歳出削減のために組織作り

歳出削減のために組織作り

自由民主党
政務調査会財務金融部会長
衆議院議員
柴山 昌彦 氏



聞き手 編集局長 島田一

――自民党内で財政再建を議論する新たな組織ができた…。

柴山 政調会長の特命委員会という形で、自民党内に「財政再建に関する特命委員会」(座長:塩谷立政調会長代行)が設立され、2月5日には初回会合が開催された。日本の債務残高は諸外国に例を見ない水準まで累増し、未来の若者に対する非常に大きな負担になっている。いわば「財政的次世代虐待」とも言えるべきこの状況を鑑み、世代間の公平性と財政の持続可能性を確保し、国債への信頼をしっかり守っていくため、中期的な視点に立って財政全般について改革の施策を検討することが特命委員会の設立趣旨だ。社会保障を含め聖域を設けることなく、歳出・歳入全般にわたって総合的かつ具体的な検討を行い、6月を目途に検討結果を取りまとめ、政府の施策に反映させていきたいと考えている。

――経済成長による税収増を目指すか、歳出削減を優先するか、2つの考え方がある…。

柴山 経済成長については、経済財政諮問会議の中で安倍首相も大変重きを置いている。消費増税の延期、法人実行税率の引き下げは財政的には若干マイナスのように見えるが、これによる経済成長が見込めるという点で、中期的には財政にプラスに働く。リフレ政策により経済成長を目指すことは現在の政権にとって大きなテーマとなっており、私もこの方針には賛成だ。一方、ストックベースで債務残高の対GDP比のみを維持していれば、財政赤字が増加しても増えてよいとの考えを取ることは決して出来ない。2015年におけるプライマリーバランス赤字半減目標は達成できる見通しだが、2020年度のプライマリーバランス均衡目標も達成できるよう努力を進めていく必要がある。そのうえで、経済成長を損ねないようにすることが極めて重要だ。

――安倍政権でどこまで歳出が削減できるかを不安視する向きもある…。

柴山 我々の目が黒いうちには、成長戦略のみで歳出削減が滞るような事態にはさせない。また、プライマリーバランスの黒字化目標達成を甘い形で推計することも許されない。内閣府は中長期の財政試算を示しているが、これに対し河野太郎衆議院議員が本部長を務める党の行政改革推進本部では、試算の前提となる経済成長率や税収弾性値等が本当に達成できるのか懸念している。黒字化にはどの程度の歳出削減が必要かを算出するためには、現実的な数字に基づき、かつ法人減税・消費増税先送りの影響も織り込んで固めのシナリオを前提とする必要がある。

――歳出削減の実行をどのように担保していくか…。

柴山 自民党内には各省庁に対応する部会があるが、例えば厚生労働部会には厚生労働族の議員が、文部科学部会には文部科学族の議員が集まり、それぞれ予算を出せと要求するが、削減しろという声は出てこない。自民党内には無駄撲滅プロジェクトチームが発足したが、個別の事業について事業仕分けをするにとどまっている。そこで、単発ではなく、トータルとして徹底した歳出改革を行うための仕組みを作ろうということも提案をした。まず試算を作ったうえで、必要な歳出削減を担保するため、党内での組織を作っていく。

――歳出削減に向けた具体的な方策は…。

柴山 財政再建に関する特命委員会では、歳出改革においては聖域を設けないことを基本方針として決めている。政府は介護報酬を抑制していくとの方針を示しているが、高齢化に伴い社会保障費が急速に増加していくなか、医療分野については例えばジェネリックの利用拡大や、マイナンバー制度を用いた病歴の把握など、しっかりとした改革を行っていくことが求められるだろう。また自民党内には国土強靱化を旗印に掲げ、財政出動なくして国民の安心安全は守れず、経済も回復しないとの声もある。これに対しては、費用対効果と優先順位をきちんと見極めたうえで、進めるべきは進めるとのスタンスを堅持できるかどうかがポイントとなるだろう。大胆な歳出カットを行った小泉政権の政策は失敗だったとの意見もあるが、ドイツや英国など他国では徹底した改革を行っている。他国の事例も参考にしつつ、政治的な覚悟を持って改革を進めていかねばならない。

――予算を獲得した人間が評価されるという、官公庁の人事慣行も問題ではないか…。

柴山 指摘の通り、今後は役所の人事評価のあり方も大きな問題として扱っていくべきだ。行政管理・行政改革を所管する総務省で副大臣を務めた経験からも、同じリソースを使ってより高いパフォーマンスを上げることに対する人事評価をうまく導入していくことが重要だ。公務員制度改革では一定程度の前進を見たが、今後は公務員制度、人件費のあり方についても改革を進めていく必要がある。

――財政再建に関する特命委員会での今後の取り組みは…。

柴山 6月に発表を予定している特命委員会の提言を、説得力のある内容にできるかどうかが大きなポイントだ。歳出削減の具体的な項目を挙げられるかどうかを含め、仲間の委員たちともしっかり議論をしていきたい。また、自民党内には規制改革についての会議があり、ここで私も農協改革の議論に参加していたが、JA全中を70年ぶりに一般社団法人にする改革を政治主導で達成することが出来た。今回は聖域なき改革ということで、困難も予想されるが、今こそ歳出削減に取り組まなければならない。