充実した資産で『貯蓄から投資』に対応

充実した資産で『貯蓄から投資』に対応

藍澤証券
社長
藍澤 基彌 氏



聞き手 編集局長 島田一

――これまでのご経歴は…。

藍澤 1965年に日本勧業銀行系の日本勧業証券に入社し、今年で証券業界でのキャリアはちょうど50年目となる。私が入社した頃はいわゆる証券不況の真っ只中で、日本勧業証券の大卒の新入社員は私だけのような状況だった。証券業界でも、大卒者は精々20人いるかいないかだったのではないか。その後36歳の時に藍澤証券社長に就任し、以後36年間勤めて上げてきた。一時会長職を務めていた時期もあったが、2008年のリーマンショックなどの混乱を受け、2011年に社長に再就任し、現在に至っている。

――貴社の経営の特徴は…。

藍澤 充実した資産を持つことが挙げられる。これは先代、先々代から続いてきた伝統で、変動が激しい証券業の特徴に対応したものだ。私が社長に就任した時には資本金が5億円だったのに対し、資産は80億円ほどあった。当時の年間売り上げが2、30億円だったことを踏まえると、かなりの規模といえるだろう。この豊富な資産があったために、第一次・第二次オイルショックや証券ショックといった数々の危機を乗り越えることができたし、1918年の創設以来、無配となったことがない。もちろん赤字になったことはあるが、そんな時でも資産が潤沢にあったおかげで無配は回避してきた。この実績もあって、株主の方々からは厚い信頼を頂戴できていると自負している。弊社の株主は長期的に保有して頂いている方々が多いが、それもこの信頼あってのものだろう。なお、現在も自己資本比率は約600%と業界内でも高水準となっているが、今後この比率を一層高めていく考えはない。さすがに500%を割り込むようなことは回避したいが、蓄積ばかりで還元しないのでは、株主への責任を果たしているとはいえないからだ。とはいえ高水準かつ安定的な配当を行うための原資は必要であり、収益をどの程度蓄積するかの塩梅は今後も課題となる。

――アジア株などの取り扱いも積極的だ…。

藍澤 これは、バブル崩壊の経験から、「日本株売買だけでは生き残れない」と痛感したことが背景だ。弊社は資産があったために持ちこたえることはできたが、日本全体を揺るがすような事態が発生した場合、いくら努力しても、日本株売買だけに依存したビジネスモデルでは対応できない。そこで注目したのが成長著しいアジア諸国の株式市場で、じっくりと調査や現地証券会社との交渉を行ったうえで、2000年から営業戦略の主軸に据えてきた。もちろん他社でもアジア株を取り扱っているところはあるが、弊社は、2000年当初から中国株ではなくアジア株と称して中国だけではなく多くのアジアの株式市場に注目してきた。また、現地市場で仕入れた株式を顧客に販売するのではなく、お客様の委託注文を直接現地の市場に取り次ぐ方式にこだわってきた。これはちょうど日本で日本株を売買するとの同じ仕組みだ。これによって透明性の高い売買機会をお客様に提供できるし、自らポジションを持つリスクを無くしている。

――今後の見通しは…。

藍澤 証券市場はアベノミクス以来、環境が大きく改善してきたと感じている。2020年にはオリンピックがあることもあり、先行きも非常に明るいと見ている。また、最近スチュワードシップコードやガバナンスコードといった枠組みが作られたが、これらによって証券市場が「初めて本来あるべき姿」になると期待している。これまで日本では株式投資はギャンブルや博打の一種というイメージが強かったと思うが、正直このイメージは、株式の研究や調査を行ってきた我々には辛いものだった。いくら分析を行って長期保有を勧めても、「しょせん当たり外れでしょ」とお客様に言われてしまうと、立つ瀬がなかった。我々証券会社の本来あるべき業務とは、有望な企業を探し出し、お客様に紹介することで、お客様の資産を増やすことだ。二つのコードの導入で、ようやくそうした本来の業務が可能になり、ようやく昔から言われ続けてきた「貯蓄から投資へ」というフレーズが現実になると思っている。ただ、いくら環境がよくても株式がリスクのある商品であることに変わりはなく、今後もアジアを中心とする外国株といった分散投資の機会をお客様に提供していく考えだ。

――その他の商品は…。

藍澤 安定的資産という見地から、外国債券には注目している。やはりいくら分散しても、お客様の資産が株だけというのはリスクが大きいからだ。ただ、さすがに国内債については利回りが低すぎるため、どうしても関心は外国債券に向けられる。為替リスクを考慮しつつも十分な精査を行い、お客様の選択肢を広げられるように努力していきたい。また、資産管理型営業については証券会社の究極的なあるべき形だと考えており、推進している。お客様一人一人に合った形で、国内外の株式や債券を組み合わせて、長期的に資産を成長させるのは証券業の本質といってもいい。資産管理型営業で知られている米国の証券会社エドワードジョーンズはとても良い企業だと思っているが、彼らのように、預かり資産に応じて報酬を頂くというビジネスモデルは長期的に見て証券会社・顧客双方の利益になるだろう。日本でも既に預かり資産営業が可能になる地盤が整っており、今後力を入れていきたい分野だと考えている。