20年には訪日客数3000万人

20年には訪日客数3000万人

自由民主党
観光立国調査会長 衆議院議員
山本 幸三 氏



聞き手 編集局長 島田一

――日本の観光サービス業の現状をどう見ているか…。

山本 日本の大学教育はドイツのシステムを採用したこともあり、哲学的な分野が重要視されている一方、ホテルスクールなど実学的な部分はあまり重んじられていない。結局、日本のホテル関連の教育は、専門学校等での技術的なレベルのものにとどまっている。一方、世界最高水準のホテル教育を行っている米国のコーネル大学では、在庫の効かない財を提供するのがサービス業であり、サービスはタイミングが全てであるということから始まり、テルホスピタリティ業が体系立てた形で教えられている。日本では、客の表情等を見ながらいいサービスを提供している旅館の女将もいるが、それはあくまで個人のレベルにとどまっている。つまりマニュアル化されていないので、その女将がいなくなるとサービスの水準が維持できなくなる。日本のサービス業は「おもてなし」で質が高いと言われているが、今や米国より日本のレベルが低いと言わざるを得ない。一例を挙げれば、日本のホテルやレストラン紹介のホームページにはきれいな料理の写真がたくさん並んでいるが、米国のホテルスクールではそのような写真には価値がないと教えられる。利用者にとっては、そこにどのような服装で行けばいいのかということが最大の関心事だからだ。日本のサービス業はこのようなことがきっちりと出来ていない。

――現在の観光行政の課題は…。

山本 日本の観光行政はまだまだ遅れている。日本の観光庁の予算は年間約100億円だが、韓国の観光予算は約700億円だ。また、現在地方の文化財や社寺観光を推進しようとしているが、日本の文化財保護予算は約80億円しかなく、英国の約500億円と比較すると1ケタ少ない。私が観光立国調査会長になって以降は、とにかく出来ることは全てやろうということで、まずは東南アジア諸国の訪日客のビザ発給要件を緩和し、これは一定の成果を挙げた。また、消費免税の範囲はこれまでカメラや電気製品に限られていたが、訪日客の購入ニーズが強い食料品や化粧品が対象に入っていないのはおかしいと考え、昨年10月には免税範囲を全商品に拡大し、これで一気に訪日客の消費額が増えた。

――中国人観光客による「爆買い」が話題になっている…。

山本 ただ、これに対するデパート業界の取り組みも遅れている。以前、私たちの勉強会にドン・キホーテの中村社長に来て頂いたが、同社ではアジアを中心とする海外からの客を念頭に置いて経営しているという。アジアからの観光客の行動形態を調べると、昼は観光地に行き、夜になるとまず日本食を食べ、その後で買い物に出かけるケースが多い。このため、20時~24時ごろがドル箱の時間なのだが、すでにデパートは閉まっているため、買い物客はまだ店が開いているドン・キホーテに来る流れになっている。例えば、デパートも閉店時間を遅くすれば、夜間に多くの外国人買い物客が来る可能性があるのではないか。

――今後の観光政策で目指していく方向は…。

山本 中国客の「爆買い」だけを当てにしていては、真の意味での観光立国を実現できない。そうではなく、欧州や米国、豪州からの訪日客などお金をたくさん持っていて、かつ長期滞在で地方に行ってくれる層をターゲットにしていく必要がある。観光で一番お金を使うのは豪州からの訪日客だという。米国や欧州からの客も、日本に来ると長期滞在したくさんお金を落としてくれるが、アジアからの客は2~3日の滞在が多く、都会は賑わうが地方まで恩恵は広がらない。とはいえ、現時点では日本の観光名所も、外国人観光客の増加に十分対応は出来ていない。一例を挙げれば、日本の文化財保護に熱心に取り組んでいるデービット・アトキンソンさんという英国人が、オックスフォード大学を卒業後に初めて京都の二条城を訪れた際、説明書きがほとんどなく、各部屋の意味などが全然分からなかったという。つまり二条城でも、英語が出来るガイドを置いて、この部屋で何が行われたと丁寧に説明したり、昔の格好をした人を置いて当時のやりとりを再現したりすれば、観光客の滞在時間も長くなり、たくさんお金を落としてくれるようになる。また宗教界でも、地方の文化財や社寺観光を推進するため、歴史を調べたり、実際に訪れた証拠を御朱印のような形で取得できたりするようなアプリケーションの開発を進めている。

――2020年の訪日客2000万人目標の達成は…。

山本 昨年の訪日外客数は1300万人を達成したほか、今年の訪日客も1500万人くらいまでは増加するのではないか。20年には2000万人どころではなく、3000万人の大台を目指していきたい。ただ、そのためには空港の設備や、税関、出入国、検疫のシステムも整備しないといけない。また、実際に観光客が増加すると空港は相当混雑することが予想されるため、頻繁に日本に来るビジネスマンはさっと入国できるようにするなど、様々な対策を考えなければならない。やるべきことはまだ山ほどある。

――中国からの訪日客が多いが、渡航制限など外交手段に使われる可能性はないか…。

山本 昨年に日中首脳会談が行われ、日中間の緊張関係はやや落ち着いてきた。中国としても、日本との経済的な交流がなければ自らが困ることも理解しているだろう。中国から日本に来てもらえれば、こんなに平和でゆっくり過ごせるような国はないと実感し、日本びいきになって帰国してもらえると思っている。ただ、欧州、米国、豪州等からの訪日客をさらに呼び込み、全体のバランスを取っていく必要はあるだろう。

――日本の観光地では、景観整備などの課題もあるが…。

山本 景観を整備するためには相応のお金がかかるため、地方税としてホテル・宿泊税を取り、それを観光推進予算として使うべきだと提案している。他所から来た人から税金を取るので地元住民の負担にはならないというメリットがあり、米国もこの仕組みを取っている。また、日本の文化財・国宝管理においても、せっかくの茶室でも火を使わせないなどの厳しい制限がかけられているが、むしろ文化財や国宝を有料で貸すようにすればいい。海外の例で言えば、フランスのヴェルサイユ宮殿は2000万円くらいのお金を払えば結婚式を挙げることができ、それなりに利用されている。日本の文化財・国宝ももっと商業ベースの使い方を考えるべきだ。

――最後に今後の抱負を…。

山本 安倍政権の成長戦略の一つとして、観光分野は今後非常に発展する可能性が高い。日本の良さを世界中の人に知ってもらうことは、日本のプレゼンスを高めていくことにつながり、外交的にも大きな意味がある。訪日客数のさらなる増加に向け、さらに観光政策を強化していきたい。