場として流動性の重要性をより意識するようになった。マーケットに対する流動性の供給は証券会社が中心となって担うべきものであるが、それだけでは不十分であり、マーケットは社会の公器として、発行体も投資家も業者間市場も、時には行政も一緒になって皆で作っていくべきものであると思っている。

――この会社での抱負や課題は…。

島津 設立当初は各証券会社から集められた人材が中心であったが、現在では実戦部隊はすべてプロパーとなり、若い人材も増え、流動性を高めるための積極的なアプローチにも力を入れてきた。私は昨年6月に就任して間もないが、社員達には、会社が社会で果たすべき役割意識と、自分たちが常にマーケットでのプロであるという自覚を持つことと、お客様に対して色々な面でお役に立てるよう常に自己研鑽することの重要性を伝えている。公的な性格を持つ存在であるからと安堵することなく、常に利便性を追及し、安定的なシステムを心がけて、これからも信頼していただけるような会社を作り上げていきたい。当社は業者間仲介業者として、債券の流動性向上に寄与することに、使命感と誇りを持っている。我々の出来ることは、利便性の向上やシステムの安定的運行など限られてはいるが、「いかに流動性の向上に寄与するか」ということを常に考えながら、少しでも市場関係者の皆様にお役にたてるように尽力していきたい。(了)