GPIFの組織の早急な見直しを

GPIFの組織の早急な見直しを

衆議院議員
維新の党
木内 孝胤 氏


聞き手 編集局長 島田一

――先の予算委員会で年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)について質問した…。

木内 3月の予算委員会では、結果を承知で理事の資産運用経験について質問した。数年来指摘されてきているが、GPIFでは世界最大規模の130兆円の資産を運用するにもかかわらず、資産運用経験がない理事長と理事の2役員で構成されている。理事はプライベート・エクイティ分野での投資経験が豊富だが、130兆円規模の資産運用で求められる経験はまた異なるものだ。一方、運用委員会には7名(14年12月現在)の委員がおり、うち数名は運用経験を持っている。メンバーは、企業の出身者、連合の出身者、学者などバランスが考慮されているかもしれないが、基本的に年10回程度の運用委員会で重要な決定をしてしまう点で問題がある。また、GPIFは14年10月末に基本ポートフォリオを変更したが、これは投資全体で最も重要な決定事項であり、一般的にリスクが極めて低い安全資産である国債の比率を大幅に下げて本当によいのかという疑問がある。

――GPIFの運用情報の管理については…。

木内 基本ポートフォリオを変更し、株式比率を高めることが、公表前に何回もメディアに漏れている。これはある意味、政府側が意図的に漏らしている部分もある。株式比率を高めるという情報が報道されれば、当然株高になるため、選挙対策にもつながるためだ。また、国内債券の比率を引き下げるとなると、理論上は国債を30兆円程度売らなければならないが、同日に日銀が金融緩和を行い、国債買い取りを30兆円増やすと発表した。この結果、発表後に株価が大幅に上昇した。その後に安倍首相は衆議院解散を宣言しており、株価がまるで政府の打ち出の小槌になっている。

――政府の施策により株価がつり上げられている…。

木内 株価上昇によって資産構成割合に占める株の割合が大きくなったように見えるが、実際は株式比率を高めることが報道され、基本ポートフォリオの変更が発表された後で株を買い増している。株式比率を高めるのであれば、株を粛々と買い増せばよいものの、これでは事前に自ら株価をつり上げておいて高値づかみしているのと同じことになる。この点で国民の大きな不利益につながっていることも大問題だ。具体的な損失を検証することは難しいが、明らかな失態といっても良い。GPIFは内部統制の強化を掲げているが、政府介入の様な形で株価が上がるのは、コンプライアンスの観点からも望ましくない。一方、独立行政法人という組織形態を継続し、政府にとっては官邸に近しい人物が投入されていることで、組織防衛がある意味出来ているといえる。国民にとっては、こうした様々な問題を抱えている体制が維持されている点も大問題だ。

――インサイダーまがいの取引が行われる懸念もある…。

木内 運用比率の公表の前に政治家やそのタニマチがインデックスファンドを買えば、個別銘柄が対象ではないのでインサイダー取引にはあたらないが、悪質といえるだろう。事前に聞いて日本株のロング・ポジションを取ることもできる。個別銘柄であっても、流動性が高い大型銘柄であれば、普段から取引しているというので説明が付き、インサイダー取引かどうか実証しづらくなる。また、株式の運用比率の大幅な増加自体についても、デフレから脱却し、インフレに向かうので債券の価値が下がるかもしれないと、もっともらしく言われているが、国民の資産を債券から株式に大幅な変えたことへの説明としては不十分だ。GPIFが株式比率を上げたことについての合理的な説明とはいえない。

――運用比率の見直しが政治的であると…。

木内 我々は民主党が指摘しているように、株式はボラティリティが高くハイリスクだから良くないと主張するつもりはない。また、政府は現政権になってから時価総額が25兆円程度増加したとする一方、リーマン・ショック時には2年間で15兆円程度減少していたことを勘案するとアベノミクスの大きな手柄とも言い難い。我々の主張はあくまでも、株式比率を増加させるなど、基本ポートフォリオの変更を判断するメンバーは最良のチームを組んでほしいということだ。既に問題点が指摘されている組織に任せているポートフォリオに自信が持てない。

――今の組織自体に問題があると…。

木内 GPIFは厚生労働省の管轄、国家公務員共済組合連合会は財務省、地方公務員共済組合連合会は総務省、日本私立学校振興・共済事業団は文部科学省と、それぞれ同様の組織がある。管理コスト削減などから、4組織を統合しないのかという質問をしてもはっきりとした回答が得られない。これは、天下りポストがそれだけ確保できるうえ、運用手数料の分配を考えれば妙味も得られるためだ。

――為替の影響は…。

木内 ドル建てやユーロ建ての株式、債券への投資を増やしていたポートフォリオが、円高に戻ると逆効果になってしまう。円安が行きすぎた場合に適度な水準に戻す調整をするのは良いが、大幅に外貨への運用へと切り替えた場合、為替による影響をどうカバーするのかという観点も不足している。

――維新の党としての具体的な解決策は…。

木内 見識のあるメンバーをきちんと選び、明確な権限と責任を持たせることだ。例えば、日銀審議委員のように7~8名程度の理事を選任し、理事長の下合議制で決めるチームを作ることなどが考えられる。こうすれば、株式比率を急激に引き上げるような変更は出来ないはずだ。基本ポートフォリオの変更は、9回の会議のみで決めるものでもなく、もともと慎重に目配せをしながら、効率的にやるべきことだ。任せる場合の目標設定、ベンチマークが明らかになっていれば、それに合わせてアクティブとパッシブの比率も自ずと決まってくる。また、目標に沿っていれば新興国の株式、債券に投資することも出来る。130兆円と資産規模が大きいことから、複利計算で考えると運用利回りによってだいぶ差が出てくる。あとは、国民への説明責任、コンセンサスの取り方も考えていく必要がある。責任が曖昧なまま運用出来るということは、ガバナンスの観点からは恥ずべき状況だ。既にガバナンスなどについて、提言はいくつか出ているので、後は実践できるかが問題だ。このため、政府、与党として早急に組織の見直しを行うべきだと考えている。