世界中が親日国家

世界中が親日国家

ジャーナリスト
井上 和彦 氏


聞き手 編集局長 島田一

――日本の外交をどう思うか…。

井上 多くの日本の政治家は、外交の本来目的を理解できていないように思われる。中国や韓国との関係について、何の策略もなく手放しで「隣国同士仲良くすべき」と主張する者が多いが、国際的にみれば、本来、隣国と仲が悪いのは当たり前だ。例えばイギリスとフランス、フランスとドイツ、ノルウェーとスウェーデンなどは長らく対立してきた関係であり、無邪気な友好関係など存在していない。それどころか、最近ではスペインやイギリスの例のように、一つの国の中でも分裂の動きが見られるほどであり、国際社会の現実においては「みんな仲良く」などといったお題目は通用しない。

――外交のあるべき形とは…。

井上 外交の本来目的は、ごく簡単に言ってしまえば互いに利害が対立しあう現実の中で、「大人の関係」を作るということだ。経済関係で互いに実利を追求するために話し合って協力し、また利害の対立があっても戦争だけは回避しようと知恵を出し合うのが外交の目的だ。理想的な外交関係の例としては、日本と台湾が挙げられる。両国間には国交がないものの、経済交流が活発に行われており、互いの国民感情は親日・親台とすこぶる良い。日台関係は、「隣国同士なのに仲が良い」という世界でも珍しい事例だ。両国の意思疎通は極めて良く、例えば、以前、与那国島上空が日本と台湾の防空識別圏の境界になっていた時期があったが、日本側と台湾側と話し合った結果、防空識別圏を動かす形で決着した。このような相互利益実現のための理性的な関係こそ、あるべき外交といえる。一部の親中・親韓派の日本の政治家のように戦略もなく「まず仲良くしよう」というのは、全く外交の本質を理解していないといわざるをえないし、世界の笑いものだ。

――安倍政権の外交をどう見るか…。

井上 戦後初めて、本来あるべき外交を展開していると評価している。これは安倍首相が、国のリーダーとして国家安全保障に深くコミットしているからだ。安倍首相は歴史に深い造詣を持っており、それを活かして各国首脳との関係を深めている。安倍首相は、互いに快哉を呼ぶテーマを取り上げて互いを称え合う素晴らしい外交を展開しているのだ。例えばオーストラリアとの外交では、安倍首相は第一次世界大戦の折に欧州戦線へと向かうオーストラリアの輸送船団を日本海軍が護衛したエピソードをとりあげ、両国の関係強化に努めた。このような見事な外交術は他国に対しても行なわれており、特に対ロシアではそれが顕著だ。プーチン大統領の安倍氏への態度を見れば一目瞭然だが、今だかつてロシア側とあそこまで深い関係を構築した日本の指導者はいないといっていい。その外交センスは、吉田茂や佐藤栄作といった歴代首相らを凌駕している。中国の習近平主席や韓国の朴槿惠大統領が安倍首相に露骨に厳しい態度をとっているのは、明らかに安倍外交への焦りの裏返しだ。

――日本は他国にどう思われているのか…。

井上 日本人は、実は世界は親日国家だらけであることを知るべきだ。実際に世界各地に行ってみるとそのことがよく分かる。東南アジア諸国やインドは、日本のおかげで第二次世界大戦後に独立できたと感謝しているし、また、日本が第一次世界大戦の戦勝国であったという認識をもつ国も少なくない。例えば遠く離れたマルタ共和国には、第一次世界大戦の折、英国、フランス、イタリアなどの船団護衛を行った大日本帝国海軍の戦死者の墓地があり、いまも英国やフランスなどかその英雄的行為が高く評価している。はっきり言って、世界で日本を嫌っている国は中国と韓国ぐらいだ。ロシアでさえ、中国と韓国のように反日教育は行っておらず、歴史認識など問題にはならない。実際、私が出会ったあるロシア人は、日露戦争で日本が勝利したことを、「ナポレオンもヒットラーもなし得なかったことを日本はやった」と話していたほどだ。彼に限らず、ロシアには日本に憧れを持っている人々がすこぶる多い。

――途上国の日本像は…。

井上 数多い援助国の中でも、日本の援助はとりわけ歓迎されている。これは日本には信頼があり、また他意がない綺麗な援助を行ってきた実績があるからだ。日本はこれまで、現在中国が西アフリカでやっているように、途上国の人々の顔を札束で叩くような品位のないことはしてこなかった。そのため多くの途上国が中国資本や労働力の流入よりも、日本との結びつきを深めたいと考えているのが実態だ。「経済侵略」などという表現もあるが、恐らくこれは日本の進出を懸念する中国や韓国が言い出したことだろう。

――第二次世界大戦の遺恨はないのか…。

井上 第二次世界大戦の問題は、ある意味で戦後日本の政治経済外交のくびきになってきたのは確かだ。しかし、重要なのは、第二次世界大戦で日本に侵略されたと思っている国はほぼ存在しないことだ。例えばインドネシアの独立宣言の日付は「05年8月17日」とされているが、これは皇紀2605年を意味している。もしインドネシアが日本に侵略されたと思っているのなら、皇紀など使うはずがない。インドでは2008年に「東条英機を語る夕べ」という会合が催され、孫娘の東條由布子氏が招待されたほどだ。はっきり言って、戦前の日本を口汚く罵るのは中国や韓国だけであり、両国が殊更侵略を強調しているのは、それを外交的ツールと活用しているだけのことだ。かのマッカーサー元帥ですら、戦後の米上院軍事外交委員会でも日本の戦争は自衛戦争であることを明確に証言している。そもそも中国が持ち出すいわゆる”歴史問題”の本質は、単純に日本を屈服させる手段としてではなく、中国の人権問題を批判するアメリカを牽制し、さらには日米関係を揺さぶる目的で”日本の戦争責任の追及”なるものを演出している側面がある。

――例えば靖国問題を巡る日米の緊張がある…。

井上 まさにその通りだ。安倍首相の靖国参拝に対し、米国側が「失望した」と声明したことで一時日米関係に暗雲が立ち込めたのは、中国の思う壺だった。オバマ大統領は中国の思惑が分からず、みすみす乗せられてしまった形で、米国内でもオバマ氏への批判の声が上がった。そもそも、これまで米国は、実は自身が東京大空襲や広島長崎への原爆投下といった「人道に対する罪」を重ねてきたことをわかっており、それゆえにいわゆる”靖国問題”についても沈黙を保ってきた。だから日本の保守層も対米批判を控えてきた。オバマ政権の「失望」発言はその均衡を崩したものであり、保守層の激しい反応を招くことになった。また、中国は米国が自国の人権問題を批判する対抗策としても、靖国カードを利用している。

――中国をどう考えるべきか…。

井上 拡張主義的な性格は明らかであり、警戒を強めるべきだ。例えば尖閣諸島については、彼らの狙いは中国から遠く離れた経済的合理性のない漁場の確保が目的ではなく、潜水艦航行のための海洋調査が目的と考えられる。最近話題の中国漁船らによるサンゴの違法採取についても、本当の狙いは海洋調査にあるとみている。偽商品が横行する中国がわざわざ本物のサンゴをそこまで希求するとは考えにくく、またあの海域は中国から遠く、漁船らのリスクも大きいからだ。集会を嫌う中国政府があの規模の船団を許すのも不自然であり、少なくともあの中の数隻は海底調査をしていたはずだ。あの国は本当にしたたかであり、油断してはいけない。例えばフィリピンとの関係では、南シナ海における領土問題で対立すると、中国は、フィリピンへの観光客を足止めし、フィリピンの主要輸出品であるバナナの輸入を止めると脅しをかけてフィリピンを屈服させたことがあった。まったく同じことが日本に対しても行われている。尖閣諸島沖の漁船衝突事故の直後、中国がレアアースの対日輸出を制限し、中国人観光客を足止めして日本に揺さぶりをかけてきたことは記憶に新しい。中国が外交・安全保障政策の一環として、経済を利用しようとしていることは十分に意識するべきだ。