時代に応える国際人を育てる大学に

時代に応える国際人を育てる大学に

東洋学園大学
理事長
江澤 雄一 氏


聞き手 編集局長 島田一

――東洋学園大学の前身は…。

江澤 前身は東洋女子歯科医学専門学校といい、今から約88年前の1926年に設立された。女性の自立を促すことを目指し設立された歯科の専門学校で、約3000人の卒業生を輩出している。最後の卒業生は今80代となるが、現役女性歯科医師として活躍している人もいる。しかし、戦争で校舎も病院も全焼したため、戦後となる1950年に東洋女子短期大学として再び開設された。卒業生は約3万人で、英語教育に力を入れていたため、銀行や商社、航空会社に就職する者も多くいた。1992年4月に現在の東洋学園大学となり、男女共学化された。学生数は全体で2043人となっており、現在では男子学生が1205名、女子学生が838名(13年5月現在)と、男子学生の方が多くなっている。キャンパスは本郷と流山の2箇所にある。

――大学のアピールポイントは…。

江澤 目指す大学像として、「時代の変化に応える大学」「国際人を育てる大学」「面倒見のよい大学」という3本の柱をあげている。「時代の変化に応える大学」として、学生の教育にあたっては時代のニーズをふまえた教育を行う。「国際人を育てる大学」としては、語学だけでなく、国際教養を身につけ、様々な異文化にいかに寛容に接するかということを学ばせる。また、大学が比較的小規模であることから、「面倒見のよい大学」として、きめ細かい学生1人1人の個性を大事にした教育をする。先生と学生の距離が近く、教員と学生の比率をとると、だいたい学生10人に先生が1人いるということになる。また、卒業生の子弟や兄弟は入学金を免除していることも特徴だ。

――大学の部活動は…。

江澤 特にテニス部が活躍しており、女子のテニス部は関東リーグの2部に進出している。前回の入れ替え戦では敗れてしまったが、強豪校が集う1部入りを伺うレベルまできている。2部のなかでは、この9月に明治大学や青山学院大学に勝利した。男子のテニス部は3部に位置している。野球は、東京新大学野球連盟という新しいリーグに所属していて、現在2部で活躍している。

――大学の学長や教員は…。

江澤 学長は、現在は原田規梭子氏で英国演劇が専門だ。以前は、大蔵大臣など主要閣僚を歴任した愛知揆一氏や、旧経済企画庁のエコノミストだった宍戸寿雄氏が学長を務めたこともある。教員には、中国国内で拘束されて話題となったグローバル・コミュニケーション学部の朱建栄氏や、シカゴ大学の経済学者でノーベル経済学賞を受賞したベッカーの直弟子にあたる現代経営学部の鞍谷雅敏氏など様々な人間がいる。理事長の私は大蔵省(現財務省)で国際金融の仕事が長く、国際金融局長のあと、日本輸出入銀行(現国際協力銀行)を経て、外資系金融機関のJPモルガンやUBSに在籍し、内外のビジネス・カルチャーの違いを実感することができた。その経験からして、我が国が今後世界の中で生き残っていくには、自らの国際化を積極的に進めていくことが不可欠であると感じている。

――「国際人」というのはよく聞くが、なかでもこの大学の特徴は…。

江澤 どの学部に入っても、最低限の英語教育と教養教育を行うことを大事にしている。現在、グローバル・コミュニケーション学部、現代経営学部、人間科学部の3学部があるが、英語科目は英語教育開発センター、教養科目は教養教育センターという組織を学部横断的に設け、共通となる英語科目、教養科目を設定している。これは学生全員が必修として学ぶ。どの学部も最低限の英語力を身に付けさせる方針だ。その結果、入学時にはTOEICのスコアが300点台の学生が、4年生で930点になった例もある。

――英語教育での特色は…。

江澤 選抜された20~30名程度の学生に対し、「英語特別選抜クラス(ALPS)」という制度も設けている。学部共通の英語科目は大学1~2年までとなるが、選抜クラスの学生はネイティブスピーカーの先生から4年まで特別コースでの授業を受ける。さらに今年から、国際キャリアコースという新しいプログラムを立ち上げた。入学時に英検やTOEIC、TOEFLといった試験で一定以上の成績の学生に対し、国際キャリアプログラム(ICP)と称して英語での授業を受けさせる。東大から非常勤講師でネイティブの先生を招き、歴史や哲学などを英語で教えてもらうようにしている。このプログラムでは2年生の後半から海外大学の学部に留学をし、現地の学生と同じ授業を受けることも含まれている。アメリカなど海外では授業料が高く、本大学の学費と比べて200~300万円の差が出る場合もあるが、これを奨学金として大学が支援する。経営面では負担がかかるものの、1つの理想に向かって制度を組んでいる。卒業後、希望する学生にはもう一度海外の大学院やビジネススクールに留学して、修士号をとることも奨励する。

――経済や文化の国際化に対応し、教育も急速に変化する必要がある…。

江澤 本大学ではもともと英語教育や教養教育に力を入れているが、これからはすべての大学が重視するようになってくるのではないかと思っている。グローバリゼーションは、日本が変わらなくてはならないという点でチャレンジである一方、海外に出て行くことで発展の可能性や新しいビジネスの機会が出てくるという意味ではチャンスでもある。グローバル人材を育成しなければならないとする政府に対し、国内では冷めた見方もあり、海外に出て行くことをためらう学生もいる。しかし、日本は人口が減少するのに対し、世界には70億人の人口がいてさらに増えていくことから、生き残るためには海外に出て行くしかない。

――日本の大学は東大でも世界で23位といわれており、世界的な評価が低い…。

江澤 日本が世界に対し、追い付き追い越せとがんばってきた時代が終わり、新しい知見を切り開き、世界に貢献することが求められている時代になっている今、教育にも変化が求められている。単に出来上がった知識を吸収して学ぶというのではなく、自分の個性を活かして創造力を発揮できるようにする必要がある。大学も、いわゆるリベラルアーツ教育として、歴史や哲学、芸術を学んで視野が広がるように様々なジャンルの教養を学べるようにする。この点、東洋学園大学の教養教育では、人間理解、文化・芸術理解、社会理解、世界理解、現代の探求と5つの分野からピックアップして勉強できるようにしている。日本は経済的に豊かになり、知的分野でも技術的分野でも世界トップクラスのレベルに達している。このように名実ともに先進国の一員となった今、安倍内閣でも教育を1つの大事な柱として強化しなければならないと力を入れている。教える側も、知識を詰め込むのではなく、学生に自主的に勉強させるようにする。最近では、「アクティブラーニング」という教育法が注目されており、学生に意見を言わせたり、対話型の授業をしたりすることで、自分で考えて発言し、他者の意見とすり合わせるようなアプローチが出てきている。一朝一夕に成し遂げられることではないが、このような方向を目指して先生のスキルアップも図っている。

――学生の就職については…。

江澤 就職面では、大学側の努力も必要だが、企業側ももう少し変わってもらいたいと思う。新卒の一括採用みたいなやり方だけでは、バラエティーがあり個性的な人材を育てることはできない。留学や、ボランティア活動を行ったりした学生は一様に3月卒業ではない。少子化傾向のなか、採用した学生は「金の卵」になることから、1人1人の適性を見極めて通年採用でよい人がいれば採用するという形が望ましい。大学は学生の多様性とか個性、創造性を育てるようにしたいので、人事対応もフレキシブルに行ってもらいたい。企業のトップはフレキシブルな人材採用が必要という実感は持っておられると思うが、実際の人事担当の部署ではリスクを取りづらいのも現状だ。とはいえ、世界が変わるなか、日本企業も生き残るために必然的に変化していくだろう。

――今後の課題は…。

江澤 まず、本学の特色をもっとアピールして、たくさんの受験生に応募してもらいたい。応募が多ければ学生のレベルも高まっていく。各大学の都心回帰傾向から、本郷キャンパスの学部に志願する学生が多いものの、流山キャンパスも緑が多く、グラウンドもあり、先代からいろいろと思い入れのあるキャンパスになっている。このため、本郷と流山の2キャンパスをどの様に使い分けていくかも今後の課題だ。