アジア太平洋地域の安定に貢献

アジア太平洋地域の安定に貢献

衆議院議員
長島 昭久 氏


聞き手 編集局長 島田一

――国際関係が流動化してきている…。

長島 米国を中心として作り上げられてきたこれまでの国際秩序は現在、危機に直面している。その1つは第1次世界大戦の後に作られた中東の秩序だ。英仏がサイクス・ピコ協定により便宜的に国境線を引いたが、イスラム国はその国境を認めないと主張し、既存の秩序にチャレンジをしている。第2に、中国は尖閣諸島や南シナ海などアジア太平洋地域において、第2次世界大戦後のサンフランシスコ体制の打破に動いている。さらに、ロシアは欧米の影響力がポーランド、ウクライナと徐々に迫ってきたことを嫌い、クリミア半島は自分たちの勢力圏だと主張している。これらの根本原因を突き詰めると、全て米国の影響力が後退したことによるものだ。

――いよいよ米国の力が衰えてきたということか…。

長島 米国の力は決して衰退はしていない。人口は増加しているし、経済の規模でも引き続き世界一の大国だ。軍事力を見ても、毎年の国防費は中国の4倍の規模であり、そう簡単に逆転されることはないだろう。米国は力では衰えていないが、10年以上にわたるテロとの戦いを受け、国民は国際社会への関与を嫌っており、自らが責任を持って国際秩序を守っていこうという意思が失われている。加えて、米国の議会は非常に内向きで、米国のプレゼンスをこれまで支えていた軍事費も聖域なく削減する方向だ。オバマ大統領は決断ができない人物だとの批判もあるが、大統領個人の性格によるだけでなく、それは議会や国内世論を反映した姿でもある。

――そのなかで、日本の安全保障政策はどうあるべきか…。

長島 米国の関与が減少した分、アジア太平洋地域の秩序安定に誰が責任を持つかといえば、オーストラリアやインド、ベトナムではなく、やはり日本しかいない。自分の国は当然自分で守らねばならないが、のみならず地域全体の安定にも一定の役割を担うことが日本に期待されている。日本がまともにこれに取り組もうとすれば、多額の予算が必要となる。ただ、日本はこれまで自らの手足を縛ってきた。軍備をただやみくもに拡張するのではなく、その使い方について相当程度限定していたので、まずはこの法的な部分を開放しようというのが集団的自衛権の考え方だ。それでなお足りないのであれば、少しずつ防衛費を増加させていけばよい。野田政権では、7年連続の防衛費の減少に歯止めをかけ、その後の安倍政権では防衛費を4兆7000億円程度まで増やしている。日本のGDPは約500兆円であり、その1%にあたり5兆円を超える程度まで防衛費を増やせば、日本に求められる役割は大体果たせると見ている。

――集団的自衛権の行使を認めれば、イラク戦争のように他国の侵略戦争に巻き込まれる恐れもある…。

長島 そのような懸念があることは承知しており、まっとうな意見だと思う。私は現在、他の野党と共同で「安全保障基本法」を作ろうとしているが、その1番のポイントとして、自衛隊が動く範囲を限定し、他国の領土、領海、領空にその国の同意なく侵入し、集団的自衛権の行使としての武力行使を行わないと明記する。このように限界線を画せば、他国の侵略戦争に巻き込まれるとの懸念は全くあたらない。英国のように、米国と一緒に空爆行為を行うようなことはやらないし、私自身もやるべきではないと思っている。安倍首相も集団的自衛権は限界を画したうえで行使ができるようにしており、これならば現在の憲法の枠組みでも可能だ。また、同意なく相手の国に入らないとの限界を画したうえで、それ以外は全て可能にするというネガティブリストにすることが重要だ。

――中国や韓国は、日米両国の間を裂こうと画策している…。

長島 中国による日本孤立化作戦は決して成功しておらず、現状ではむしろ中国の方が国際社会で孤立を強めている。中国には外交戦略があるように見えるが、ベトナムに続き、フィリピン、日本を次々と敵に回し、戦術的には失敗を繰り返している。彼らに擦り寄っているのは韓国やラオス、カンボジア程度であり、ロシアや米国も中国を警戒している。日本が尖閣諸島を国有化して以来、中国は日本が戦後秩序に挑戦していると喧伝しているが、戦後のサンフランシスコ体制に挑戦しているのは日本ではなくて中国だ。この点に対する米国の理解もだんだん深まってきた。

――尖閣諸島について、国際司法裁判所で中国側の主張が認められる可能性はあるか…。

長島 尖閣諸島に関する日本の主張は国際法的にはほぼ完璧だ。日本は1895年、近代国際法に基づき、無主地先占と言って誰も支配をしてない事を確認したうえで、領有を宣言した。中国は1971年に思い出したように突如領有権を主張し始めたが、その間の76年間は中国を含めどの国も領有権を主張してこなかった。これは非常に重要な事実だ。中国は清や明、元の時代に遡って歴史を紐解いているが、この主張は近代国際法に基づいた裁判では無理があり、そんなに心配はしていない。ただ、この問題は日本からは国際司法裁判所にもって行く必要はない。裁判は現状に不満があるほうが訴えるものであり、中国が国際司法裁判所に提訴するならいつでも受けて立ちますよ、と言っておけばよい。

――インターネット上の国際世論では、中国側の主張が優勢となっていないか…。

長島 世界人口の約4分の1は中国人が占めているわけであり、確かに国際世論では力を持っている。例えば2012年9月の尖閣国有化の後、中国が各国の首都の大使に対し、世論戦を仕掛けさせた。メジャーな新聞等に大使の名前付きで自らの主張を載せ、それに対して日本が反撃するという流れが続いた。一巡して思うのは、やはり中国の主張と日本の主張を比較すれば、格段の違いがあるということだ。嘘も百篇いえば真実になるという中国に対し、日本が真実を繰り返し述べて行けば、当然信ぴょう性が違ってくる。中国では司法で戦う法律戦、国際世論に訴える世論戦、ブラフをかける心理戦を「三戦」と称しており、これに約8000億円の予算を掛けていると言われている、方や、日本は長らく数10億円といったレベルに止まっていた。日本は当初、後手に回ってかなりばたついたが、安倍政権のもとで関連予算を数百億にまで増加させようとしている。中国はかなり無理筋の話を通そうとしており、多額の予算が必要となろう。ただ、日本は相当説得力のある、正当な主張を行っており、中国ほどの予算を使わずとも世論戦で負けることはないはずだ。

――尖閣諸島の領有権を巡り、日中間で軍事衝突が発生する恐れは…。

長島 中国もそこまで愚かではないので、そう簡単には武力で訴えてくることはないだろう。尖閣諸島や南シナ海にちょっかいを出しているのは人民解放軍ではなく、日本で言えば海上保安庁にあたる、海上警備組織だ。軍事力ではない際どい部分で、聡く行動している。日本がこれに対して自衛隊で対応すれば過剰反応となるため、国際社会では容認されない。中国は慎重の上に慎重を期す国で、まずは相手を挑発し、手を出してきたら反撃するとの方法を常にとって来た国だ。

――日中間で戦争が勃発する可能性は低いということか…。

長島 戦争が起こるか起こらないかというより、むしろ中国が軍事力を背景として自らの要求を強要していくことに注意が必要だ。日本もうかうかしていると、ベトナムやフィリピンの例のように、尖閣に対する要求を呑まされてしまうかもしれない。戦争に至らない状況のなかで、どう中国の要求をはねつけて行くだけの国家としての意思を持つかが重要であり、それには日米同盟の実効性を担保していくかポイントとなる。幸いなことに、オバマ大統領が4月に来日した際、尖閣については日米安保条約第5条を適用する、つまり仮に中国が武力を行使してきたら、自動的に米国も応じることを大統領レベルで宣言した。実現されなければ米国の沽券にも関わるため、この言葉は額面どおりに受け取ってもよいだろう。武力行使を抜きに様々なことを要求してきた際に、まず自分の国は自分で守る体制を作れるかどうかが重要なポイントであり、日米間で磐石な協力関係を構築していかねばならない。