様々な事業で提携さらに強化

様々な事業で提携さらに強化

日本アセアンセンター
事務総長
大西 克邦 氏


聞き手 編集局長 島田一

――ASEANセンターの活動状況について…。

大西 昨年は日・ASEAN友好協力40周年ということで、当センターは昨年1月から今年2月末までに257の記念事業を行った。これは10年前の30周年時と比較して約3倍の数で、その多くは日本企業や地方自治体に向けたセミナーだ。全事業の3割以上にあたる91の事業を地方で行い、地方の方にもASEANのことをもっと理解していただこうと努めた。他方、ASEANの中には先進6カ国と後進4カ国で所得に10倍もの開きがあり、その発展ギャップを縮めていくことが現在のASEANの課題となっている。シンガポールやブルネイといった先進2カ国を除いても先進国と後進国では5.5対1という大きな所得差がある。これを解消するためにはCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の生産性を上げて競争力を高めていくことが必要であり、そのために我々の事業でもCLMVを対象とする事業を多く扱っている。来年のASEAN共同体設立にあたっても、この辺りが一番大きな課題になってくるだろう。

――ASEAN各国の製品を日本で広める活動も行っておられるが、その反応は…。

大西 食品展示会などを行うと、ベトナムの水産加工品やミャンマーの農産品などは特に評判が良い。また、先日の展示会ではある水産加工会社が今年国交樹立30周年を迎えるブルネイから総額4億円もの海老を購入すると聞いており、これはブルネイ国における石油・天然ガスおよびメタノール以外の輸出の中で最大の輸出ではないか。その他、ASEANの家具やジュエリー、衣類、雑貨などの展示会も行っているが、それらの製品には昔のような「安かろう、悪かろう」というイメージは全くない。日本の市場をクリアすれば世界の市場につながるということもあり、各国とも非常に質の高い製品を作り出している。もちろん、そこには日本からの技術提供が活かされているものもある。

――中国でバブル崩壊が懸念され経済に陰りが見え始める中で、来年ASEAN共同体が設立すれば、将来はASEAN全体のGDPが中国のGDPを上回る可能性もある…。

大西 当センターが設立された1981年当時、ASEAN全体と日本のGDPを比較すると約2対8だった。それが2012年には約3対7で、今では日本のGDPの約3分の1になっている。日本の企業が今後の海外進出先として選ぶ国としてもASEANは非常に人気が高く、少子高齢化で日本市場が縮小していく中で選ぶ次の投資先はASEAN以外に無いと答える経営者は多いと聞く。

――地方自治体や中小企業がASEANに寄せる期待とは…。

大西 例えば自治体主導で地元の中小企業を現地の視察に連れて行く時に、我々がお手伝いをするようなこともある。地理的な理由もあってか、北部よりも九州や四国、中国、関西といった南部の自治体の方がASEANに対する関心は強いようだ。視察団の参加企業数は最近特に増えはじめ、以前に比べて極めて真剣に投資を考えて視察に臨む企業が多くなってきたように感じる。安倍内閣では海外から日本へ投資を呼び込むための活動に注力されているようだが、一般的に日本とASEANでは技術の差が大きすぎるためASEANの企業を日本に迎え入れることは難しいのではないか。そう考えると、今後は日本とASEANの中小企業同士が交流を深めながら、日本の地場産業が持つ高度な技術力を最大限に活用して、一緒に何か新しいものを開発していくといった取り組みが面白いと感じている。すでにミャンマーやインドネシア、ブルネイなどで日本の独立系中小企業が韓国や台湾や香港の独立中小企業と協力して新たな投資を行うという動きもある。

――ASEANから日本への観光人口は昨年110万人となった。観光面での取り組みは…。

大西 ASEANから日本への観光人口は昨年はじめて100万人を超えた。その約半分はタイからの観光客だ。観光という面で我々が2年ほど前から力を入れているのは「ASEANからのムスリム観光客受け入れセミナー」で、食べ物や祈る場所など独特の習慣を持つムスリムの人たちが日本に観光に来て困らないように、日本全国の観光従事者に対してセミナーを行っている。こういった文化の違いへの対応については、地方自治体からのニーズが特に多く、これまで全国各地方で40回ほどセミナーを行った。また、フィリピン、インドネシアを合わせた約3億5000万人は2010年から2040年までが丁度人口ボーナス時期にあたり成長の促進要因となっている。対日感情も良く、今後の経済発展が期待出来るASEANの国の人達に、もっと日本に来てもらえるように我々としても力を尽くしたい。

――ASEANへの中国企業進出も目立っているようだが、日本が気をつける事は…。

大西 中国や韓国に日本が負けているところは意思決定のスピードだ。日本は会社の規模が大きく、経営陣も比較的年齢が高いという理由から仕方が無いのかもしれないが、ビジネスの世界においては判断の遅さが致命傷となって大事な仕事を失ってしまう事も大いにあり得る。これは改善すべき部分だと思う。

――来年はいよいよASEAN共同体が設立される。次のテーマは…。

大西 先ずは各プロジェクトを通じて、ジャカルタにあるASEAN事務局との協調関係をさらに密なものにしていきたい。幸い今の事務局長は我々と非常に近い関係にあり協調関係を強化していくには良いタイミングだと言えよう。具体的に今後力を入れていく事業はASEAN共同体の広報活動だったり、ASEAN共同体の本来の目的である外資獲得のための事業だったり様々だ。カンボジア、ラオス、ミャンマーについては当センターから現地に人材を派遣し、現地の人材育成や製品競争力向上のための協力を積極的に行っていくつもりだ。また、安倍内閣ではASEANを含む若者との交流を盛んにするという指針が掲げられているため、我々としても、今年は在日ASEAN留学生の就職支援事業や、若い経営者や女性経営者の交流の場を増やすための取り組みを本格的に進めていく。その他、アニメやゲームなどのコンテンツ産業に係る企業やクリエイターをネットワーク化してビジネスマッチングの機会を提供するような事業も実施する。コンテンツ産業のレベルはASEANでも確実に高くなっており、ビジネスにも繋がりやすいため、今年はこのネットワークをさらに拡大してASEAN側の企業を東京ゲームショーに招待したいとも考えている。日本の戦略産業の一つであるコンテンツ産業をASEAN10カ国としっかり提携しながら盛り上げていきたい。(了)