米の最先端企業はナスダック上場

米の最先端企業はナスダック上場

ナスダック
ナスダック駐日代表
杉原 幹郎 氏


聞き手 編集局長 島田一

――ナスダックはベンチャー企業が上場するというイメージだが…。

杉原 ナスダックはすでに、以前からベンチャー企業のみが上場する市場ではなくなっている。ナスダックには現在、米国内で最大級の時価総額を誇るアップルを始め、マイクロソフト、インテル、イーベイ、アマゾン、フェイスブック、といった新しい世代を代表する大企業がこぞって上場していることは周知の事実だろう。もちろん、ベンチャー企業に対しても広く門戸を開いており、ウェアラブルカメラの先駆者であるゴープロや、やはり電気自動車の先駆者であるテスラモーターズなど、まさにベンチャーからスタートして短期間に急成長している企業も数多く上場している。従ってナスダックをベンチャー企業のための市場と捉えることは大きな認識違いと言わざるを得ない。ナスダックは、規模を問わず、常に成長と革新を目指す企業のための市場と考えていただきたい。いずれも社名を聞いただけでわくわくするような会社が上場している。

――ナスダックからニューヨーク市場へ上場しようということはないのか…。

杉原 ナスダックは技術の革新性に裏打ちされた新しいビジネスモデルで社会の最先端を走る企業が上場する市場、というブランドを確立している。そのため、ナスダックに上場するというブランド価値を理解して上場している企業であれば、わざわざニューヨーク市場に上場変更をすることは考えにくい。世界各国には数多くの証券市場が存在するが、その市場に上場していることが企業そのものに成長と革新性というイメージを与える唯一の市場がナスダックだ。ナスダックに上場している企業を見ていただければこういったナスダックのブランド・イメージをわかっていただけると思う。実際、日本以外の欧米、アジアにおいては既に、こういったナスダックのブランド・イメージは企業間に広く浸透している。

――東京にも以前ナスダック市場があった…。

杉原 2000年にナスダック・ジャパンを設立し、日本からもベンチャー企業をアメリカのナスダックに誘致しようという動きがあった。ただ、時期尚早ということと手続き等の面で準備不足だったこともあり、わずか2年で撤退している。その後しばらくの間、日本の経済停滞と中国を中心としたアジア諸国の企業の台頭から、日本に対するナスダックの経営戦略上の優先度は低くなっていた。しかし、2008年からナスダックのもう一つの事業の柱であるテクノロジー部門で、東京工業品取引所(現 東京商品取引所)や大阪証券取引所(現 大阪取引所)に、相次いで売買システムや清算システム等の導入を決めていただき、そういったテクノロジー部門のビジネス展開と並行して日本企業に対するナスダック上場ビジネスも再開し、現在に至っている。

――日本の企業がナスダックへ上場するメリットは…。

杉原 海外上場には大きく分けて二つある。一つは二重上場という、いわゆる東証に上場している企業がナスダックやニューヨーク、香港やシンガポールなどの外国取引所へ上場するケースと、未上場企業の外国取引所への直接上場だ。外国取引所との二重上場は80年代以降、盛んだったが、2000年代に入って、日本経済の停滞に伴うビジネス環境の悪化から、特に費用対効果の面で海外上場のメリットが薄いということで外国取引所からの撤退が続いた。過去には海外での知名度を上げるため、といった漠然とした目的のために海外上場を行う企業が多かったが、これが海外上場からの撤退が相次いだ理由と考えている。しかし、我々としては、海外上場は経営レベルの確固たるコミットメントと戦略があれば、それに見合う効果が必ず得られると確信している。そういった中で、日本でも昨年、スチュアードシップ・コードを導入、今年の年央にはガバナンス・コードも導入され、投資家と企業双方がコミュニケーションを取りながら企業価値向上を目指すことが求められるようになる。こういった体制を早くから確立しているのが米国市場であり、米国市場、ナスダック市場へ上場することによって米国の投資家との対話を経験し、企業経営に活用していくことも上場メリットの一つと考えられる。日本の企業を訪問していると、まだIR部門を十分活用していないのではないかといった印象を受けることがある。企業のIR部門は、投資家との対話を深め、新たな投資家へアプローチし、会社の正当な価値を正確に判断してもらうための潤沢な情報を提供する役割を果たす、重要な戦略部門の一つだと思う。ナスダックはテクノロジー部門に属するサービスとして、数多くのIRサポート・ツールを用意し、ナスダック上場企業に提供しているが、これも上場市場としてナスダックが選ばれる重要なファクターになっている。

――ベンチャーではUBICが一昨年上場した…。

杉原 一昨年にマザーズ上場のUBICに、日本企業としては実に14年ぶりにナスダックへ上場していただいた。UBICの上場がきっかけで、日本企業の中に改めてナスダックへの興味が高まって来ており、ベンチャー企業を中心に様々な企業からのナスダック上場への問い合わせが増加している。以前の海外上場ブームと異なる点は、各企業が、規模を問わず、成長戦略と海外事業展開の戦略をしっかりと確立しており、ナスダック上場も、その戦略の中の一つとしてビルトインされているところだ。国内上場を飛び越えてナスダックへ直接上場を志向している企業も数多くあることに嬉しい驚きを感じる。

――アメリカはニューヨーク市場とナスダック市場があるが、東証・大証は合併した…。

杉原 東証・大証は日本取引所グループとなり、規模から見て事実上、日本で唯一の上場市場を運営する、自らも上場する”企業”になったが、”企業”としての成長を見据え、数多くの成長戦略に取り組んでおり、今後の動きは非常に興味深く、ナスダックとしても様々な面で協力して行きたいと思っている。ただ、米国と異なる点は、上場もビジネスであり、ビジネスは競争原理によって全体が発展するもので、中からのプレッシャーに加え、当然ながら外部からのプレッシャーも必要ではないか。米国で我々ナスダックは、上場ビジネスにおいてニューヨーク証券取引所と熾烈な競争を繰り広げており、フェイスブックやアリババなどの上場を巡る二市場間の競争は日本でも大きく報道されていたとおりだ。